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旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ

2013年12月18日 14時34分11秒 | 邦画2009年

 ◎旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ(2009年 日本 112分)

 staff 監督/マキノ雅彦(津川雅彦) 脚本/興水泰弘

     原案/小菅正夫『旭山動物園 革命-夢を実現した復活プロジェクト』

     撮影監督/加藤雄大 動物撮影/今津秀邦

     動物実景/植原雄太(秋田市大森山動物園、アフリカゾウ)

             進藤慧太(日立市かみね動物園、ゴリラ)

     美術/小澤秀高 壁画/あべ弘士

     ゴリラスーツ製作/江川悦子 梅沢壮一 チンパンジー造形/若狭新一

     音楽/宇崎竜童 中西長谷雄 主題歌/谷村新司『夢になりたい』

 cast 西田敏行 中村靖日 前田愛 笹野高史 長門裕之 岸部一徳 柄本明 六平直政

 

 ◎1967年7月1日、旭川市旭山動物園、開園

 動物園って、もう何年行ってないんだろう?

 ぼくの田舎には丘の上に公園があって、その一角に動物の檻がいくつかある。

 鹿の柵、猿の檻、水鳥を含めた鳥類の檻、その他小動物の檻が5つくらいかな。

 ともかく、動物園とはいえない代物なんだけど、もう半世紀以上も飼育されてる。

 昔から疑問があって、

 あの施設はいったい誰が管理してるんだろうってことだ。

 以前は、檻の近くの展望台の下に売店があって、そこで食べ物も買えた。

 いったい誰が営業してたのかわからないんだけど、

 市の委託を受けた家族とかが管理営業していたんだろうか。

 もうこれは何十年来の謎で、

 小さいときからよく遊びにいった公園に、こんな謎が残されてるのも妙な話だ。

 いや、実際のところ、春の桜の季節のほかには誰も来なくなった公園に、

 いまだに鹿や猿が飼育されているのかどうかすら市民は知らないだろうし、

 閑散とした公園の端にある動物の檻の前で、動物を観ることほど淋しいものはない。

 まあ、これは車で1時間も行けば名古屋の東山動植物園があるからで、

 全国で3本の指に入る巨大な施設にあれば、みんな、そこに行っちゃう。

 なんだか淋しい話だけど、そういうもんだ。

 で、おそらく、

 旭山動物園も、ある時期にはぼくの田舎の公園みたいになってたんじゃない?

