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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

男はつらいよ 幸福の青い鳥

2019年11月15日 00時46分34秒 | 邦画1981~1990年

 ▽男はつらいよ 幸福の青い鳥(1986年 日本 102分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 志穂美悦子

 

 ▽第37作 1986年12月20日

 なんか、つらいな。

 桜田淳子でも出てくるのかとおもったら、そんなことはなかった。

 青い鳥探しの夢はともかく、タイトルバックの萩の祭はよかったものの、それから後はなんだかちょっとね。飯塚炭鉱の芝居小屋でかつての旅芝居の座長が死んだという話を聴くんだけど、それが大空小百合こと岡本茉莉の父親を演じていた坂東鶴八郎こと吉田義男で、ところがこれはかなり現実的な話でこの作品が公開された二日後に吉田は亡くなってる。それは、ちょっときつい。

 いったい、この筋が作られたとき、吉田はどんな状態だったんだろうっておもうと、ぼくが吉田だったらかなり辛いな。

 だし、岡本茉莉にしたって、寅のことは「車先生、車先生」と慕ってる感じを濃厚に出してたわけで、志穂美悦子が寅に再会にしたときに顔を忘れてて、やがて「寅さん?」というのは違和感がある。成長してから何度も会ってるじゃないか。

 それは吉田義男にしてもそうで、準レギュラーみたいに坂東鶴八郎一座は登場してたし、なんだか十年以上も会ってなかったような雰囲気の物語はどうもなあ。なにより坂東鶴八郎じゃなくて中村菊之丞にされてるし。

 だから、できれば別な設定にしてほしかったな。炭鉱夫の娘だっていいじゃんね。飯塚炭鉱なんだから。

 芝居小屋の嘉穂劇場の表には梅沢冨美男の看板とか出てたから、当時そのままロケセットに使われたんだろうけど、そこでロケがしたかったのかしら?

 だから座長の娘っていう設定にしたのかしら?

 あるいは吉田義男の希望だったのかしら?

 それならなんとなく納得できるけど、だったら坂東鶴八郎で通さないといけないし、岡本茉莉を起用しなければあかんでしょう。強引だな、松竹。

 まあそれにしても、このシリーズは役者同士を出合わせるのかな。沢田研二と田中裕子もそうだったし、ここでも志穂美悦子と長渕剛を引き合わせてる。どちらのカップルもすったもんだしたけどさ。

 にしても、寅はいてもいなくてもどうでもいい印象を持っちゃったのは僕だけなんだろうか。

 正面から恋もできないような寅ってなんなんだろうね。いやそもそも、志穂美さんがコンパニオンを辞めて上京してくる理由がないし、中華そば屋で働くくらいなら九州で充分じゃないかっておもうんだけどな。

 なんだかすべてがあらかじめ敷かれているレールの上を走っているだけの物語って感じがして、つらかったわ。

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男はつらいよ 柴又より愛をこめて

2019年11月14日 00時33分27秒 | 邦画1981~1990年

 △男はつらいよ 柴又より愛をこめて(1985年 日本 106分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 栗原小巻

 

 △第36作 1985年12月28日

 夢は、NASAの宇宙飛行士になった寅が打ち上げの際のあまりの緊張に何度も尿意を催し、ついにおしっこを漏らすところまでなんだけど、中継アナウンサーの松野直美が女子高生になって友達らと寅を覗き込んで「おじさん、大丈夫?」と声をかけてくるところで目覚める。ここで、おもわず笑った。寅さんシリーズで笑ったのは何作ぶりだろう?

 この目覚めた会津高田駅が好い。只美線の沿線ロケーションもまた好い。まあ、1stシーンでさくらが帝釈天前を自転車で通り過ぎるわけだから、荒川の土手をタイトルバックにすることもないしね。地方ロケの方が味があるな。

 ところで、美保純が家出したことで太宰久雄が森本毅郎の番組に出のて叫ぶのは、一世一代の演技だな。

 にしても、寅、すごいな。下田でちゃんと美保純を探し出すとは、顔が広い。いや、顔が広いというか、初めて凄いとおもったわ。

 甘える美保純に男女のことわりをさりげなく講釈すると、どうして寅さんにお嫁さんが来ないんだろう、おれはめくらだからな、となる。よくわからんやりとりだけど、まあいいか。

 ただ、美保純を旅館に残して古なじみと呑んで帰らないというのはなんかね、いくらなんでもね、もしかしたら美保純とただならぬ関係になったらあかんという心配からなのだろうけど、そんなことを考えること自体おかしいだろ。美保純は小さい頃から寅に遊んでもらってたわけで、寅の気の回しようはおかしいぞ、やっぱり。

 しかし、あれかね、シリーズで唯一のヌードというのは、美保純が海岸の温泉に浸かったときにお尻と横からおっぱいが見える、これのことか~。

 それはさておき、いくら女先生にあこがれ、そうなろうとした栗原小巻に一目惚れしたとはいえ、美保純に「金魚のうんこみたいにくっついて気持ち悪い」とまでいわれるのはもちろんながら、栗原小巻もさみしいのはわかるけど、どこの馬の骨ともわからん寅にくっついてこられて島を案内とかしちゃうかな?

