◎あるいは裏切りという名の犬(2004年 フランス 110分)
原題 36 Quai des Orfevres
staff 監督・脚色・台詞/オリヴィエ・マルシャル
演出/フレデリック・テリエ
脚本/オリヴィエ・マルシャル フランク・マンクーゾ ジュリアン・ラプノー
共同脚本/ドミニク・ロワゾー 撮影/ドゥニ・ルーダン
美術/アンブル・フェルナンデーズ 衣装/ナタリー・デュ・ロスコー
音楽/エルワン・クルモルヴァン アクセル・ルノワール
cast ダニエル・オートゥイユ ジェラール・ドパルデュー ヴァレリア・ゴリノ
◎オルフェーヴル河岸36番地
パリ警視庁の所在地の番号なんだけど、
この看板を盗み出して、先輩の刑事の定年を祝うってのは、
なんとも洒落てるのかどうかわからないけど、
ともかくその場面だけで、ダニエル・オートゥイユの人望が察せられる。
ま、そんな小技はさておき、実によくできてる。
いや、まじ、ひさしぶりに、
こんなけ込み入った話なのに上手に作った脚本に出会ったわ~。
ダニエル・オートゥイユもジェラール・ドパルデューも、
とてもじゃないけど、美男とはいえない。
ふたりとも特徴的な鼻をして、アラン・ドロンみたいな美しさは欠片もない。
フランス人は美意識と芸術性の塊みたいなものなんだけど、
それ以上に人間性っていうか、個性を愛する。
人間味の豊かな人間を好んで、作品やその内容を愛する。
ちょっと日本に対してはえこ贔屓みたいなものがあって、
そういうときは目が曇りがちになるんだけど、
それ以外では、文化や芸術に対して実に感性が高い。
てなことで、このふたりの演技が好いんだ。
結局のところは、恋人をめぐる三角関係がこうじて、
庁内でもライバルになり、出世争いをし、罠に嵌め、
あるいは裏切るっていう関係になっちゃうんだけど、
そのあたりの筋の運び方が、どうにもうまい。
画面も落ち着いた渋さで、これまたうまい。
音楽がなんといってもしみじみと渋くて、まったくうまい。
フレンチ・ノワールは見事に復活してるよね。