芦屋の詩人山下徹さんからお贈りいただいた。
『芦屋芸術』20号。
詩が主だが、散文もあって167ページと重厚感がある。
パラっとめくったところに目に留まった山下さんの詩。
「不透明になった」
Ⅰ
出来るだけ
この世の塵を払い
身を軽くして
旅立ちたい
Ⅱ
文字を書くことは
塵を払うことだろうか
あるいは
この世に 余分な塵を積むことだろうか
Ⅲ
塵を払おうとして
塵が積もった
透明になろうとして
不透明になった
わが身に代えてなんか考えさせられる詩です。
散文では榎本三知子さんの「遠い日のことを思い出して」に注目。
中の一行に《昭和十八年、小学校(当時は国民学校と言った)に入学した。》とあって、その当時の思い出を書いておられる。
なんでもないような個人的なことが書かれているその中に、貴重な証言が含まれている。
因みに昭和18年はわたしの誕生年だ。
二篇の思い出が語られているが、どちらも素朴に書かれていて好感が持てる。
序文のような文章が添えられている。
――脳内の小さな箱に隠し持ってきたもの
折に触れて その箱のふたがずれて出てくるものがある
今まさに行われているかの如き クリアーにその情景が浮かぶ――