テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

光か、闇か。

2014-12-09 21:48:48 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッス!
 さむいィけどォ、つりーがァきらきらッ!」
「がるる!ぐるるるるがるー!」(←訳:虎です!あちこちにイルミ!)

 こんにちは、ネーさです。
 そうね、大掛かりなイルミネーションを見ることが出来て、
 冷え込む夕暮れも考えようによっては得した気分になれますね。
 本日の読書タイムでも、
 損した……と思ってたけど
 実はそうじゃなかった?な御本に登場していただきましょう。
 さあ、こちらを、どうぞ~!

  



             ―― トオリヌケ キンシ ――



 著者は加納朋子(かのう・ともこ)さん、2014年月に発行されました
 つい先ごろ映画化された『ささら さや』の原作者として
 活字マニアさんたちにお馴染みの、著者・加納さんの最新刊のテーマは――

 “病”です。

「えええェッ? びょうきィッ?」
「ぐっぐるるるっ」(←訳:なっ治りますかっ)

 おっとと、落ち着いて。
 病気といっても、いろいろあります。
 いろいろな病気が、この御本に収録されている物語から、
 ひょっこりと顔を出します。

 お医者さんも暗い表情をする、深刻な病気。

 あるいは、
 他人からすればぜ~んぜん病気とは思われないような、
 けれど本人にとってはもうどうしようもなく
 苦しくて苦しくて……というような状態。
 
「どッちのォ、びょうきィもォ~」
「がるるるる!」(←訳:つらいよう!)

 御本の、4番目に収録されている
 『フーアー・ユー?』。

 この物語の主人公であり語り手の“僕”も、
 或る病気ゆえの苦痛に苛まされています。

 僕=佐藤くんが患っているのは
 相貌失認(そうぼうしつにん)という、
 人の顔が識別できない病気なのですが。

 実際には、病気ではなく、
 先天性もしくは後天性の脳の障害であって、
 そんなに珍しくもないもの、なんだとか。

「じゃあァ、おくすりはァ?」
「ぐるる?」(←訳:ないの?)

 ええ、特効薬なんてない、んですって。
 お薬なんてなくても大丈夫!生きてけるわ!
 と、呑気なお医者さまは笑うことでしょう。

 でもね、佐藤くん本人にしてみればそうも行かないわよね。

 お父さんやお母さん――家族の顔が分からない、
 近所の住人さん、学校の友だち、先生、
 どの顔も、識別できない――分からない……。

 ただ、ものごとは観方で変わります。

 ひとり密かに悩んでいた佐藤くん、
 こういう事例があるのだと、
 決して珍しいことではないのだと知ってからは
 気持ちが楽になりました。

   なぁんだ、僕だけじゃなかったんだ。
   僕には責任のない、仕方のないことだったんじゃないか。

「ふぅむゥ、なるほどォ!」
「がるるるるぐる!」(←訳:佐藤くんに賛成!)

 気の持ちようを切り替えて、
 佐藤くんの高校生活は明るくなってゆきます。

 ところが、そこへ晴天の霹靂!

「ひゃあッ! まさかのッ!」
「がるる!」(←訳:告白だ!)

 恋?
 こんな僕が……恋?

 カノジョの顔も見分けられないってのに?!?

「どどどッどうするゥ?」
「ぐるるるる!」(←訳:どうしよう?)

 “病(やまい)でない病(やまい)”を抱えた佐藤くんの、
 恋の行方は――

「めげちゃだめでスッ、さとうくんッ!」
「がるぐるるるぅ!」(←訳:応援してるよぅ!)

 “病”。

 私たちにはコントロールできない“何か”。

 著者・加納さんは、あたたかく、おおらかに、
 人間の手には余る“何か”と向き合う僕や私を描いています。
 おそらくこれは、
 『無菌病棟より愛をこめて』の著者・加納さんだからこそ
 描き得た物語なのかもしれません。
 読み手は、さまざまな場面に
 僕や私を発見して、
 打ちのめされるか、それとも、励まされるか――

「みんながァ、さとうくんッ!」
「ぐるるがるるる!」(←訳:みんなおんなじ!)

 短編6作品、どれもこころに残ります。
 すべての活字マニアさんに、おすすめですよ!




コメント
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