△男はつらいよ 寅次郎の告白(1991年 日本 104分)
監督/山田洋次 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 後藤久美子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 吉田日出子
△第44作 1991年12月21日
やけに旅情たっぷりのモノローグで、落合川駅の雰囲気もまた良かった。
けど、中津川か恵那峡かの船旅を単に撮っただけの旅情のみの出だしはなんだったんだろう?
で、博のランニングから始まる初めての話だけど、まあ、あれだね、さくらの家で後藤久美子の噂をするのがワンパターンになってきたのね。満男も落ち着いてきたし、なんかね、時代は流れていくんだね。
それにしても、後藤久美子はよく抱きつくな。誰かに会うとしよっちゅう抱きついてる。前の回もそうだった。
誰に抱きついたかは覚えてないけど、なんていうのかな、後藤久美子の現代性なのか国際性なのか、もしもそれを表現しようとしてたんなら、かわいそうだけど、このときの彼女はそこまで演ずることになれてなかった。日本人が日本人の生活習慣にないことを演じようとすると、どうしてもこうなっちゃうんだよね、照れ臭くて。だから、かわいそうといえば、かわいそうだった。
しかし、寅はお悔やみをいうとき、帽子を脱がないのかね。墓参りのときも、そうだ。殊勝な態度でいるなら帽子を取らないとあかんのじゃないか?
ま、それはそれとして、寅は両思いになるとなぜ逃げるのかという最大の疑問なんだけど、後藤久美子の問い掛けに満男はこんなふうにこたえるんだな。綺麗な花は摘み取りたいのか、そっと眺めていたいのか、と。しかし、寅はもてるね。その恋の相手なのか憐憫の相手なのか友情の相手なのかわからないけど、ともあれ、吉田日出子、死んでしまえとおもっていた亭主に死なれた料亭の女将をちゃんと演じてた。
で、寅だ。寂しくなることはないのかと聞く満男に「ばかやろう、寂しさなんてのは風が吹き飛ばしてくれるよ」と。これはこれでいいんだ。でも、あまったるい挿入歌は気持ち悪かった。ま、なににせよ、寅はつらいな。
「ばかね、おにいちゃん、なにやってんだろ」
と、玉葱を切りながら洟はなをすするさくらの背中は、うん、上手だった。
しかし、笠智衆はこのとき幾つだったんだろう。歳食ってたなあ。