 そんなに人恋しいのかよとおもってて、またどうせなんかの都合でとらやを尋ねてくるんだろな~とおもってれば、その矢先、やっぱりそうなった。

 それはお決まりだからいいけど、川谷拓三と待ち合わせたマリオンの店内音楽が『カチューシャ』で夕食を食べに行った先の生演奏がバラライカだ。まあ、あれだね、やっぱり栗原小巻は『モスクワわが愛』なんだね。

 綺麗なんだけど、なんか強いな。厭味にならない高慢さというか、ひたすら重い。

 なところで、当時はまだ、調布飛行場の新中央航空の離島航路の発着所は、トタン屋根のバラックなんだね。ここでの演技ていうか台詞はまさしく舞台で、双発機が出ていくときにおもわず「ここは、カサブランカか」とおもったわ。

 ま、それはともかく、さくらが旅に出る寅を見送って帰ってきて「憑き物が落ちて、ホッとしたような顔をしてたわ」という台詞はまさしくそうだね。憑き物なんだよね、寅の恋は。

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男はつらいよ 寅次郎恋愛塾

2019年11月13日 23時37分45秒 | 邦画1981~1990年

 ▽男はつらいよ 寅次郎恋愛塾(1985年 日本 108分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 樋口可南子

 

 ▽第35作 1985年8月3日

 タイトルバックは、信州の舞田駅。夢に出てくる姨捨山は、ここだったかしら。

 ま、そのあたりはいいとして、クレジットが終わって様子が、かわった。これまではさくらが自転車で、まあ、ちょいと数回原付きだったこともあるが、ともかく帝釈天の前を通り過ぎてとらやへやってくるところから始まるんだけど、満男が校門から出てくるところが1st Sceneになってる。

 吉岡秀隆の成長がひしひし感じられるね。

 けれど、新鮮なところはそれくらいなもので、なんだこれはっておもわず口をついて出てしまいそうになるくらい、時間が逆行しちゃってるような物語におもえて仕方がない。

 恋のキューピットとかいう使い古した名詞のとおりに寅が行動するのは、田中裕子とジュリーでもうとっくのとうにやっちゃったじゃないか。

 またもや、惚れた女に惚れている男のために、もちろん、からかい半分で、心の奥底では「どうせうまくいきっこないんだから、さっさとふられちまえ」っていういつものとおりの寅の醜い部分が頭を擡げてきてて、それに天罰を蒙るように若い連中は上首尾に運んで、傷心の寅はさっさと旅に出るんだけれども、まだおなじこと繰り返すのか、寅。

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男はつらいよ 寅次郎真実一路

2019年11月12日 23時26分39秒 | 邦画1981~1990年

 ◇男はつらいよ 寅次郎真実一路(1984年 日本 107分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 大原麗子

 

 ◇第34作 1984年12月28日

「ごじらだっ」

「あれは、ごじらではありません、どちらかというとえりまきとかげに似ております」

 とかいう夢からして嫌な予感はしていた。

 寅のいつもぶら下げてるお守りを水戸黄門の印籠のように掲げるとお守り光線が出てやっつけるのだが、最後の悲鳴が「寅さ~ん」で、目が覚めるとGodzillaの被り物をかぶった子供におこされるという寸法だが、なるほど、いかに松竹とはいえ「ギララだ」というたらあかんのね。

 ところで、これは米倉斉加年の物語だ。

 これまで巡査や夢の準レギュラーで貢献してきたことへのねぎらいのようで、米倉贔屓の僕は嬉しかったりする。

 しかし、きびしいな。一杯おごってもらったからといっていきなり勤め先を訪ね、待ち、望郷のおもいを刺激し、嫁の大原麗子に横恋慕し、さらに留守宅まで上がり込み、あまつさえ占いの婆のいうことに惑わされ、とらやの金を寄越せと大喧嘩する。ここまで阿呆なのかととことん追い込んでいくのだが胸が苦しくなるくらいの無知と貧困と情けなさだ。

 我が身をふりかえれば、寅やとらやの方がましだしまともだとおもうものの、目を背けたくな身につまされるな。

「こいつは自分じゃなんにもしないくせに口先ばかりえらそうなこといって」

 というおいちゃんこと下條正巳の台詞にはぐさりとくるわ。

 まあしかし、米倉斉加年を探して鹿児島まで旅立つ大原麗子にくっついてゆく寅という展開をおもしろいとおもうかおもわないか、これは、寅とその無邪気な純粋さかあるいは無知による迷惑なお節介かどちらと捉えるかは、観客次第だろうね。

