◇アップサイドダウン 重力の恋人(2013年 カナダ、フランス 109分)
原題 Upside Down
staff 監督・脚本/フアン・ソラナス
撮影/ピエール・ギル 美術/アレックス・マクドウェル
衣装 /ニコレッタ・マッソーネ 音楽/ブノワ・シャレスト
cast キルスティン・ダンスト ジム・スタージェス ティモシー・スポール
◇矛盾を乗り越えられない私
宇宙のどこかの太陽系に双子惑星があって、
そこは星と星とがほとんどくっついてるものだから、
下の星の北極と上の星の南極あたりに都市が発展し、
人間の行き来も可能になってるという設定なのはわかる。
でも、物語の途中で、
ふしぎな形のカクテルを登場させたり、
おしっこが天井に漏れちゃったりするのを撮りたいがために、
それぞれの星の分子で構成されているものは、
それぞれの星の重力に影響を受けるという、
複雑な設定まで作ってしまったことが、
この物語の核心になっているのと同時に、
もうそりゃいっぱいあるさってくらいの矛盾をはらんでしまった。
致命傷とまではいわないし、
決して一緒になれないであろうカップルの話を作るには、
好都合な設定なんだけど、
映画って、納得できない矛盾に出くわしちゃうと、
そのあとがどれだけ面白くても、話に身が入らなくなるんだよね。
この映画がそれで、
特撮はしっかりしてるし、映像も美しいんだけど、どうもね。
なにより疑問なのは、
「ふたりの間に子供ができたら、どちらの引力の影響を受けるんだろ?」
ってことで、
おそらく卵子と精子がくっついた瞬間にとんでもない事態になるんじゃないかな~と。
だって、おしっこだってそれぞれの生まれた星の引力の法則に従うんだから、
当然、唾や汗だってそうだし、精液だってもちろんそれぞれの星の引力に従う。
こりゃ、無理だよね。
そんなことを考えてたら、どれだけロマンチックな設定でも、
身が入らなくなる。
この映画には、
どうやら、映画の魅力に惹きつけられる人間と、惹きつけられない人間がいて、
その両者は、もしかしたら、
物事を感情で捉える人と理詰めで捉える人なのかもしれない。
でもな~、
ぼくは本来、前者のはずなんだけど。