テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

15人の、最後の扉。

2015-10-09 21:45:11 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッスゥ!
 うえるかむゥ~れんきゅうゥッ!」
「がるる!ぐるるる~♪」(←訳:虎です!お休みだ~♪)

 こんにちは、ネーさです。
 サッカーW杯予選でグループ首位に立った日本代表に
 ホッとしてたら、あら、連休ですね♪
 楽しい休日は、体育の秋に走るのか、
 はたまた食欲の秋を選ぶのか。
 ワタシはアートの秋を選ぶわ!という方々は、
 はい、こちらの御本を、どうぞ~!

  



          ―― 《絶筆》で人間を読む ――



 著者は中野京子(なかの・きょうこ)さん、2015年9月に発行されました。
 『画家は最後に何を描いたか』と副題が付されています。

 《怖い絵》シリーズで美術評論界のトップランナーとなった
 著者・中野さんの最新刊は……

 題名が、まさに内容そのもの、ですね。
 画家さんの、最後の作品――《絶筆》作品を追いかけます。

「さいしょではなくゥ、さいごッ!」
「ぐるるがる!」(←訳:到達点だね!)

 それは確かに到達点であった、
 と言い切れる画家さんもいれば、
 行き止まりの袋小路だった、とも見える画家さんもいます。

 第1部『画家と神 宗教・神話を描く』、
 その筆頭に登場するボッティチェリさんは、
 アート好きさんならばよく御存知でしょう、
 あの神々しくも輝かしい『ヴィーナスの誕生』『春』を描いた頃と
 晩年の作品とでは、まるで……

「べつじんッ、みたいィでス!」
「がるるぐるるる!」(←訳:違いがありすぎ!)

 一方で、イマ風にいうなら
 “ブレなかった”御方もいます。

 第2部『画家と王 宮廷を描く』で
 先ず取り上げられているのは、
 ベラスケスさん。
 宮廷官吏の激務をこなしながらの制作にも
 手を抜くことを知らぬベラスケスさんの、誠実さ。

 そして第3部『画家と民』では
 ブリューゲルさん、フェルメールさん、ホガースさん、
 ミレーさん、ゴッホさん、と
 王侯よりも市井の人々に寄り添って生きた画家さんの
 《絶筆》作品が論じられます。

「どれもォ、ゆうめいィなァ、さくひんッ!」
「ぐるるがるるぐるるる……」(←訳:どれもどこか不安そう……)

 これが絶筆だよ、と説明されて、
 読み手の私たちは先入観を抱いてしまうのでしょうか。
 どうしても考えざるを得ませんね。

 画家さんは、知っていたのだろうか?
 これが自分の最後の作品になることを?
 知っていて、こう描いた?
 知っていて、この主題に決めた?

 そこに、どんな想いが籠められていたのか……。

「ちょッとォ、しんみりィ……」
「がっるるぐるるる……」(←訳:けっこうじんわり……)

 15人の画家さんの中で、
 ゴッホさんだけがやや異彩を放っています。

 ラファエロさん、ティツィアーノさん、ルーベンスさんたちと違い、
 彼だけは、生前、
 世間から高い評価を受けることなど全く無く、
 暗黒に吸い込まれるようにして
 この世から消えてゆく。

 そして現在、ゴッホさんの作品は
 世界中の美術館でどんな扱いをされているか――

「これもォ、かなしいィ!」
「ぐるるるぅ!」(←訳:悔しいよぅ!)

 画家さんと、画家さんを取り囲む世相をも炙り出す、
 評論であり、
 評伝集でもある充実の一冊、
 全活字マニアさんにおすすめです。
 美術館巡りのお供にも、ぜひ♪
 

  
 
コメント
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