 でも、大原麗子にしても、その縁者たちにしても、笑顔が多くて大丈夫なんだろうか。まあここで、シリアスになっても仕方ないか。

 とはいえ、うなぎ温泉で寅をかたって宿泊していたことを知ったとき、どこかに泊まろう、という大原麗子に対し、タクシー運転手桜井センリの家に泊まるという寅に「つまんない、寅さん」という大原麗子に「奥さん、おれはきったねえ男です」と、無法松のような台詞をとばす寅について「人妻に恋して旦那がこのまま行方不明になってほしいとする自分の醜さを汚いとおもっているのか」という博の解説と「おれは罰当たりな男だ、おれは醜い」という寅の心持ちは、なるほど、これまでにはなかったものかもしれないね。

 それにしても大原麗子の胸の内はどうだったんだろう?

 米倉斉加年のことを生きていてほしいと心の底からおもってたんだろうか?

 たしかに心配していたことに疑う余地はないだろう、見つかったときは嬉しかったろう、これから先も幸せな家族として過ごしていくだろう。でも、寅との旅は愉しかったはずだ。となると、どうなんだろうね。女心は複雑だな。とかいう人間の暗黒面をおもうと☆はひとつ増やさないとあかんのだろうな。

 だから、☆三つで◇にした。

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男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎

2019年11月11日 01時01分41秒 | 邦画1981~1990年

 ▽男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎(1984年 日本 102分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 中原理恵

 

 ▽第33作 1984年8月4日

 どこかの国の港町の酒場を舞台にした夢は、中原理恵と渡瀬恒彦が出る分、とらやの面々は出ない。なんか雰囲気ちがうね。

 タイトルバックは岩手県北上市岩手山。鬼柳鬼剣舞でコントをする。のぼるが、かみのはしのたもとで今川焼きの店を経営してる。なんだか、懐かしいな。

 まあそれはそれとして、なんだよ、寅、ナンパしてんのか?寅が床屋で見かけた中原理恵をわざわざおいかけてナンパし、さらにレストランで金がなくておごらせるといういつもの図はわかっちゃいるけどなんだかね。いくらなんでも、もうつらすぎる。

 で、男と出て行った嫁をおいかけてきた佐藤B作に同情してという、まあ旅は道連れというやつで、寅の主題のひとつではあるけどなんかな~、寅がもうすこしおせっかい度が高ければB作を駅で見送った後、中原理恵がさりげなく手を組むのもありかとおもうが、最初から寅はB作を厄介者あつかいだし、なんだかね。

 で、これまたいつものとおり、中原理恵の見え見えのさくら客だ。そこでようやく渡瀬恒彦のオートバイサーカス野郎の登場ってことになるんだけど、早くも前半が終わっちゃう。これはきついな。

 で、やっぱりいつものとおり、寅はもてる。

 中原理恵に「寅さんと一緒にいたい、ついていきたい、貯金もある」とかいわれたら、さくらに説教されたときのことをいいだして、説得にまわるってのはなんだろね。案外白状なんだねと恨みがましく呟いて立ち去りかける中原理恵に「そこまで送ろうか」とあほな台詞をいう寅だが、大丈夫子供じゃないんだからという中原理恵にしてみれば「いったいなんでナンパしてきたんだよ、てめ」みたいなもんだよね。

 それでも翌朝「寅さんがもうすこし若かったら、あたし、寅さんと結婚するのに」とまでいわせる寅のもてぶりは凄いな。

 髪結いの亭主になりそこねた寅の話だったわけだけど、その後わけがわからん。

 中原理恵は渡瀬恒彦にたぶらかされる半分、寅をおいかけるために渡瀬恒彦の女になるみたいな展開で、結局、東京まで追いかけてきて、それで死にそうな病気になってとらやに収容されて助けられたかとおもいきや、寅が渡瀬恒彦を説得して別れさせたかとおもえば、中原理恵は病をおして「別れてくる」という。

 半分、逢いたいのだ。男と女だね。しゃぶりあうような暮らしをするとそうなるんだな。

 しかし「同じ渡世人同士話をつけた、だからもうあんな遊び人とは会うな」という寅に、中原理恵が「寅さんだって遊び人じゃないか、今同じ渡世人同士といったじゃないか」といって雨の夜に飛び出して行っちゃって、結局、なんの音沙汰もなく数か月後に手紙、そしてまったくの別な情けないがまじめな男と結婚とかって、こんな展開あるかね?

