バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

お婆さんの忘れ物

2011年03月10日 21時11分29秒 | バス運転士

あるバス停で2~3名の乗客を降ろし、その先の赤信号で止まった。しばらくすると、前扉の外へ人影が現れて何か叫び始めた。それは、今のバス停で降りたばかりのお婆さんだった。

私が扉を開けると、お婆さんは「ごめんね、忘れ物しちゃって… 薬なんだけど…」と言った。私はすぐにハザードランプを点滅させ、駐車ブレーキを掛け「座席はどのあたり…」と尋ねながら席を立った。

お婆さんが「後ろの方…」と言ったので、私は車内通路を後方へ歩き出した。すると、中扉付近に座っていたお爺さんが「これだよ、これ」と言いながら、薬が入っていると思われる紙袋を差し出した。バスを降りる時にでも、私に手渡すつもりだったのだろうか…

薬を受け取ったお婆さんは「ありがとう。すいません。どうしてもこの薬を飲まなきゃいかんもんでねぇ~。これを2時までに飲まないと…」と話し始めた。信号が青に変わっても、お婆さんの話は終わらず… 私はゆっくりと聞いてあげたい気持ちはあったが、さすがにそうもいかず… 「そうですかぁ… お気をつけて!」と言いながら扉を閉めて発車した。

それでも、お婆さんは何度も頭を下げていた… あぁ~、すべてのバス停で5分くらいの停車時間が設定されていたら、もう少しゆっくり話せるんだけど… そんなことしたら、運行時間が今の5~6倍になるから無理かぁ~! ハハハ…