◎エリジウム(2013年 アメリカ 109分)
原題 Elysium
staff 監督・脚本/ニール・ブロムカンプ
製作/ビル・ブロック ニール・ブロムカンプ サイモン・キンバーグ
撮影/トレント・オパロック 美術/フィリップ・アイヴィ
衣裳デザイン/エイプリル・フェリー スーツデザイン/ジョルジオ・アルマーニ
音楽/ライアン・エイモン
cast マット・デイモン ジョディ・フォスター シャールト・コプリー アリシー・ブラガ
◎2154年、ロサンゼルス
Elysiumは、ギリシャ神話にある。
Elysian Fields、エリュシオンてのがそれで、
祝福された人々が死後に住む楽土とか、理想郷とかいった意味だ。
で、そこに至上の幸福があるっていうんだけど、
たしかに貧困も病気も差別もない世界があるなら、それは理想郷にちがいない。
けど、それは1%のエリートのためのもので、
99%の人々は貧困と病気と差別の中で、暮らしてる。
ってのが、この映画に描かれてる世界なんだけど、
もちろん、現在のアメリカ、あるいは地球を見立てているのはまちがいない。
監督のニール・ブロムカンプが描いているのは『第9地区』でもそうだったけど、
人種差別や格差社会だ。
日本人はどうもそういうことに鈍感で、
若き天才SF監督の声がどこまで届いているのか、よくわからない。
ただし、ブロムカンプはなにも革命を引き起こそうといってるわけでもないし、
世界を包んでいる人種差別や格差社会はこんなふうにしたらよくなるとか、
そんな理想論をぶちあげようとしてるわけでもない。
ぼくたちが直面してる世界のありさまを淡々と描くだけじゃ物足りないから、
そこにSF観っていうか、カリカチュアされた世界を現出することで、
そこから現代世界に視点を移してみないか?と話しかけているって程度な感じだ。
でも、それでいいんだろね。
にしても、乾燥した地球のありさまは実にリアルで、
なんだか、まだ『第9地区』の続きを観てるような気がしたわ~。
ただ、スペースコロニーのエリジウムは、
所詮、テクノロジーの生み出したまやかしの世界で、
だとしたら、いったいほんとうの理想郷はどこにあるんだろう?って話だよね。
ブロムカンプはそれについて回答を出してないんだけど、
それは当たり前の話で、
ぼくらが考えないといけないんだろな~。