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男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎

2019年11月10日 00時54分37秒 | 邦画1981~1990年

 ◇男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎(1983年 日本 105分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 竹下景子

 

 ◇第32作 1983年12月28日

 竹下景子は夢ではお見合い写真で登場するだけだけれども、偽物の寅として登場するのがレオナルド熊だった。

 そうか、この時代だったのかとおもったわ。中井貴一も杉田かおるも若いカップルなんだもんね。ちなみにこの夢の中でいつもの寅の口上は言っちゃってるもんだからタイトルバックの歌の前の口上は「大道三間 軒下三寸 借り受けましての渡世 わたくし、野中の一本杉でござんす」と替えられてる。

 なんだか雰囲気が違うぞとおもってれば、やっぱり後々まで印象に残るものだったのか、この作品のロケ地高梁については後のテレビの特番で倍賞千恵子と前田吟が訪れて懐旧の情に浮かべてた。なるほど、博にとっては故郷になるんだものね。それにしても備中高梁の薬師院、立派だな。

 坊主に扮する一連の喜劇的な場面はまあいつものとおりだけれども、観ていておもったのはこの前年に志村喬が亡くなったことだ。

 で、そのお葬式に寅が出られなかったことをお墓参りしながら寅が物語るわけだけど、たしかにこういう話を作らないと、いつのまにやら志村喬がいなくなっちゃうことになるもんね。

 もうひとつおもったのは松村達雄のことだ。どんな理由からおいちゃんを辞めたのかはわからないけど、そのあとも何回か出演してるところをみると、揉めて辞めたわけでもなさそうだし、なんだったんだろうね、理由は。

 まあそのあたりのことは擱いといて、ここでも寅はもてる。なんでか知らないけど、高梁のひとびとは寅を多少のあざけりも含めて馬鹿にしながらもなんとなく気に入ってる感じにまとめられてる。

 なんの関係もない他人は岡目八目だからそうなるんだけれど、なんでまた竹下景子のようなかいがいしく立ち働くインテリの出戻り娘が寅に惚れるのかわからないし、中井貴一と杉田かおるの純情を案じたという体でとらやにまでやってくる気持ちを、寅はいつものとおり誤魔化して、ふる。

 父親の松村達雄が竹下景子に「おまえも再婚したらどうだ」と訊いたら「寅さんみたいな人なら再婚したい」といったことになってるわけだけれども、それを寅は逆に利用して誤魔化す。

 頭の良いやつだとおもうわけだけれども、まあ、寅の人生と優しい気持ちをおもえばそうでもしてごまかさないと結局は不幸な将来しか待ってないからね。

 でも、そういうことをわかってるんなら、寅はあまりにも阿呆か残酷だな。

 自分の片思いだけを愉しんで、いざとなったら身をひくというか逃げる。その気にさせておいて逃げるというのはいちばん卑怯だとおもうんだけどな。

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男はつらいよ 旅と女と寅次郎

2019年11月09日 00時44分11秒 | 邦画1981~1990年

 ▽男はつらいよ 旅と女と寅次郎(1983年 日本 101分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 都はるみ

 

 ▽第31作 1983年8月6日

 なるほど、都はるみの舞台で終わるから冒頭の夢も舞台なわけだ。くわえて寅と都はるみの逃避行のような旅が佐渡だから佐渡金山の飢饉を救った寅の夢になるんだね。

 それはまあいいとしても、吉岡秀隆の運動会に出るだの出たら迷惑だのという第一幕はあまりにも辛かった。

 まさか運動会のような大芝居はロケ費も嵩むからありえないだろうし、もしも寅が運動会で大顰蹙を買うようなことになったらもう堪えられないとおもっていたらそこはやっぱり吉岡秀隆の泣きで収まったものの、この寅の傍若無人ぶりはいったいいつまで続くんだろう。

 いくらなんでも、もうきついな~。

 ま、それもいいけど、都はるみとの『ローマの休日』みたいな展開も辛かった。

 ただ唯一の救いは、寅が北林谷栄によって都はるみの正体を知ってからもしばらくのあいだはとぼけて旅を続けてやったことで、寅は寅の惚れたおもわくで旅を続けたいとおもったにせよ、都はるみの勘違いというか寅の善良さを過剰評価したというか、ともかく感謝されたということだね。

 でも、あとは『涙の連絡船』みたいな『あんこ椿は恋の花』みたいな『伊豆の踊子』みたいな佐渡の別れのほかはやっぱり辛いな~。

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男はつらいよ 花も嵐も寅次郎

2019年11月08日 00時39分50秒 | 洋画1981~1990年

 ▽男はつらいよ 花も嵐も寅次郎(1982年 日本 106分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄  田中裕子

 

 ▽第30作 1982年12月28日

 タイトルバックはまたいつものように江戸川の土手になるんだけれども、夢の中でジュリーが歌って踊ってた。

 沢田研二と田中裕子なんだけど、映画の中は湯平温泉でなんとも純情可憐な出会いをする。

 まあそれはそれとして、なんだか寅は好きになったのかならなかったのかあやふやなまま、ずうっとふわふわしどおしで、沢田研二が振られるように仕向けたり応援したりでなんとも中途半端なまま時間が流れ、ふたりが観覧車で添い遂げたんだろうな~とおもったとき、嬉しいのか嬉しくないのかわからないまま旅に出る。

