山を除けば街から雪が消えている。
札幌の歩く下半身のベーヤンが、アチキを築港のホテルで遅い昼飯に誘い出し天気も良いから歩こうというわけだ。
歩きながらの会話なんて、ベーヤンはスティーブジョブスの気分をまねたのだろう。
「ゆうべも彼女と情事かい😀」
ベーヤン「うん、和恵とね」
「ベーヤンにしては、長く続くじゃん」
ベーヤン「いろんな女を抱いて、個性の片鱗を感じつつサヨナラの生活はもういいさ!」
「和恵さんで満足しているんだ」
ベーヤン「なんか出会ったときからの気分が、全然他の女達とは違うんだよ」
「そんなのがあるのかなぁー」
ベーヤン「おおありさぁー」
「ほう・・」
ベーヤン「一丁前のことをいうから遊び人だろうと思って、つきあいはじめたわけ。そしたら、なにかと将来どうするのかとか、死ぬまで愛し続けられる自信があるのかとか、もう嫌われるほどうるさいわけ。それでわかった、死ぬまで愛し続けるからさ、しようよって迫ったわけ」
「それで・・」
ベーヤン「そしたら、『私は男の経験がありません。だからしつこく将来の約束をさせたんです。約束した以上は、私も貴方を死ぬまで愛し続けます』・・・、だって」
「なんか大げさな話じゃん」
ベーヤン「それでOKして処女突入だよ!。そんなわけで、この女が身の収めどころだと思った。だから遊び人はお終いだよ」
「ふぅーーん」
ベーヤン「いいよ!、処女の女って。なんつうか次第に私の軍門に従ってくるといったらよいかなぁー」
「えらく、古くさいじゃん」
ベーヤン「まあ処女が女になってくるプロセスが手に取るようにわかるんだよ。そんな経験したのは、初めてだったし俺最高だとおもった」
「ちゅうことは、今の奥さんは処女じゃなかったわけだ」
ベーヤン「そうだよ、既に何人も男と遊んで、まあ俺が一番金がありそうだから、これでいいやって感じで所帯をもった。最初から遊びすぎた女の空気たっぷりさ」
「まあ日本の女の子は、さっさと処女なんか捨てて、バッチリ女になってとっかえひっかえで男捜しをするからなぁー、それが今時普通だよ」
ベーヤン「和恵はそこが違うんだよ!。つまり男と女が出会って、処女が次第に女になってゆくプロセスというのは感動もんだよ。そんな感動のプロセスを好奇心だけでさっさと通過するというのは、ちともったいない」
「翠がそれだよな。同時に子供もつくって一気に結論だもんな」
ベーヤン「処女が女になってゆくプロセスは、女が男を了解してゆくプロセスなんだよ。そうやって男とは何かを理解してゆくわけさ。そういうプロセスを経て成長というか形成されてきた時の女って最高だよ!。なんか俺の体中に和恵の意志が入り込んできているような感じかなぁー」
「大方は、そんなプロセスを省略しちゃうからね。というかしなで仮面夫婦なんだ・・・」
ベーヤン「だって和恵は、『奥さんとわかれちゃいな。会社なんか奥さんにあげて私が映像技師の仕事で幸せにしますから』だって。ああっ、それもありかと思った。だからさあ女って処女に限るよ!」
「それを言ったら日本の女は、みんな失格じゃん😆」
ベーヤン「そうだよ。女にとって男は一人で十分なんだよ。それを男の十人切りをして、処女から女になるプロセスで男の了解の仕方を学ぶ機会をパスしているんだから・・・。そうなったら後は仮面夫婦だろうなぁーー・・・」
もう入船通りの交差点まで歩いてきた。このまま商店街を抜けてゆこう。
ベーヤンの話と小春が言ってた事がオーバーラップしている。
男と女の出会いなんか一度で良いのだろう。
ベーヤン「Philippineの建築家の榊原が仕事で札幌に来ているから、あいつを呼び出してオーセントホテルで飲もうよ」
二人の足がホテルに向かっている。
アチキの手元には、今朝着彩した雪の草原のスケッチがあるんだ。なんで持っているかっていうと絵具が足りなかったので、スケッチに合わせて色を選びたかったわけだ。
この調子じゃ夜まで解放されないな。
まあ、飲むか・・・。