バス運転士のち仕分け作業員のち病院の黒子 by松井昌司

2001年に自分でも予想外だったバス運転士になり、2019年に某物流拠点の仕分け作業員に転職、2023年に病院の黒子に…

早朝の爺さん、夕方の婆さん

2014年05月02日 20時59分47秒 | バス運転士

今日の早朝… まだ朝の7時前だから? ゴールデンウイーク中の平日ということで、休みの人もいるから? なぜか分からないけれど、乗客も交通量もやや少なめ… 途中で何度も時間調整停車をしながら某駅へ向かっていた。

そして、あるバス停で30~40秒の時間調整をしていたら、20~30m後方の信号が変わり、横断歩道を渡っているお爺さんの姿が右ミラーに映ったので、私は「ひょっとして…」と思いながら、お爺さんを凝視した。

が、ちょっと距離があったし… ミラー越しということもあってか、お爺さんの顔がハッキリと見えず… こちらを見ているような見ていないような… ただ、歩き続けていたので「乗客ではなさそうだ」と思った。

しかぁ~し! 発車時刻まで10秒となった時、横断歩道を渡り切ったお爺さんが、急に走り出したのである。多分、最初は「バスが来とるけど、すぐに発車しちゃうよなぁ…」と思っていたけれど、「まだ発車しんなぁ…」「ひょっとして乗れるかも…」「おっ! 乗れるがやぁ~」と気持ちが変わったに違いない。

お爺さんは、フラつきながらバスに乗り込むと「ハァ… すいませんね… すぐそこまでだけど…」と言いながらフリーパスを見せたので、私は「はい、どうぞ」と答えながら「なるほど… 歩いて行っても良かったけど、バスに乗れるなら乗って行こうと思ったのか!」と納得した。

ところが、バスが発車しても降車ボタンは押されず… 私が「すぐそこって、次だよなぁ~? どうしようかなぁ…」と思っていたら、ちょうどバス停で待っている人がいたので、私は迷うことなくバスを止めることができた。

結局、お爺さんはそこでは降りず、その次のバス停で降りて行ったのだが… フリーパスで乗る人たちにとっては“1区間・2区間、当たり前ぇ~!”なので、2区間も乗るのに「すいません」と言ったお爺さんがとても良い人に思えて、私は癒されたのだった…

今日の夕方… 午後5時頃のA駅発B駅経由某所行きで、発車時刻になったのでエンジンを掛けて扉を閉めようとしたら、右から一人のお婆さんが急ぎ足っぽい感じで歩いてきた。私は「ま、ここは慌てても仕方がないから…」と思って、確認のために「某所行きです」と言った。

お婆さんはゆっくりと乗り込んで、買い物バッグの中からゴソゴソとフリーパスを取り出し、私に見せながら「すぐそこ… 一つ目で降りるけど…」と言ったので、私は「へぇ~ わざわざ“すぐそこ”と言ったのは本日2人目だ。珍しいこともあるもんだ」と思いながら「ありがとうございます」と言った。

バスが発車してすぐに降車ブザーが鳴り、私は「今回はハッキリと“一つ目”と言っていたから、本当に1区間で降りるんだぁ~」と思いながら「次、止まります」と言った。そして、2人の乗客が待っていた一つ目のバス停で止まって、両扉を開けたのだが… お婆さんが車内通路を前の方へ歩いてきたので、私は「えっ!? 完全弊社のバスと勘違いしてるのかな? 乗ってくる人とぶつかっちゃうけど…」と思った。

すると、お婆さんが私に握り拳を差し出したので、私が「な、な、何事か!?」と驚いていると、その手には“スッキリのど飴3個”が握られていたのだった… 予想外の展開に、私はちょっとオロオロしながら「あ、あ、ありがとうございます」と言いながら受け取り、歩道を歩いて行くお婆さんを見送った… 今日は、お年寄りに2度も癒された珍しい日だった。