 ほんと、ちからがなくなってきたのか、やっぱりそれなりの年齢になってきちゃったのか、シリーズはつらいね。

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男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋

2019年11月07日 00時31分02秒 | 邦画1981~1990年

 △男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋(1982年 日本 110分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 いしだあゆみ

 

 △第29作 1982年8月7日

 あれれ、タイトルバックは江戸川の土手じゃなくて信州北アルプスの木崎湖だよ。しかも歌の合間に小芝居まである。寅がとらやに葉書を書くんだけど、湖畔で絵を書いてる初老の趣味人に「懐かしいという字はどう書くんだい」と訊き、ついでに代筆まで頼み、そこでここぞとばかりに葛飾柴又の名乗りをあげるんだ。

 今回は違うぞ、といいたげだった。

 けど、そうでもなかった。あいかわらず、寅はもてる。

 ただ、人間国宝の陶芸家になってる片岡仁左衛門の元弟子の柄本明に棄てられた女中いしだあゆみになぜか惚れられる。まあ、男の出世欲というか願望を満たすためには恋愛も結婚も踏み台でしかないという醜さに打ちのめされると人生風任せの寅に錯覚の仮想恋をしてしまうんだろうけど、しかしここでも寅は逃げる。

 とらやへ逃げ帰って恋の病とかいって寝込む羽目になるのに、いつものとおり逃げる。

 いや、丹後伊根町まで訪ねてきて泊まるんだから、ひどい。

 錯覚中のいしだあゆみにしてみれば抱かれる気になるのは無理からぬことで、その高揚した気分のまま上京してとらやまで行ってしまったらもう止まらないね。付け文までして鎌倉に呼び出し、江ノ島の旅館で抱かれたいとおもいつめてしまうのは当然のなりゆきのような気もする。

 けど、寅は満男を連れていく。これはいしだあゆみに対して失礼だな。

 伊根でもその気になって部屋へ上がってきたいしだあゆみに寝たふりをするという卑怯さを見せるが、ここでもまた卑怯な手を打つ。にもかかわらずいしだあゆみと別れてから満男の前で泣いたりする。

 なんだ、このちぐはぐさは。

 まあたしかにいしだあゆみの行動はちょっと怖いが…。いやまじ、男日照りっていうのは難があるかもしれないけど、そんなふうにおもえちゃう。棄てられた腹いせではなくて、まじに追っかけてくるんだから、そう受け取られても仕方ない。

 そこまで失恋の傷がひどかったってことになるのかどうかはわかららないけど、が、しかし、恋に真正面から向き合わない寅はやっぱりあかんな。

 それ以上にあかんのは安物陶器をたたき売るとき、仁左衛門の名をかたることだ。それをなにもかも承知とかいう笑顔で仁左衛門も声をかけるのは好い結末みたいに見えるんだけど、これはよくない。寅のためにもよくない。

 これを大団円として認めてしまう日本人は、なんかふしぎだ。

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男はつらいよ 寅次郎紙風船

2019年11月06日 00時21分52秒 | 邦画1981~1990年

 ◇男はつらいよ 寅次郎紙風船(1981年 日本 101分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 音無美紀子

 

 ◇第28作 1981年12月28日

 前回の松坂恵子に続いて、今回の音無美紀子も夢に出てる。マドンナも出演するようになったのかしら。

 で、共演の岸本加代子の夢の台詞は『岸本加代子のかよこの小部屋にご出演なさいまして…』だし、テレビでとんかつの揚げ方を放映している伏線から、ノーベル賞をとった外科医の寅がメスをとると患者の腹はとんかつになり、そこへメスを入れてとんかつを切り取るという寸法だ。寅が一高の生徒になり、音無美紀子が看護婦に扮する愛染かつらの回想といい、今回はうまいな。

 しかし、本編、寅の惨めさは凄いね。同窓会で嫌ていうくらい迷惑がられて東八郎には面と向かって「おまえみたいなやくざもの」と罵倒されて醜態をさらす。心に突き刺さるくらい嫌な気持ちになる場面だけど、山田洋次の冷徹さは堂に入ってるわ。

 けど、小澤昭一の「おれが死んだらあいつを貰ってやってくれ。あいつが誰とも知らねえ野郎に抱かれるのは我慢ならねえ」ていう台詞は罪だな。音無美紀子にも同様の遺言を遺して死ぬんだけど、でもこれは呪縛じゃなくて引き鉄になってるんだよね、寅と音無美紀子のふたりにとって。

 本郷の坂の途中の電柱に『鳳明館』の広告看板がぶらさがってるのがなんとも懐かしかったけど、坂道のかたすみで話をしてとらやへ出かける約束を交わしたとき、もうふたりは両想いになってるんだな。このあたりのしみったれた風情はうまいね。

