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クヒオ大佐

2013年10月16日 01時11分11秒 | 邦画2009年

 △クヒオ大佐(2009年 日本 112分)

 staff 原作/吉田和正『結婚詐欺師クヒオ大佐』

     監督/吉田大八 脚本/吉田大八 香川まさひと 撮影/阿藤正一

     美術/原田恭明 装飾/沢下和好 特殊メイク/小西修 音楽/近藤達郎

 cast 堺雅人 松雪泰子 満島ひかり 中村優子 新井浩文 安藤サクラ 内野聖陽

 

 △1984年、クヒオ大佐、逮捕

 容疑、詐欺罪。

 1989年、出所。

 ちなみに、この信じられないような詐欺事件は、おぼえてる。

 大学を出て、社会人になってた。

 当時、写真週刊誌があいついで創刊されてて、

 たしか、このクヒオ大佐も掲載されていたんじゃなかったかな。

 信じられなかったのは、バイアグラを常用してたっていうくらい、

 つぎつぎに女性をだまくらかしてたってことだ。

 どっから観ても日本人の中年だし、軍服はレプリカだし、

 カタコトながらも正確な日本語だったろうし、英語も喋れなかっただろうし、

 なにからなにまでちぐはぐで、偽将校だってことはありありとわかるはずなのに、

 都合1億円くらい、荒稼ぎしてたなんて、到底、ぼくには信じれなかった。

「なんでだろ?」

 わからなかった。

 が、さすがに吉田大八は、そのぼくの疑問に答えてくれてる。

 松雪泰子の台詞がそれだ。

「わたしは、あなたがアメリカ人だろうとなかろうと、軍人だろうとなろうと、

 そんなことは、どうでもいいの。

 あなたの職業や肩書が好きなわけじゃなくて、あなたが好きなんだから」

 とかいうような台詞だったとおもうんだけど、

 世の女性は、たぶん、こういう台詞に憧れちゃうんじゃないかしら?

 こんなふうな台詞そのものに恋して、自己陶酔しちゃうんじゃないかしら?

 けど、

 この松雪泰子は、仕事はしっかりしてるんだけど、男には免疫がなく、

 こと恋愛に関してはかなりの奥手で、要するにおばかちゃんだ。

 ちょっと足りないから、男についつい騙くらかされてしまう。

 吉田大八の演出でよかったのが、彼女をマッサージしてやるところだ。

 手をあげてなさいといわれた彼女は、

 横になって愛撫を受けているのに尚、なんの疑問もなく、手を上げ続けている。

 あほな女だな~とはおもうんだけど、こうされるとどうしても憎めない。

 大八演出は、冴えてる。

 ただ、松雪さん、こつこつとお弁当屋さんを営んでて、苦労してる。

 そういう健気なところを見てると、

 世の中を知ったような態度で人に接する、金持ち自慢の高慢ちきな女とかよりも、

 よっぽど好いようにおもえるんだけど、

 なんだか、どことなく哀れなんだよね。

 こういう純朴な女性を騙していたとすれば、

 それが、どれだけ悲惨な半生を送ってきたにせよ、罪に伏してもらわないといけない。

 っていうか、堺雅人演じるクヒオには共感できないし、哀れともおもえない。

 このあたりが、この作品の辛いところで、コメディになりきれないんだよね。

 もちろん、コメディとして撮られたかどうかはぼくは知らないから、

 いいかげんなことはいってはいけないんだけど、

 内野聖陽の登場するすべての場面と本編とが、妙にちぐはぐな感じもあって、

 いったい、この映画はコメディなんだろうか、それとも悲劇なんだろうか。

 たぶん、本来の意味でいう悲喜劇(コメディ)なのかもしれないね。

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