Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング315. 小説:小樽の翆246. フェイクの女

2020年11月26日 | Sensual novel

 

 さて先日、花柳界の昔話を聞かされたジャズ喫茶ウォールストリートに来ちまった。話し好きのマスターは、相好を崩して、フェイクの女の話なんか興味ありませんか?。

マスター「昔といっても、それほど古くはないですが・・・。まあ男と女の話ですわ。結局お妾さんは、旦那と一緒になることも適わず歳をとっていったわけです。歳とともに花柳界では稼げなくなりますから、次第に生活も苦しくなり生活保護ですわ」

そういって、話に引きずりこまれた。

マスター「生活保護といっても必要最小限しかでませんから、もう少しお金がいるわけですわ。そこで旦那に、子宮癌なので余命1年もないというので、死ぬ最後に助けてくださいと懇願したわけですな。実際随分と痩せていたわけです。そりゃ生活苦ですから痩せるのは簡単ですわな。

 それで旦那は毎月僅かばかりのお金をあげていたわけです。それで1年立ちました。フェイクですから妾は死にません。そこで今度は乳癌だといいだしたわけです。医者の診断が違っていたというわけです。

 ところがですな、そんなところで、医者が診断を間違えると思いますか?。そんな基本的なところで検査機器が発達している時に、診断ミスなんかしないのですよ。妾の知識は、耳学問ですからね。

 だからホルモンが関係しそうだからといって妾がつくったフェイク話ですわ。ただし子宮癌が転移することはあるようですが。そうやって旦那から細々とお金をせしめていたわけです。女って、ずるがしこいですわなぁー」

「今度も、ばかに暗い話じゃないか」

マスター「まあ妾も、生きなければなりませんから、お金のありそうなところにすがるわけですよ。でっ、その後、旦那はどうしたと思います?」

「蒸発した」

マスター「いやいや、逃げたのではなく女に医者の診断書を持ってこいといったわけです。そこで、これがまた妾がつくった偽物なんですわ。

 旦那も公立病院なのにプリンターで出力したような診断書に疑問を持ったんですね。公立病院の書類は、公文書ですからすべて印刷ですわな。なにしろ妾は、病気ではないですから、診断書なんか出るはずがありません。そこで旦那が直接医者に尋ねたら、すべてフェイクということがわかった。

 それでお妾さんへのお給金は全額カットですわ。その後のことは、私は知りませんが、まあ生活保護で食べていったんではないですかぁー・・・・。

 だからお妾さんをつくるのはいいですが、年取ったときのことを考えなきゃ、ですね。さっさと手を切るのが賢い。手を切れば女は、新しい金ズルをさがしますから。女といいますか、人間といったらよいでしょうか、歳を取って生活が追い込まれたら、人間は、もう嘘八百でも何でもしますわなー」

「マスターは、人の世をよく見ているよね」

マスター「まあ、そんな話を聞かされることもあるし、いろいろですな。またレコードでもかけますか?。じゃ、少し軽い曲で。ベニーグッドマンなんかいかがでしょう。シング・シング・シングでも・・・・」

色あせたジャケットを取り出して、いつものレコードプレーヤーに針を落とした。

古すぎて知らねぇーよ!。

コメント
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