◇ライフ・イズ・ビューティフル(1998年 イタリア 118分)
原題 La Vita e bella
英題 Life Is Beautiful
staff 監督/ロベルト・ベニーニ
脚本/ロベルト・ベニーニ ヴィンセンツォ・チェラミ
撮影/トニーノ・デリ・コリ 美術/ダニロ・ドナティ
衣裳デザイン/ダニロ・ドナティ 音楽/ニコラ・ピオヴァーニ
cast ロベルト・ベニーニ ニコレッタ・ブラスキ ジョルジオ・カンタリーニ
◇イタリアに強制収容所があるという事実
ほんとに無知な話ながら、ぼくは知らなかった。
ところが、イタリア国内には当時いくつか収容所があったらしい。資料によって数がちがうし、挙げられてる名前もちがう。丹念に検証すれば、しっかりした資料にも出会えるんだろうけど、もっとも、絶滅収容所や通過収容所など、ユダヤ人を収容したという事実は同じでも目的が異なっているから、そういう微妙な差異が生じるのかもしれないね。
で、この映画の収容所がどこなのかということなんだけど、いくつかの収容所を合わせた空想のところらしいから、断定しにくい。ただ、ロベルト・ベニーニのお父さんが、当時、強制収容所に入れられていたという話を聞いたとき「なるほど、それであの映画を」と、納得した。おもいきりのいい題名をつけているのも、そういうことからなんだと。とても正視できないような悲劇をコメディアンのベニーニが得意の喜劇に持ち込んだ剛腕ぶりも、自分の才質をもっとも発揮できるところで製作したいという、かなり凄まじい執念と覚悟の産物だったんだと。たしかに喜劇のオブラートに包まれてるから、いろいろなところで大仰な表現になるし、人を人ともおもわないような場面もあるし、事の善悪であるとか、行動の無遠慮さであるとか、ちょっと眉をしかめてしまったり、首を傾げてしまったりする場面も多々あるけど、そこまで自己中心的な、いいかえれば絶対的な家族愛を描こうとしたのも、自分の家族の経てきた歴史に対する愛惜によるものなんかとおもったとき、なるほど、こういうおとぎ話風の物語にするのが、いちばん妥当だったんだと理解した。
そういう考えが感想になるのかどうかわからないんだけど、ぼくには、そんなふうにしか、この映画の感想はいえない。