「榊原さんの最近の関心事はなんですか?」
榊原「よくぞ聞いてくれました。これですよ!」
そういってスマホの画像を見せてくれた。
ベーヤン「なにこれ、下が定食屋で上が住まい。建築家にしてはつまんないものに関心を持つよなぁー」
榊原「これ、私達のフィリピンの家なんですよ」
「えっ、自邸」
榊原「自邸なんてそんな格好が良いものではないですよ。ジーナが今度はレストランを始めたいというから、えっ、あの場所でと私は思ったけど、まさに定食屋ですよ」
「レストランも翻訳すれば定食屋でしょう」
榊原「うん、それでジーナは定食屋の女将さんですよ」
ジーナ「なんですか・・・、お・か・み・さ・ん?」
べーやん「レストランで一番偉い人という意味です」
ジーナ「Oo、shige!」
「またなんで、エアロビクスの先生が、定食屋なんですか?」
榊原「将来安定した職業が欲しいというので。定食屋だって安定するわじゃないけど、近所の人のたまり場にもなるでしょう、というわけです」
ベーヤン「それで設計しちゃったわけだ」
榊原「その前に土地を買わされました」
ベーヤン「土地はなんぼすんの?」
榊原「沿道沿いだと㎡単価が5,500pisoぐらい。それで100㎡だから55万piso、日本円で140万ぐらいかな。それに固定資産税、付加価値税、印紙税がついて結局643,000piso。日本円で150万ぐらいかな。マニラだったらもっと高いけど、ここは郊外の田舎だからこんなもんです」
「建築工事費は?」
榊原「そこはピンキリなのよ。100万ぐらいでできるという説もあるし、いや1,000万はかかるという説もあるから、私の監理次第ですね。500万ぐらいであがればいいかなと思っている」
ベーヤン「老後を考えたら必要なんだ」
榊原「😆、私は既に老後ですよ。ジーナは後に残されるから、まあ自活の道をつくっておかないとね」
ジーナ「ダーリン、早くお家ねぇー!」
榊原「わかった、わかった!」
そんなたわいない話をしていると、夜だ。山の雪原が周りの灯りで白く輝いている。
すでに街の中からは雪がほとんど消え去ったようだ。