テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

“ここにはない”その島へ。

2016-05-03 22:00:01 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでッス!
 わきゃァッ! れすたーがァ、やッたでスゥ!」
「がるる!ぐるるるがるるー!」(←訳:虎です!プレミア制覇だー!)

 こんにちは、ネーさです。
 優勝が決まった瞬間は狂喜していた選手さんたちが、
 しばらくすると涙を堪えられず、嗚咽する……
 基本ユーヴェファンの私ネーさも貰い泣きする、
 感慨深い光景でした。
 おめでとう、レスターの選手さんスタッフさんサポさんたち!!
 本日の読書タイムも
 読後は思いっきり感慨深くなるこちらの一冊を、さあ、どうぞ~!

  



          ―― 奇妙な孤島の物語 ――



 著者はユーディット・シャランスキーさん、
 原著は2009年に、日本語版は2016年2月に発行されました。
 独語原題は『ATLAS DER ABGELEGENEN INSELN』、
 『私が行ったことのない、生涯行くこともないだろう50の島』と
 日本語副題が付されています。

 前回記事では、
 フランスの美しい村のガイド本を御紹介いたしました。
 どの村も、鉄道の駅からは離れていても、
 車と地図があれば行きつけるところ、でしたが……

 この御本では、そうはゆきません。

「ふァ? ゆきつけないィのでスかァ?」
「ぐる~??」(←訳:なぜ~??)

 ちょっとやそっとじゃ
 到底、行けやしない島。

 著者・シャランスキーさんが読者さんを案内するのは、
 そういう場所です。

 陸地の影も見えない、絶海の孤島。

 島、とうよりも、
 大海に浮かぶ環礁。

 ロビンソン・クルーソーの物語のモデル?
 と推察される島。

「ううゥッ、ぶるるゥ!」
「がるるるぐる!」(←訳:なんだか壮絶!)

 どこかしら不吉な気配が感じられなくもない
 それらの島の中には、
 しかし、私たちがよく聞き知っている島もあります。

 例えば、セント・ヘレナ島。

「あはァ! なぽれおんさんのォ、しまッ!」
「ぐるるがるる!」(←訳:流刑の島だね!)

 例えば、南キーリング諸島。

 1836年、珊瑚礁からできたその島にやって来たのは
 英国軍艦ビーグル号。
 そして、チャールズ・ダーウィンさんは
 静かに島へと降り立ちました……。

「わおゥ! だーうぃんさんッ??」
「がるるるぐる!」(←訳:歴史的な一歩!)

 或いは、南極海のフランクリン島。

 トラファルガー海戦の英雄フランクリン卿の名を冠する島の、
 名付け親は、ロス船長という探検家でした。

 フランクリン島を訪れた4年後、
 ロス船長は北西航路を開拓せんと
 北極海へ出航します。

 帰り道のない、絶望の旅になると知る由もなく……。

「だいじけんッでしたでス!」
「ぐるるがる!」(←訳:いまも謎の!)

 余っ程の覚悟がないと、行けぬところ。
 
 費用も手間も手続きも常識ハズレのものになるところ。

 いえ、中にはお金を払っても行けないところもあります。
 硫黄島って、一般人は立ち入り禁止じゃありませんでしたっけ?
 満潮時には海抜1mになっちゃう島、には、
 島民以外は上陸を許されない……。

 かくのごとく、この御本は、

 《行けない》地への、案内書なのです。

「でもォ、たぶんッ!」
「がるるぐるるる!」(←訳:そこが良いんだ!)

 この御本には、一枚の写真も掲載されていません。

 あるのは、
 そっけないような地図と、
 著者・シャランスキーさんが語る島についてのエピソードだけ。

 それが逆に、
 読み手の想像力を刺激します。

 その島を囲む海の色、
 波の高さ、
 風の強さ、
 空のひろがり。

 住む人は、いるのか、いないのか。
 植物は? 動物は?
 そして、島の未来は――

「ついついィ、かんがえェちゃうゥ!」
「ぐるるがるる??」(←訳:どんなだろう??)

 海の彼方の、
 ここではないどこか。

 見果てぬ、理想郷の島影。

「ゆけそうでェ~」
「がるるるぐるる!」(←訳:行けないところ!)

 著者・シャランスキーさんによる『はじめに』、
 訳者・鈴木仁子さんによる『訳者あとがき』は
 必読の名文です。
 地図マニアさんに、
 旅エッセイ好きな御方に、
 いえ、全活字マニアさんにおすすめしたいこの御本、
 皆さま、ぜひ、一読を!!
 

 
コメント
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