グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

レッドデータの調査が行われました。

2010年11月03日 | 海の生物
先月の18~21日にかけて、
東京都のレッドデータブックの再登録に伴う調査が大島で行われました。
私が協力させたもらったのは、「汽水・淡水のカニ類」です。

私と一緒にヤドカリの調査を大島でして頂いた、甲殻類の専門家の方がわざわざ来島され調査を行いました。

対象となる「汽水・淡水」の甲殻類には当然エビもいるのですが
それらは数が多い物が多く、今回はカニに絞っての調査になりました。
「汽水・淡水」と言っても川の無い大島にとっては、簡単には行きません。
幸い、大島は湧水が出ている所が多くあります。
海沿いだったり、山だったりと確かに数は少ないのですが結構あるのです。
今回、調査を行った場所は
①ケイカイ ②野田浜 ③和泉浜 ④筆島海岸 ⑤砂の浜 ⑥フノウの滝  です。

まず、最初はケイカイに行ってみました。
ここは、非常に多くの湧水が湧いています。
工事が行われている横を失礼して調査開始です。

工事が行われているので、環境が壊れていないか心配していたのですが
湧水も遮断されていないし、土砂も流れ込んでいませんでした
波うち際に石を捲ると 「アカイソガニ」が出てきます。



このカニが見られるというのが海岸としては、かなり良好な様です。
そして、水の中では凄い結果が出ました。
まずは、このカニ↓ 


タイワンヒライソモドキというカニです。
実はこのカニ、三重県と福島県で準絶滅危惧種に指定されています。
奈良県と和歌山県を流れる「紀の川」の工事では、
一部汽水域が淡水域に変化してしまうため、代替生息地を確保して
移植を試みた事例がある程の価値に高いカニです。

そして、次にはもっと驚くべきカニの姿が!!
そいつはこれ!!↓


これは、ハチジョウヒライソモドキというカニ
前種との違いは、眼から下の甲羅の縁に目立った切れ込みがない事と
歩脚の先端に毛が生えている事です。

1955年の八丈島で発見され、八丈島の固有種と言われていました。
その後、奄美大島や沖縄でも発見されているようですが
今回の発見で北限の更新です。

確実にこの2種はレッドデータへの登録は間違えないでしょう。
まだ、同定結果待ちですが多分「ケフサヒライソモドキ」では無いかと思われるカニも発見されました。
これも、希少種のカニです。
これが、「ケフサ」なら間違え無しに登録です。
ケイカイだけで少なくとも3種が、レッドデータになりそうです。

4日間の調査の間に、これらのカニで出会えたのはケイカイだけです。
今回の工事は、今の所この環境に影響を与えていないので安心しましたが
気になるのは、今後です。
今のケイカイの様子はこんな感じ


新たに作られたスロープの下に土が露出しています。
雨や台風の度に、これが土砂となり海に流れ込んだら確実に
上記した3種のカニは死んでしまうでしょう。

そんな大袈裟な~と思うでしょうか、これらのカニは汽水でしか生息出来ないのです
海に流れ込む僅かな真水が作り出す、本当に狭い空間にしか棲めないカニなのです。
つまり、その環境に何かインパクトが与えられたら、貴重な生き物が暮していけなくなります。
この土の上に、元々あった石を積んでくれれば問題無くなるかもしれませんね。

先にも書きましたが、今の所海には影響は無いようです。
でも、これだけ大きく工事をして何処にも影響がないはずはありません。
今回のカニを中心に見ると、このスロープを作るせいで、
岸側にあった手頃な石がみんな無くなってしまいました。
写真の土の部分には、大小様々な石があったのです。
その石の下には、多くのカクベンケイガニというカニが棲んでいました。


大島では、これまた少ない陸生にカニです。
大島では、この他にアカテガニとベンケイガニがいます。
勿論、このカニも今回の様に環境が壊れれば、死ぬか何処かに移動しなけれないけません。

このカニ、他の陸生のカニに比べれば数は多い方です。
しかし、まだ居る、まだ居ると安心して、人間はどれだけの生き物を絶滅させていったのでしょう?
気をつけなければいけないと思います。

中には、土壁に穴を掘って暮す種類もいます。
ケイカイにもこの様なカニ穴が多くあります。
もし、ここがコンクリートに壁になったら確実に全滅です。

公共事業と自然保護の両立は非常に難しい問題です。
しかし、今時代は生物多様性年を迎え、自然を保護をしながらの開発という物が注目されています。
特に、今年ジオパークへ認定された伊豆大島では、より一層気をつけなければいけないでしょう。
火山の噴火に寄って作り出された海岸線の景色は、「ジオ」そのものだからです。

自然の配慮した、公共事業を勧める、見本となる島に大島がなってくれる事を願います。
それには、やはり自治体で貴重種の調査を行い、リストを作るしかないでしょう。
何処に、どれ位の数、どんな生き物がいるのか
別に全種やる必要はありません。
貴重とされている生物に絞ってやるのも手ではないでしょうか?

そんな大島を次の世代に繋げて行ければ嬉しいですね。
孫の代になったら島の周りが全部コンクリートだったら悲しいですからね~(笑)

あれ?ちょっと長くなってしまいました・・・
他の場所で行った調査に関しては、機会があったら書く事にします。

(有馬)
コメント
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