Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング292. 小説:小樽の翆223. 芋煮会

2020年11月03日 | Sensual novel

 

 小樽の人も人寄せが好きだ。文化の日のお昼は、青空がひろがり晩秋といえる最後の頃だろう。10月の平均最高気温は15.7°だけど、11月は8.1°、12月1.7°、1月-0.7°と、気温は冬に向かって滑り落ちてゆく。そんな晩秋の最後、翆の実家で芋煮会だ。

だから翆は「お手伝いがあるから先にゆくよ。あとからゆっくりおいで・・・」

もちろんツカモッチャン先生のファミリーもやってくる。実家に近づくと歓声が上がっている。既にツカモッチャンファミリーの子供達がドッヂボールで遊んでいる。遊びの中心はマサヒロ君か。小春がいってたようにみんなカップルだ。突然頭数が倍になった。最初から賑やかな人寄せだ。ええっと、生まれた子供も加わるから24人のパーティー。

翆やパパやママ達が、家の裏庭の空地にひろげたデーブルにせっせと料理を運んでくる。ツカモッチャン先生が飲み物の箱を抱えてやってきた。これでメンバーが全員集合だ。

「さてお腹がすいた。食べようぜ」、とマサヒロ君がいい出した。

さてチキンを切り分けて・・・、みんないったかなぁー・・・、よし、食べよう。

パパ「あのう・・・、乾杯がまだなんですけどぉー」

マサヒロ「忘れた。じゃみんなに飲み物ついでぇー」

ツカモッチャンのママ「ほらパパ、食べていないで、乾杯よ!」

ツカモッチャン「ウググー!」

そんなわけで24人の芋煮会の乾杯。

乾杯 !・・まあ雷が落ちたときみたいな大歓声だよ。だって小学校の1クラス程の人数なのだから。

翆のパパはあごひげをなでながら、やはり子供達が多いのは素晴らしい。マサヒロ君に指4本、違った、二人目は茉莉さんのお腹の中だから、3本の指をだした!。たのんまっせ!!。

それにしても子供達は、ちゃんと彼氏彼女をつれてくるところがすごいじゃないか。

結婚している一太郎君と優子さんはおいといても、小太郎君はデザイナー志望の彼女、美希姉ちゃんは10番目の彼氏、明菜さんは先日めでたく彼氏をゲット、翼君はスイマーの彼女、小春も先日彼氏ができたし、あれ1人足りないじゃないか。あっ、そうか玲香姉ちゃんも結婚していたんだ。先日ツカモッチャン家で出産したばかりだった。

ツカモッチャン「うん、子供達の能力やプライバシーには、全然関心が無いの。気がついたら立派な大人になっていた、という感じかな」

多分、子育てというのは、それが正解なのだろう。

だって、今のように親が執拗に面倒をみすぎて、進学する学校を選んだり、教養も必要だというのでピアノだバレーだといってお稽古事をさせたり、親が将来の進路の相談に乗るなんていう昨今の子育て風潮と比較すれば、ツカモッチャン家は格段に自由だ。というかなにも面倒をみない。

精々ツカモッチャンがやったことは、絵を教えたこと、絵で物事を考えれば理解できるということ。そしてママからは、英語の基本を教えたぐらいだ。つまり生きる術の基本だった。あとは絵本なんて与えなかったといっているし、家の中にパパやママ達の本しかないから、子供達はいつのまにか、ソシュールやチョムスキーという名前を知っているという知的変形児かもしれない。変形は、成長とともに治ってゆくけど・・・。そんな事もあって、会話が絶えない人寄せだ。

だから、およそ人見知りしない子供達は、自分達で情報を集めて進路を決めてゆく位の自主性がある。それに子供達同士が仲が良くて、子供達に見合ったフィルターを通して、上から下へ情報が伝わるというのも面白い。そんな情報の最後が、小春を通じてアチキの耳にもくるという笑い話もあるが。だってみんな彼氏彼女とセックスしているなんて言う情報は、小春情報だもんね。そう考えれば、小春も含めて、みんなもう大人なんだ。

そう考えると、日本の平均出生率は平均7人もありか。それは大変だから5人ぐらいで勘弁して、というわけだ。翆のパパがあと5人とマサヒロ君にいうのも、そんなことがあるんだろう。ネコの子だって一度に4匹は産んで、年3回は妊娠するから12匹/年の出成率だ。もちろんネコには遠く及ばないが。ネコと比較しちゃ人間が可哀想か。

翆「芋煮、食べ頃よ。いきましょうよ!」

みんな食べ盛りだから・・・。

翆「大丈夫よ、あとでおにぎりとかお茶漬けがあるから、それに果物もあったな」

そんなわけで、賑やかな宴は、会話が絶えない。

アチキは、ツカモッチャン先生が忘れずに箱の中に潜めてくれたハニーウォッカをチビチビと飲んでいる。

コメント
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