 でも、別れをどうするかはこういうときは難しいね。

 死んでいく人間への餞にうんといっただけよ、そうだよね犬や猫じゃないんだし呉れてやるとかいいかげんにしろっていうんだ、というふたりのやりとりはたしかにそのとおりで、でも、現実には「それはそれ」ってことになるはずだ。出会いのきっかけではあるけれどそのあとは生き残ったふたりの問題だから別な物語が始まるはずなんだけど、ここでも寅はやっぱりあっさりしたものだ。

 岸本加代子に妙なほど慕われたときもそうで、寅はふたり一緒の部屋で寝ることを拒み続け、いつものように宿の女将の部屋で寝る。健さんだったからかっこいいけど、寅だとどうにもかっこつけすぎか莫迦に見える。それが寅の寅たるゆえんなんだろうけど、ともかく、この回ではふたりの女に好かれて、ふる。すごいもてようだな。

 ところで寅は音無美紀子と所帯を持とうとして、本気で就職試験を受けるんだが、案の定、落とされる。あたりまえの話で、中学だって校長を殴って通わなくなったし、小学校の同窓会でも蛆虫か毒蛇のように嫌われてるほどの人望の無さだ。入社試験に通るはずがない。

 でも期待してたんだよね。ここが寅たちの甘っちょろいところで、世間の冷たさを実感した寅は自虐的な嗤いを浮かべる。紙風船なんだよね。山中貞雄だね。つらいね。なにもかも自分のせいなんだけど、人生を否定された寅としてはもう旅を続けるしかないんだね。どこかでおっ死ぬまで。

 でもちゃんと香具師をやってるんだから、ぼくより偉いか。

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男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎

2019年11月05日 00時09分02秒 | 邦画1981~1990年

 ◎男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎(1981年 日本 104分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 吉岡秀隆 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 松坂慶子

 

 ◎第27作 1981年8月8日

 松坂慶子、夢の中にまで登場してる。マドンナでは初めてことなんじゃないかしら。それとも、僕が憶えていないだけかな。

 あ、この回から吉岡秀隆が登場するんだね。まだ、じゅんの面影があって、おもわず「おお~」と口走ってしまったけど。

 松坂慶子はちょうど『愛の水中花』がヒットしてた頃のようで、寅も縁日で「愛の水中花」を売ってたりする。

 これはご愛嬌だが、それにしてもこの当時、大阪のカップルが遊びに行く山といえばやっぱり生駒山なんだね。

 宝山寺新地(生駒新地)に出かけていくわけで、それも松坂慶子は芸者なんだからその辺のところはよくわかっているはずだよね。だからそれとなく誘っていたってのもわからないんじゃないんだけれども、そこはそれ寅だから。男女の理にはまったくの頓珍漢だから、弟の存在を知るやすぐに下界へ降りちゃう。

 で、弟の死を知ることになるんだけど、この弟の恋人のマキノ佐代子が魅せる。お尻をだ。ジーパンのお尻を寅たちに向けて台所に立つんだけど、それはこのお尻と弟の恋人っていう対比が強烈で、だから大きくて形の好いお尻の彼女が抜擢されたんじゃないかっておもうわ。

 それと笑福亭松鶴も含めた初音礼子と芦屋雁之助のいかにも浪花的な濃厚なやりとりはどうだろう。ここらの場面は寅では珍しいな。

 ただ、やっぱり寅の美学にもならない弱腰の展開だ。いつもどおり逃げるのだ。童貞なのかとその臆病ぶりを罵倒したくもなるけど、これが高倉健だったら「かっこええな~っ」てことになる。ふしぎだね。

 それはともかく、松坂慶子はよく演じてる。弟の死を知るまでは好い恋をしかけてて、弟の死を知ったとき、寅が運送屋で「皆さん、お世話になりました」と仕切ってみせたとき、まじで惚れるんだね。で、酔いに任せてついに寅の胸で泣きたいとおもい、そのまま恋を成就させてしまいたい激情にもかられて木賃宿の「新世界ホテル」へ飛び込んでくるんだな。ほんとにもてるな、寅。

 でも、寅は逃げるんだ。ほんとに卑怯だな。女をその気にさせておいて、非道い男だとおもうよ。

 だから、山田洋次はそのあたりをしっかりと撮ってるね。松坂慶子が夜明け、たったひとりで宿を去っていくワンカットだけじゃなくて、さらにタクシーにまで乗って去っていくところをじっくりとワンカット。このあたりは、さすがだ。

 でも、そのあとが良くないんだな。

 松坂慶子がとらやにやってくるのはいい。寅を好きで、最後の賭けにやってきたのかとおもわせる。結婚の報告をするわけだから、ぼくらとしては「お、最後の賭けだな。結婚することにしたが、寅がするなといえばしない、おれの嫁になれといわれればなるってところだな」とおもうんだ。でも、ところが、どうやら結婚相手も東京に来てるらしい。

