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必死剣鳥刺し

2013年12月08日 23時36分58秒 | 邦画2010年

 ◇必死剣鳥刺し(2010年 日本 114分)

 staff 原作/藤沢周平『必死剣 鳥刺し』

     監督/平山秀幸 脚本/伊藤秀裕 、 江良至

     撮影/石井浩一 美術/中澤克巳

     音楽/EDISON 主題歌/alan『風に向かう花』

 cast 豊川悦司 池脇千鶴 吉川晃司 戸田菜穂 村上淳 小日向文世 岸部一徳

 

 ◇謎の秘太刀

 トヨエツは、渋かった。

 吉川晃司も、渋かった。

 このふたりは、年を食うに従って、どんどん渋くなってくるような気がする。

 だけど、

 なんとなく納得できるようなできないようなことが、3つある。

 ひとつめ。

 この鳥刺しという必殺の太刀技は、

 自分が死んだと見せかけ、相手が油断した隙に刺し殺すってものなの?

 それとも、

 自分の心臓が止まってもなお、敵が正面に立ったら何かが反応して刺殺するの?

 どっちなのかわからないんだけど、

 どちらにせよ、どうやって編み出したり、練習したりしたんだろ?

 謎だ。

 いや、そもそも、こういう必殺技を、なんで藩のみんなが知ってるんだ?

 秘太刀ってのは、名称をわざと流布させるんだろうか?

 でも、そんなことしたら、教えてくれとか見せてくれとかいわれるの当たり前じゃない?

 謎だ。

 こんなことを書いてると、難癖つけてるようにいわれるのかな?

 そんな気はまるでないんだけど、やっぱり設定が設定だけに気になるんだよね。

 ふたつめ。

 豊川悦司はとってもまじめな侍で、

 3年前に亡くした妻戸田菜穂をいまだに愛してるはずなんだけど、ちがうのかしら?

 でも、戸田菜穂の姪の池脇千鶴が自分のことを好きだってことに気づいてて、

 自分の世話をさせて、しかも床入りしちゃうんだよね?

 いいんだろか、それ?

 ふたりがいいとおもっても、ちょっとばかり戸田菜穂が可哀想な気もしないではない。

 まあ、

 おばさんが亡くなって、出戻りの自分としてはおじさんのことが好きだったんだから、

 抱かれちゃうのは悪いことじゃないでしょ?

 とかいわれたら、う~ん、困るよね、まじで。

 みっつめ。

 岸部一徳の陰謀は、どうしようもない藩主を守るために、

 藩の道を正そうとしていた吉川晃司を殺すために、

 藩主にとっては愛妾の仇である豊川悦司に恩を売り、

 機を捉えて仕留めさせるっていうものだったんでしょ?

 ということは、藩主ぐるみの陰謀と罠だったことにはならないのかしら?

 だとしたら、最後の立ち回りの後、主人公がこの藩に残したものは何だったんだろ?

 そりゃあたしかに、いつもいいもんばかりが勝つとはおもえない。

 多くの場合、わるもんの方が頭が良いし、結局、好い目を見たりするもんだ。

 でもさ、いちばん悪いのは藩主なんだよね?

 ところが、ふしぎなことに、豊川悦司は愛妾は刺し殺すものの、

 藩主に対して諫言に及ぶまでには至っていない。

 これって、忠義心から行動とはいえ、すこしばかり不十分じゃない?

 忠義一徹の武士というのは、おのれの死をもって諫言するものじゃない?

 にもかかわらず、蟄居壱年とかいう軽い処罰を受けただけで、

 そののち出仕して、あほな藩主に忠勤を尽くすというのは合点がいかなくない?

 藩の運営が愛妾のせいでおかしくなっただけなら、豊川悦司の行動は正しい。

 でも、そうじゃなくて、藩主が愚かだから、藩が行き詰っているのだとすれば、

 吉川晃司がほんとうの忠義心なわけで、

 つまりは豊川悦司と同じ心根になってるわけだから、

 ふたりが激突しなくちゃいけなくなる前に、そもそも密会とかしてるんじゃない?

 なんだかそのあたりから中途半端な気がするのよ。

 全体を通して、渋さはよくわかったし、

 時代劇としての所作に注意が払われてるのもよくわかった。

 腰の据わらないタレントまがいの役者を使って学芸会を見せられるより、ずっといい。

 でもね~、

 なんだか溜飲の下がらない気がするんだけど、

 こんな重箱の隅をつつくようなことをいっちゃうのは、

 時代劇を見慣れてないとか、物語の中身をちゃんとこなしてないからなのかな?

 やっぱり、わかってないのかな~、

 ぼくは。

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