札幌のベーヤンから、久しぶりにLINEがきた。
なにしろ、あの累さんの妊娠事件があったからご無沙汰だった。
→あの累という女には、まいっちまったよ。お腹をさすりながら出社してくるんだぜ。
←おぼこ娘なんて馬鹿にしているからだよ。それで養育費は、支払ったのかい。
→近所の医者にゆかせ診断書を持って来させたらやはり妊娠していた。しかも時期からいって相手は俺と確定。だからコロナ禍で儲けた医療株を全部売って、あいつに養育費を支払ったよ。そしたら、翌日退社届けをだして、さっさといなくなっちまった。
←思いっきりのいい女だね。よほど堕胎したくない理由があるんだろう。
→昼飯食べに来ない!
←あっ、懲りずにまた女の子をひったかけたんだ。
→まあね。今度は後腐れのない40代の主婦につきあったさ!
まったく、懲りない奴だ。じゃあ、つきあいますか・・・
・・・
チクコウの沖合のクルーザーを目にして、いつもの和食屋で昼食。
「今度は、主婦だってえ」
ベーヤン「旦那の出張の間に、一夜の情事さ。よくある話じゃん」
「仮面夫婦かな。お互いの過去を隠しながら暮らしてゆく、特に好きでもない男と一緒になることに納得してしまう。今はそんな仮面夫婦ばかりじゃないかな、それを家庭を持つ幸せと勘違いしてしまう」
ベーヤン「それがさあ子供作ってからは、旦那と10年近くセックスしていないんだって。しかも子供は一人っ子で、母乳はあげてないので身体は綺麗なんだよ。身体をもてあましていたんだろうな。だからものすごく燃えたよ。もうこんなの初めてといわれて快楽の頂点に向かっていったよ。あれ癖になりそう」
「子供の手が離れると時間ができる。育て終わると10年間のセックスレスが寂しさを呼び起こすというやつかなぁー」
ベーヤン「そのスキをついて誘惑する。長く暮らせば夫婦なんか惰性だから、当然旦那なんか愛していない。だから口説き落とすのは簡単。主婦って時間ができると、一寸恋みたいなことをしてみたいのだろう。それで駆け落ちでもする夢をみて、あっ、いけないといって、現実の生活に戻るんだよ。もちろんその夫婦の旦那は浮気しているよ」
「女は恋愛に餓えている。それでいて性欲だけが立ち上がっている、少し恋愛ごっこで性欲を昇華させようというわけだ。それって欲望のメカニズムだろうね。まあ東京や札幌の大都会なら、それが一般的かな」
ベーヤン「札幌だと人目があるから小樽の逢い引きが調度よいのさ。しばらくあの主婦の美ボディが癖になりそうだ」
(続)
・・・
ふと考えたが、ベーヤンを軸の右側において欲望特性、そして類は類を呼び、欲望の人間達がここにぶら下がる。それに対して左側には、翼君や文さんといった恋愛特性とする。この二つの対極的な特性をつなぐ軸があるのだろう。この軸の上で、人は右にゆくか左にゆくか、つまり右往左往している構図がみてとれるようだ。