 というようなことをおもったんだけど、どうやら違うらしい。

 今では東山動植物園と全国2位を争う巨大施設は、

 当初からかなりの期待を込めて建設されたものみたいだ。

 そりゃそうだろう、北緯43度46分4.9秒、東経142度28分47.2秒っていう、

 日本のいちばん北にある動物園を作ろうってんだから、期待しない方がおかしい。

 けど、人口30万の旭川市では維持しきれないほどの赤字に追い込まれた。

 この映画は、開園のくだりはなく、廃園の危機に追い込まれたあたりから始まる。

 ま、あらすじのあらかたは、実際の年譜にあるとおりだ。

『1972年、飼育員がアジアゾウに襲われ死亡する。あべ弘士、入園。

 1988年、飼育員達が行動展示の夢を語り合い、あべ弘士が絵として残す。

 1994年、ニシローランドゴリラとワオキツネザルがエキノコックス症で死亡、途中閉園。

 1995年、小菅正夫が園長就任。

 1996年、1984年から減少していた年間入園者数が最低の26万人まで落ち込む。

 1997年、行動展示施設の建設開始。ととりの村が完成。あべ弘士、退園して絵本作家に。

 2000年9月、ぺんぎん館が完成。

 2001年8月、オランウータンの空中運動場が完成。

 2002年9月、ほっきょくぐま館が完成。

 2004年6月、あざらし館が完成。行動展示をめざした水槽が入園者数激増の要因となる。

 2004年7月・8月、初めて月間入園者数が恩賜上野動物園を抜き日本一になる。

 2007年12月、レッサーパンダの吊り橋が完成。

 2009年4月、坂東元が園長就任』

 時系列的にはこうなってるんだけど、

 これらをたった数年の時間軸に組み込んでるわけだから、

 当然、エピソードは盛り沢山になるよね。

 くわえて狂言回しになる新人の飼育員と、

 市政とのカットバックをスムーズにするための市長の姪とを設定し、

 そのふたりのほのかなやりとりから、

 新人飼育員の幼少時の虐めによる昆虫採集への逃避とそこからの再生について、

 さらには、実際には行われていない市長選挙による市長の交代劇まで、

 もう、これでもかってくらいに、詰め込まれてる。

 さすが「マキノ」というべきなのか、ともかく、よく物語になってるってくらい上手だ。

 まあ、それについては達者な役者たちの演技もあるんだろうけどね。

 なにより拍手したいのは、監督の実兄長門裕之の演技だ。

 晩年はどうしても大物の役が多く、動かない役回りだったのが、

 この映画ではおもいきり爆ぜてる。

 弟がマキノを名乗って監督しているし、

 恥ずかしい演技はできないっておもったんだろうね。

 飛び回り、叫び回り、哀愁を籠め、頑固に振る舞い、照れてみせる。

 長門裕之の演技の集大成になってるっていってもいいくらいだ。

 そういうことでいえば、出演者はびっくりするくらい豪華なんだけど、

 映画となればこの役者とかっていう人達が出てきてないのがまた好ましい。

 ただ、なににも増して好いのは、動物の撮影だ。

 実景班は、役者の撮影に入る半年も前からカメラを回してるみたいで、

 まあ、そうでなくちゃ、

 象の交尾とか、象の雪だるま投げとか、ゴリラのドラミングとか、撮れないよね。

 西田敏行が退職して去っていくとき、動物たちはいっせいに鳴き、

 ペンギンにいたっては「おつかれさまでした」といってでもいるように頭を下げる。

 もう、凄い。

 一般の映画の実働日数では絶対に撮れない映像だった。

 ちなみに、ぼくは動物が好きだ。

 小学校の頃、動物のフィギュアを集めることに没頭してた。

 集めていたのはイギリスのブリテン社のもので、

 まがいものの香港製品とかとは比べ物にならないくらい精巧なフィギュアだった。

 その後、アメリカのサファリ社やドイツのシュライヒ社とかが隆盛を極めて、

 ブリテン社はなくなってしまったんだけど、

 ぼくにはどうも顔が妙に愛らしくなってしまったサファリやシュライヒは苦手で、

 母親の買い物について名古屋へ行くたびに、ブリテンの動物を買ってもらった。

 何百体になったのかわからないけど、いまでも200体くらいはあるんじゃないかしら。

 当時、動物フィギュアは名古屋でも松坂屋でしか取り扱ってなくて、

 それも、ほんのちょっとショーウィンドウの中に陳列されてるだけで、

 象やキリンやライオンやゴリラはいつもあるんだけど、

 カモノハシやオカピやチンパンジーはめったに入ってこなかった。

 もっとも、いまでは、フランスのパポ社もくわわり、

 Schleich(シュライヒ)、PAPO(パポ)、Safari(サファリ)といって三つ巴の競争で、

 どこも大量の種類を出して、どんどん精巧になってる。

 動物園の売店とかに行っても、見かけるようになったのは、

 20年くらい前だったような気がするけど、ともかくその頃からフィギュアは変わった。

 そんなぼくにとって、旭山動物園の話はなんとなく身近な感じがして、

 ついつい見方も肩入れしたものになっちゃう傾向にはある。

 ま、仕方ないよね。

 ただな~、こういう映画を観ると、

 どうしても、また、フィギュアを集めたくなっちゃうし、旭川にも名古屋にも行きたくなる。

 でも、そんな予算も時間もないから、

 とりあえずは、恩賜上野動物園にでも行ってみようか。

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