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男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎

2019年11月10日 00時54分37秒 | 邦画1981~1990年

 ◇男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983年 日本 105分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 竹下景子

 

 ◇第32作 1983年12月28日

 竹下景子は夢ではお見合い写真で登場するだけだけれども、偽物の寅として登場するのがレオナルド熊だった。

 そうか、この時代だったのかとおもったわ。中井貴一も杉田かおるも若いカップルなんだもんね。ちなみにこの夢の中でいつもの寅の口上は言っちゃってるもんだからタイトルバックの歌の前の口上は「大道三間 軒下三寸 借り受けましての渡世 わたくし、野中の一本杉でござんす」と替えられてる。

 なんだか雰囲気が違うぞとおもってれば、やっぱり後々まで印象に残るものだったのか、この作品のロケ地高梁については後のテレビの特番で倍賞千恵子と前田吟が訪れて懐旧の情に浮かべてた。なるほど、博にとっては故郷になるんだものね。それにしても備中高梁の薬師院、立派だな。

 坊主に扮する一連の喜劇的な場面はまあいつものとおりだけれども、観ていておもったのはこの前年に志村喬が亡くなったことだ。

 で、そのお葬式に寅が出られなかったことをお墓参りしながら寅が物語るわけだけど、たしかにこういう話を作らないと、いつのまにやら志村喬がいなくなっちゃうことになるもんね。

 もうひとつおもったのは松村達雄のことだ。どんな理由からおいちゃんを辞めたのかはわからないけど、そのあとも何回か出演してるところをみると、揉めて辞めたわけでもなさそうだし、なんだったんだろうね、理由は。

 まあそのあたりのことは擱いといて、ここでも寅はもてる。なんでか知らないけど、高梁のひとびとは寅を多少のあざけりも含めて馬鹿にしながらもなんとなく気に入ってる感じにまとめられてる。

 なんの関係もない他人は岡目八目だからそうなるんだけれど、なんでまた竹下景子のようなかいがいしく立ち働くインテリの出戻り娘が寅に惚れるのかわからないし、中井貴一と杉田かおるの純情を案じたという体でとらやにまでやってくる気持ちを、寅はいつものとおり誤魔化して、ふる。

 父親の松村達雄が竹下景子に「おまえも再婚したらどうだ」と訊いたら「寅さんみたいな人なら再婚したい」といったことになってるわけだけれども、それを寅は逆に利用して誤魔化す。

 頭の良いやつだとおもうわけだけれども、まあ、寅の人生と優しい気持ちをおもえばそうでもしてごまかさないと結局は不幸な将来しか待ってないからね。

 でも、そういうことをわかってるんなら、寅はあまりにも阿呆か残酷だな。

 自分の片思いだけを愉しんで、いざとなったら身をひくというか逃げる。その気にさせておいて逃げるというのはいちばん卑怯だとおもうんだけどな。

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