▽男はつらいよ 幸福の青い鳥(1986年 日本 102分)
監督/山田洋次 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 志穂美悦子
▽第37作 1986年12月20日
なんか、つらいな。
桜田淳子でも出てくるのかとおもったら、そんなことはなかった。
青い鳥探しの夢はともかく、タイトルバックの萩の祭はよかったものの、それから後はなんだかちょっとね。飯塚炭鉱の芝居小屋でかつての旅芝居の座長が死んだという話を聴くんだけど、それが大空小百合こと岡本茉莉の父親を演じていた坂東鶴八郎こと吉田義男で、ところがこれはかなり現実的な話でこの作品が公開された二日後に吉田は亡くなってる。それは、ちょっときつい。
いったい、この筋が作られたとき、吉田はどんな状態だったんだろうっておもうと、ぼくが吉田だったらかなり辛いな。
だし、岡本茉莉にしたって、寅のことは「車先生、車先生」と慕ってる感じを濃厚に出してたわけで、志穂美悦子が寅に再会にしたときに顔を忘れてて、やがて「寅さん?」というのは違和感がある。成長してから何度も会ってるじゃないか。
それは吉田義男にしてもそうで、準レギュラーみたいに坂東鶴八郎一座は登場してたし、なんだか十年以上も会ってなかったような雰囲気の物語はどうもなあ。なにより坂東鶴八郎じゃなくて中村菊之丞にされてるし。
だから、できれば別な設定にしてほしかったな。炭鉱夫の娘だっていいじゃんね。飯塚炭鉱なんだから。
芝居小屋の嘉穂劇場の表には梅沢冨美男の看板とか出てたから、当時そのままロケセットに使われたんだろうけど、そこでロケがしたかったのかしら?
だから座長の娘っていう設定にしたのかしら?
あるいは吉田義男の希望だったのかしら?
それならなんとなく納得できるけど、だったら坂東鶴八郎で通さないといけないし、岡本茉莉を起用しなければあかんでしょう。強引だな、松竹。
まあそれにしても、このシリーズは役者同士を出合わせるのかな。沢田研二と田中裕子もそうだったし、ここでも志穂美悦子と長渕剛を引き合わせてる。どちらのカップルもすったもんだしたけどさ。
にしても、寅はいてもいなくてもどうでもいい印象を持っちゃったのは僕だけなんだろうか。
正面から恋もできないような寅ってなんなんだろうね。いやそもそも、志穂美さんがコンパニオンを辞めて上京してくる理由がないし、中華そば屋で働くくらいなら九州で充分じゃないかっておもうんだけどな。
なんだかすべてがあらかじめ敷かれているレールの上を走っているだけの物語って感じがして、つらかったわ。