さてあと30分もすれば、仕事は終わりだな。そういって翆は引き継ぎ事項の書類を書いていた。
突然ナースステーションのホットラインが鳴り、「コード・ブルー、患者は循環器系、10分以内に到着!」
するとナースステーションが慌ただしくなり、循環器系の先生が駆けつけ「翆さーーん、てつだってぇー」。
それでホルター心電計とAEDを持ってストレッチャーを引き最上階へあがる。
そこににはストレッチャー毎運べる昇降機で屋上のヘリポートへ。
救急外来の医者や看護師が建ち並んでいる。
・・・
夕凪というべきか、昼の風がおさまり冷たい空気が身体をさす。
翆「ここは、回りに柵がないから、このまま吹きどばされそうで怖いよなぁー」
やがて南の方角から爆音が聞こえてくる。
ドクターヘリだ!!!。
やがてローターの旋風を巻き起こしながら、意外に大きい機体がヘリポートに着陸する。
まもなく患者を乗せた担架が運ばれてくる。
フライトドクターがうちの先生に容態を書いた診断書を渡して説明している。
その間に翆が患者の身体に機器のコードをつけてゆく。
翆「ああっ、2時間以内の救命救急か・・」
患者をストレッチャーに乗せてICUだな。
フライトドクターがもどりしなに、翆のネームプレートに眼をやった。
フライトドクター「君、晃子さんの友達だったかな?、であれば感染病棟の彼女によろしく!!!」
そういってヘリに戻り、飛び立っていった。
かっこよすぎて呆然!。
・・・
患者をICUに送り込んで引き継ぎを終え、晃子さんがいる感染病棟のナースに立ち寄ったら・・・
晃子「さっきの爆音がそうだったのかぁー」
翆「かっこよかったよーーー」
晃子「だって彼、それが生きがいだもん。なんかさあ三ヶ月前からドクター・ヘリ勤務になったんだって。今週は勤務当番だから、くるよねぇー。多分札幌市内の気象状況が悪かったとか、時間節約かなぁー」
翆「うん、2時間以内の搬送だって」
晃子「運ぶだけだよ、直すのは病院だからねぇー。彼は、緊急事態になると燃えるんだっていってた。それで奥さんに愛想をつかされて離婚されたぐらいだから。そうした変わり者でなきゃ救命救急なんかやらいなよねぇー。そうだ翆!、フライトナースというのもあるよーーーー」。
翆「やだぁーーん、聞くからに大変そうじゃん」(笑)。
翆が家に帰る頃には、長い筈の陽も落ちて、すっかり暗くなってしまった
・・・
透き通った空に星が見える小樽である。