夕方の某駅、乗客の大半はフリーパスのお年寄りである。中には2~3人のグループでお喋りしながら乗ってくる人もいる。その中でも、特に耳障りな… いや、失礼! 甲高い美声が、私の耳から脳へ入り込んできた。
その女性は、一人の男性と話をしながら乗ってきて「え~っと… 荷物置き場は… ここ? これしか(スペースが)ないの!? これくらいの(年齢を重ねた)オバサンは、たくさんの荷物を持っているんだから、もっと荷物置き場を増やしてもらわないと困るわよぉ…」と言った。
私は、それを聞き流しながら「一般路線で荷物置き場があるバスに当たっただけでもラッキーなんだけど… 連れの男性は何て言うのかなぁ~」と思っていたら、彼女が「ねぇ、運転士さん!」と言ったのである。私は「えっ!? 私に話し掛けとったのぉ~?」と驚いて言葉も出なかった。すると彼女は「まぁ、アナタに言っても仕方ないわよねぇ…」と一人で話を終わらせた。
発車直前、彼女が「運転士さん、暖房が入ってる?」と言った。暖かくもないが寒くもない… そんな微妙な車内温度だったので、私は彼女の真意が分からないまま「いいえ、入っていませんが…」と答えた。すると彼女が「私、暖房が入ると気持ち悪くなるのよねぇ…」と言ったのである。暖房のオンオフで迷っていた私にとっては、ちょうど良い“助言(言い訳?)”になり、暖房を入れずに走ることにした。
その後、彼女はず~っと男性と話をしていたが、いよいよ「降りる」と言っていたバス停に到着して、何人かの乗客が降りた後… 彼女が「ねぇ、ここでいいんだっけ!? この前に○○閣ってある?」と私に尋ねたようだった。私は「ここにあるのは結婚の○○閣じゃなくて、葬儀の○○会館なんだけど…」と思いながら、「え~っと… ありますよ、すぐそこに斎場が…」と答えた。すると彼女は「あ、ホント!? じゃあ、降りるわ」と言いながら荷物を持って降りた。そして「ここで良かったわ。ありがとぉ~! さようならぁ~!」と手を振っていた…
結局、バスに乗る前から降りた後まで、喋り続けていたオバサン… 再会の日は来るのだろうか… ん? まさかの○○閣で!? おいおい、そりゃないわ… ないよ… ないはず…(これこれ!)