テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

猫の見る夢。

2010-06-20 23:24:02 | ブックス
「わほッ♪ 
 にゃんこォでスゥ!」
「ぐるる!がるる!」(←訳:静かに!眠ってるよ!)

 はい、そうね、眠ってる猫ちゃんを起こさないように、
 今日はヒソヒソ声で、こんにちはぁ、ネーさです。

「こんにちわゥ、テディちゃでスゥ……」
「がるる~…」(←訳:虎です~…)

 ヒソヒソ声の本日は、
 ちょうど一週間前にお送りいたしましたね、
 神奈川県の平塚市美術館で開催された
 『長谷川りん二郎 展』レポートの追補編と、
 同展覧会の図録を兼ねて刊行された画集を御紹介いたしましょう。
 こちらを、どうぞ~!


 
            ―― 長谷川りん二郎画文集 静かな奇譚 ――



 監修は土方明司さん、’10年3月に発行されました。
 (『りん二郎』の『りん』は、さんずいに、米と舛を書きます)

「ふむふむゥ、
 このにゃんこちゃんはァ、がかさんのォ、にゃんこちゃんっ、でスかァ」
「ぐるる~ぐる?」(←訳:よく寝てるね?)

 気持ち良さそうに眠る猫ちゃんの名は、タロー。
 画の題名は、『猫』。
 なんともシンプルな、そのものズバリの題名ですね。

 この画には様々なエピソードが伝えられています。
 
 タローちゃんの飼い主、
 画家の長谷川りん二郎さんは、たいそうな愛猫家。
 タローちゃんをモデルに描き始めたはいいものの、
  おい! ポーズしろ!
  ここに寝そべるんだ!
  顔をこっちへ向けろ!
 などと怒鳴りつけるような人柄ではありませんでしたから、
 タローちゃんが自然に画と同じ姿勢になるまで、
 気長~に待ち続けます。
 どのくらい待つかというと、
 一年……また一年……もう一年……さらに……

「むぱァ~、な~が~いィ~」
「ぐるる~」(←訳:長過ぎ~)

 月日は流れ、
 とうとうタローちゃんは亡くなってしまいました。
 それでも、画は完成した状態であるとは言えません。
 何故なら、タローちゃんの髭が、
 描き込まれていなかったからです。

 画の買い手さんに懇願されて、
 りん二郎さんは髭を描き入れます。
 けれど、片頬だけ……
 対象を目の前にしないと描けないりん二郎さんは、
 そこで筆をおいたのでした。

 永遠に未完の、眠るタローちゃんの肖像。
 未完なのに、深い引力を湛えるような、タローちゃんの寝姿。
 タローちゃんの幸福が、
 りん二郎さんの幸福が、
 画布の宇宙に結晶しています。

 展覧会でも、この『猫』の画は大人気!
 絵葉書は売り切れ、
 ポスターも完売!
 原画の素晴らしさは……いうまでもありません!

「しッ!
 ネーさッ、しずかにィ~」
「ぐるがるる~」(←訳:小さな声で~)

 ……そ、そうだったわね、
 再びヒソヒソ声で、えっへん、おほん。

 この画文集には、展覧会で展示された画、129点と、
 りん二郎さんが著した随筆、
 年譜などが収録されています。
 展覧会会場では『猫』のごく近くに展示されていた
 『タローの履歴書』なる文書が、とにかく傑作!
 ネーさは会場で爆笑を堪えるのに必死でしたよ~♪

「わらッちゃだめェでスゥ、
 りんじろうさんはァ、まじめェ、なのでスよゥ~」
「ぐるる~がる~」(←訳:でも~笑える~)

 静かさと、ユーモアとが優しく同居する
 『平明・静謐・孤高―― 長谷川りん二郎展』は、
 平塚市美術館での展示は終了しましたが、
 この後、
 下関市美術館(7月1日~8月15日)、
 北海道立函館美術館(8月28日~10月17日)、
 宮城県美術館(10月23日~12月23日)と、
 全国を巡回する予定です。

 お近くにお住まいのアート好きさんは、ぜひ!
 ちょっと遠いわ……展覧会へは行けそうもないわ……という御方は、
 一般書店でも入手できるこの御本で
 りん二郎さんの画業を目に焼き付けて下さいな♪
 静物画ってこんなにいいものなのか……!
 と驚愕すること必至です!

「ぐ~すかァぴィ~…」(←いつの間にか、熟睡?)
「ぐるる~…」(←こちらも?)
 
 では、タローちゃんの見る夢を、皆さまも!
 
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