9月30日で緊急事態宣言は解除され、10月のCOVID-19の状況を前回同様のデータと方法でみた。Oxfordのデータは休日値がないので毎日公開されている感染者数は、これにあわせた。データは3月〜10月28日迄である。
1.日本の感染状況とワクチン接種回数の関係性について
図1は、1日の感染者数推移とワクチン接種回数累積値の推移をみた2軸グラフである。第5波がこれまで以上に感染を急拡大させ、そして急速に収束しつつあることが図からわかる。特に9月21日感染者数16,092人を最後に、1万人を超えることはなくなった。
オレンジの線は、これまでのワクチン接種回数累積値である。NHKの集計によれば総人口に占める割合は、1回目接種者77.25%、2回目接種者数は71.2%である。一定の速度で接種んできた事は、本ブログ前回の回帰式予測では11月末だったから、一ヶ月早い速度で進んできた事になる。これは接種速度が落ちなかった事による。
図1. 1日単位の感染者数とワクチン接種回数の推移
出典:厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00254.html
Oxford Univ.Our World in Data、https://ourworldindata.org/covid-vaccinations
図2は、この前述の2指標の関係性をみるために相関係数を算出したものである。9月前半以降、負の相関を続けており感染収束に向けた傾向が顕著だ。
図2. 月単位の感染者数とワクチン接種回数累積値の相関係数
図2をみると、負の相関だから感染者数の増加とワクチン接種率の関係性があるが、9月以降の値は-0.50前後であり、とりわけ強い相関ではない。そうなると他の要因が関与している可能性がありそうだ。
例えば、政府・自治体や国民の防疫体制が特に向上したわけではなく一定である。それでいて都心部の人口流出は多かった。にもかかわらず感染者数の急速低減の理由は何か?、ということである。
そこで「エラー・カタストロフィの限界」(注1)説がある。ノーベル賞受賞者であるマンフレッド・エイゲンの論文によれば、ウィルスの変異過程のなかで変異の限界に達しウィルスが自滅するという説だ。それがピークアウトだが、これが収束の要因の可能性もあるが検証されたわけではない。
2.日本における社会的免疫の獲得時期について
10月28日時点でのワクチン接種回数を図3でみれば、1億6105万7159回 である。2回接種に換算すれば1/2の8,053万人となる。28日のデータでみると1回接種者1億8787万人回である。
2月からワクチン接種が開始され、以後一定のペースで接種が進められてきた。現在のペースで進めば11月17日頃に80%、90%12月1日頃、あり得ない値だが100%は来年2月頃となる。一体いつまで続くんだという世論に対して、私は近似値であるが数値的な答えはだしてきた。
この図で私が感心を持つのは、現在世界各国で行われている隔離政策が廃止される時期が、ワクチン接種者がどれぐらいの割合になってからおこなわれるかだ。隔離政策がなくなれば、これまで同様にワクチン接種を前提に入国できる。目下の最大の関心事だ。
図3.現時点での感染収束時期の予測結果
4.まとめ
第6次感染があるとすれば、その時期はワクチンの抗体価が下がる来年1〜2月頃とメディアは報じている。目下3回目のブースター接種が始められようとしている。
こうした解析をしていると、問題が発生し、それが社会問題になるとようやく国が動き出し、新たな制度をつくり、これに従って律儀に実行してゆくという日本人の特性をみているようだ。しかし今では古い問題解説型の国家や政治である。
このブログを書いている10月31日は、奇しくも衆議院選挙の投票日だった。候補者の中に、数理モデルで近未来を予測し、仮説検証型の理論で制度をつくり、衝撃に備える事を公約にした政党や支持者はいなかった。相変わらず事後処理しかできない20世紀型文科系国家が継続している。
やはり科学的な見地から近未来を予測し、モデルをつくり、パンデミックに備えるという体制が必要である。予めわかっていたにも関わらず起きた医療崩壊は、文科系施策の貧しさの反映だろう。
注1)Manfred Eigen, "Selforganization of Matter and the Evolution of Biological Macromolecules” Die Naturwissenschaften, Vol.58, 1971
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