 なんとまあ、しかも松坂慶子が寅を好きだとわかってるから、とらやにまで電話をかけてくる。

 別れをいいに来たというわけなんだろうけど、ちょっと未練がましい気もしないではないし、なにより「寅がいるかどうかもわからない、せめて寅の故郷を見てみたい」という女ごころがそうさせたと解釈するのがいちばん好いんだろうし、寅と会えたのはまったくの偶然と解釈するのがいちばん納得できるのかもしれないんだけどね。

 いずれにせよ、松坂慶子は別れを告げにきたのではなくて、寅を忘れるために柴又に来たんだけど遭っちゃったんだな。

 ま、それはいいとして、ラストはいけないな。

 寅が、松坂慶子の嫁入り先の対馬まで往っちゃうんだ。夫の斎藤洋介も心の中は穏やかじゃないよ、ほんとは。しかも、松坂慶子が泣いて喜んでるんだから、この先、夫婦仲がまずいことになるんじゃないのかって終わりのようにおもえちゃうんだもん。浅丘ルリ子みたいな展開になればまた話は別だけど、そうじゃないんだからさ。

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男はつらいよ 寅次郎かもめ歌

2019年11月04日 00時03分05秒 | 邦画1971~1980年

 ◇男はつらいよ 寅次郎かもめ歌(1980年 日本 100分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 伊藤蘭 田中美佐子

 

 ◇第26作 1980年12月27日

 タイトルバック、荒川の土手と帝釈天に戻っちゃったね。

 で、初めて知ったんだけど、寅次郎の誕生日は昭和15年11月29日だそうな。伊藤蘭と一緒に授業を受けたくて夜間高校を受験しようとして履歴書を提出するんだけど、そこにあった。そんなに若かったんかいってのがいつわらざる感想だけど、そんなことはどうでもいい。

 どうしても、手を変え品を変え、いろいろと苦労が多くなってきたなっていう印象が濃く感じられるようになってきた。つらいね、ほんと。

 ちなみに、山田洋次が『学校』を撮ったのはこの作品から13年後の1993年で、その下敷きになったという『青春 夜間中学界隈』が出版されたのは1985年だから、山田洋次の定時制への関心はすでにこの頃からあったとおもっていいのかもしれないね。

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男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花

2019年11月03日 23時44分06秒 | 洋画1971~1980年

 ☆男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花(1980年 日本 108分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 江藤潤 浅丘ルリ子

 

 ☆第25作 1980年8月2日

 タイトルバックが変わった。

 それまで荒川の土手だったのが、白糸の滝になってる。まあ、茶店の前のベンチのシーソーギャグは変わらないが。山田洋次の原作脚本のタイトルはかならず帝釈天に被さっていたのに、茶店の軒に山を背景にしたところてんの旗になってた。ま、次の本編最初のカットは帝釈天の門なんだけどね。

 けど、すんごい不思議なんだけど、とらやの人達が水元公園に菖蒲を見に行こうとした矢先、寅が帰ってくる。けど、それを隠そうとするんだよね。結果、ばれて喧嘩になる。別に「あ、いいところに。一緒にどうよ」と誘えばいいのに、この余分な気の使い方がいつも悲しい。特に今回は、むりやりな印象が強くて難しいな。

 ところが、この後、俄然おもしろくなる。

 まあ、紆余曲折あるんだけど、寅は男だね。それもどうしようもなく、男の本能を隠せない男だ。

 リリーのために沖縄へ行こうとしてるのに、早く行かなくちゃ死んじゃうかもしれないとかいってるのに、飛行機が怖くて乗れず、にもかかわらず、スチュワーデスが通りすぎただけで鼻の下を伸ばして乗り込んじゃう。

 リリーの看病をしてるのに、海洋博のイルカシヨウのお姉さんに岡惚れしちゃうどころかそれがもとでヤキモチを焼いたリリーと大喧嘩になる。

 もはや古女房なんだけど、男女の関係はないんだな。

 しかし、ふとおもった。これだけ迫られても寅はリリーと結婚しない。男女の関係にもならない。どうひようもないくらい最低の女好きなのに、両思いになる瞬間に相手を避けて逃げ出していく。肝心のことができない。なんでだろうね。

 いつもは、こんなことは考えない。逃げ出しちゃって、終わっちゃうから。けど、今回ばかりは逃げられない。リリーが死線をさ迷った病み上がりだからだ。うまいな、山田洋次。

 しかし、だったらなぜ、寅は応えないんだろう?

 単なる度の過ぎた照れ屋というだけでは片づけられなくないか?性的な問題でも抱えているのか?不能とはおもいたくないがなんでこうも肝心な場面になると腰が引けちゃうんだ?この弱腰はどこから来るんだ?

