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パッション(2012)

2013年10月20日 17時18分30秒 | 洋画2012年

 ◎パッション(2012年 ドイツ、フランス 94分)

 原題 Passion

 staff 監督・脚本/ブライアン・デ・パルマ

     オリジナル脚本/ナタリー・カルテール アラン・コルノー

     撮影/ホセ・ルイス・アルカイネ 美術/コーネリア・オット

     衣装/カレン・ミュラー=セロー 音楽/ピノ・ドナッジオ

 cast レイチェル・マクアダムス ノオミ・ラパス カロリーネ・ヘルフルト ライナー・ボック

 

 ◎デ・パルマは復活したのか?

 もともとフランスの映画があって、それをリメイクしたわけだから、

 その点からいえば、デ・パルマのオリジナルでない分、復活とは断言しにくい。

 ちょっと辛いかもしれないけど、

 デ・パルマの持ち味のB級のいかがわしさや変態趣味が復活してても、

 やっぱり、ちょっと物足りない。

 いや、実際のところ、もっと舐めるような得意のクレーンショットが見たかった。

 せっかくピノ・ドナッジオも『殺しのドレス』ばりに頑張ってるんだから。

 とはいえ、

 なんとも現代的な場面もある。

 ここ数年、世間を騒がしているのはリベンジ・ポルノとかいうやつだ。

 つきあっていた異性にふられた腹いせに、

 ふたりが蜜月のときに撮影した写真や動画をネットにアップすることだ。

 ネットの掲示板などに自分をふった相手の情報を書き込むのも同様だ。

 たしかにアップした当人にしてみれば復讐になるのかもしれないけど、

 自分のこともまた窮地に追い込んでしまうわけだから、一生後悔する。

 でも、たぶん、ふられたときってのは、後先のことなんて考えられないんだよね。

 死ぬほど後悔するのが予想できるはずなのに、見境がなくなっちゃってる。

 そんなリベンジ・ポルノによくにた場面が、この作品には登場してる。

 ノオミ・ラパスの一夜のアバンチュールが動画になってて、

 それをレイチェル・マクアダムスがノオミに見せ、逆上させ、

 駐車場で怒りを爆発させているところをまた監視カメラで撮影し、

 それをさらに社員たちに見せるという、なんとも計画的なやり方だ。

 もともと、

 レイチェルがノオミの作ったCMを横取りして出世したことにノオミが怒り、

 自分の作った元CMを流すことで、ノオミは地位を挽回しようとしたところへ、

 レイチェルの腹いせまじりの復讐のために、その動画が利用されたわけだ。

 でも、

 それでノオミはどん底にたたき込まれ、精神安定剤を服用するんだけど、

 これはノオミの周到な伏線で、自分のアリバイ工作の基礎をつくるためで、

 結局、ノオミはレイチェルの殺害に手を染めていくことになる。

 ところが、別な伏線があって、レイチェルは実は双子で、

 ノオミの芝居と計画をすべて知った上で、ノオミを落とし込むために、

 自分がなにもかもノオミに騙されているように見せかけていたっていう、

 なんともデ・パルマの好きそうな、幾層にもおよぶどんでん返しの構図になってる。

 なんだか『愛のメモリー』をおもいださせるし、

 夢の多用をおもえばやっぱり名作『殺しのドレス』に対する自らのオマージュでもある。

 ただな~、どれもこれも元々の作品の方がおもしろいのがちょっとね。

 ヒッチコックの『めまい』がそもそもの発想の根本かもしれないけど、

 そういうトリックの込み入り方だけが先行しちゃってて、

 デ・パルマの持ってる鳥肌の立つようなB級変態趣味のさらなる発展が欲しかった。

 とかおもうのは、よくばりなんだろか?

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