◇パットン大戦車軍団(1970年 アメリカ 170分)
原題 Patton
staff 原作/ラディスラス・ファラーゴ『Patton』
監督/フランクリン・J・シャフナー
脚本/フランシス・フォード・コッポラ エドマンド・H・ノース
撮影/フレッド・J・コーネカンプ 特撮/アート・クルックシャンク
特殊効果/L・B・アボット 視覚効果/アレックス・ウェルドン
美術/ウーリー・マクレアリー ジル・パロンド
軍事監修/オマル・ブラッドレー 音楽/ジェリー・ゴールドスミス
cast ジョージ・C・スコット カール・マルデン カール・マイケル・フォーグラー
◇大胆不敵であれ!Be audacious!
1944年6月5日、ノルマンディー上陸作戦を前にして、
パットンは、とてつもなく暴力的な演説をした。
映画の冒頭にあるのがそれで、
星条旗を背にして登壇するパットンの姿が、すべてを語っている。
この場面はそのままポスターにもなってるけど、
あまりにも有名すぎて、パットンといえばこの絵だ。
ていうか、
パットンといえば、ジョージ・C・スコットというくらい、役に嵌まりすぎてた。
史上最高の演技のひとつっていわれるのは、無理もない。
実はこの作品の続きにあたるテレビ映画があって、
『パットン将軍最後の日々』
っていうんだけど、これも146分あるから、合わせて観ると316分、
つまり、5時間16分の超大作になっちゃう。
ジョージ・C・スコットがパットンそのものに見えてきちゃうから困りものだ。
まるで、栗塚旭が土方歳三に見えてくるようなものだよね。
ま、それは余談だけど、
この作品、上手にできている。
さすがはフランシス・フォード・コッポラというべきで、
いっておくけど、大戦車軍団うんぬんっていう映画じゃない。
パットンという、
あまりにも言葉と態度が暴力的な、しかし愛すべき武断派の半生が、
いろんな挿話をまじえて語られている。
北アフリカ、シチリア、ノルマンディなどの戦線、野戦病院、そしてバルジ作戦と、
伝記映画としてはたしかに派手な作りではあるけれど、
獰猛な野獣のような戦争狂とまで陰口を叩かれる、
軍人の中の軍人ってのはいったいどんな人間なんだ、
ってことを、ぐいぐい見せてくれたことはたしかだ。
ただ同時に、
人間はどれだけ才能があっても言葉や態度がその才能を潰してしまうか、
あるいは対人関係に齟齬をきたしてしまうことが多々あるという、
なんとも痛烈な戒めもまた感じるよね。
どこまでも誇り高く生きようとすれば、それはときに敵を生み、嫌われる。
我慢を知らない人間はたしかに正直ではあるけれど、やはり損な人生になる。
人間関係というのは、ほんとに難しい。
そんなことを、この映画はパットンという鮮烈な軍人の半生によって、
多角的に教えてくれているような気がするんだわ。
そういうところが、
他の戦争映画とは一線を画すところなんだろね。