 もうひとついうと、寅はいつも旅先では他人に好かれる。短い滞在だからだ。本性が見えてこないからだ。

 ところが、今回はちがう。

 リリーと一緒に、部屋は別ながらも下宿しているからだ。当然、下宿先の家族はリリーと寅の生活を見てる。寅の本性を知る。くだらない男だと見抜く。だから、リリーに同情する。かわいそうだとおもい、あんたも苦労するねと声をかける。入院のときは同室の連中も寅をおもしろい男だというだけで、底の浅さは見抜けない。接する時間が短いからだ。うまいな、山田洋次。

 そしてついに、リリーはみずから縁を断とうとする。ひとり、内地に帰る。寅が応えないからだ。寅を愛してるからだ。すごいな、山田洋次。

 ハブにかまれて死んじゃったんだよ、きっと。おばちゃんの台詞は効いてるね。近所のお母さんも子供を叱る。ご飯食べないと寅さんみたいに行き倒れになっちゃうよ。うまくまとめてるね。

 それにしても、寅はばかなのか察しがいいのか、リリーとふたりして「夢だ、夢だ」といってしまう淋しさはどうだろう。寅がひとり庭の軒下で柱によりかかって「夢かあ」と呟くに至るまで、うん、さすがだね。

 台詞は後半が進んでいくにつれてどんどん凄くなってくるし、佐藤峨次郎はいつもより出番が多すぎるくらいだけど、なんとか一座だのといった準レギュラーはまるでいないし、寅のアリアもないし、その分、最後までリリーはからむし、帝釈店前の通りのロケは多いし、いつもとまるで違う。撮り方までちがうように見えてくる。

 なんだ、この回は。凄いな。

 ま、お盆に笠智衆が棚経を上げに来たとき、蛸社長が「書き入れ時ですね」といい、御前さまが「今日はスケジュールが詰まっておりますからお経は少々短めに」と告げ、いいところだけちょこっとで結構でございますと応えて掌を合わせるとらやの面々は、ご愛嬌だけど。

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男はつらいよ 寅次郎春の夢

2019年11月02日 18時16分48秒 | 邦画1971~1980年

 ▽男はつらいよ 寅次郎春の夢(1979年 日本 104分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 ハーブ・エデルマン 香川京子

 

 ▽第24作 1979年12月28日

 夢がなんていうか日活の無国籍活劇みたいだった。

 このニューヨーク篇の後、タイトルバックの江戸川の土手に女子テニスや女子の陸上の風景が展開していくんだけど、寅の目の前でスコートで素振りしてるところをあおって撮ったり、ジャージを脱いでトランクスになるのをまた延々と撮ったりと、寅の目の毒になる光景が続いていくんだけど、なんだか日活からにっかつ続きみたいな感じだったわ。

 This is impossible。

 さすがに辛くなってきた観が感じられる。もう寅が主体の片思い話では通用しなくなってきたんだろうかって。

 さくらがハーブ・エデルマンに「アイラブユー」と告白されてしまったとき、また、さくらが寅に「実はね」と打ち明けたとき、さらには寅が「博にはいうなよ」と電話をしたとき、さくらは、そのとき初めて、恋を打ち明けられた女になってた。

 冒頭の蝶々夫人の夢がこのあたりで生きてくるんだけど、それにしても、こういうさくらの女としての性をわざわざ確認してしまう設定が必要だったのかどうかよくわからない。

 その分、香川京子との恋話がうすぼんやりとしてしまったような気もするし。

 いや、それよりなにより林寛子の役割にいたっては梅野泰靖がタンカーの船長として登場したときの説明役に過ぎないわけで、これがまた香川さんを薄めてしまった気もするんだな。

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男はつらいよ 翔んでる寅次郎

2019年11月01日 00時03分49秒 | 邦画1971~1980年

 △男はつらいよ 翔んでる寅次郎(1979年 日本 107分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 木暮実千代 桃井かおり

 

 △第23作 1979年8月4日

『寅版・黄色いハンカチ』かよとおもったけど、ちょっとちがってた。

 でも、第21作で九州弁の武田鉄矢が出てきたみたいに、どうも『幸福の黄色いハンカチ』とダブるし、北海道で桃井かおりに知り合って、色気違いの温泉旅館のぼんぼん湯原昌幸の冒頭とラストの登場もまた『ハンカチ』と妙にダブる。

 まあそれはいいとして、結婚式場から脱走するっていうのを見てて『卒業』までもダブってきた。いやこいつあ二本立てかいとおもいつつ、寅がいってたのか、結婚式から金襴緞子で逃げ出すのもありだなともおもった。とはいえ、どうもそれは見た目にも内容的にも重そうだよね。

 なんとなく最後には『絶唱』までおもいだす始末で、そういう余分なことをほろほろ考えながら観ちゃったわ。

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