先日来から、昨年開催された「東京オリンピック2020大会」に関する談合事件で、広告代理店の立ち入り調査が続いている。
日経新聞:五輪談合事件の捜索8社に 広告業界全体に拡大 (ニュース動画)
ことの始まりは、電通と招致委員会との癒着だったはずだが、現在は広告業界全体を巻き込むような事件へと、発展している。
このようなニュースを聞いても、個人的には特段驚くことは無い。
というのも「スポーツと広告代理店」という関係は、随分古くからあるからだ。
そもそも国際的なスポーツイベントが、広告代理店の力を借りるようになったのは、1984年のロサンゼルスオリンピックの頃からだろう。
この大会は、それまでの「アマチュアスポーツの総合国際大会=オリンピック」から、「商業オリンピック」へと変わった大会だったからだ。
現在カタールで開催されているFIFAW杯カタール大会だが、以前、広報活動から大会運営まで中心的に行ってきたのがISL社という会社だった。
記憶されている方もいらっしゃると思うのだが、このISL社が1998年のFIFA W杯フランス大会開幕前に、破綻をしてしまう。
結果として、フランス大会の観戦ツアーに参加はしたが、観戦チケットが手に入らず、スタジアム周辺のパブリックビューイング会場で、試合を観戦した、というサッカーファンが続出したのだった。
このISL社に出資していたのが、ホルスト・ダスラー氏と日本の電通だった。
ホルスト・ダスラー氏というのは、ドイツのスポーツメーカー・アディダスの2代目社長だった人物であり、今でもFIFAやUEFAなど、アディダスが関係するサッカーイベントの中心的スポンサーの基礎をつくった人物でもある。
NEWS PICKS:電通とダスラーが出資したISLの功罪
電通は、倒産前のしばらく前に撤退をしたため、電通そのものは大きな損失を計上することは無かった。
このように、国際的な大規模スポーツイベントでは、広告代理店の力はとても大きい。
「大きい」というよりも、今ではスポーツイベントを開催する為の重要なパートナーとなっている、と言っても過言ではないと思う。
そしてスポーツイベントそのものが、巨大化し商業要素が強くなればなるほど、広告代理店の果たす役割は幅広くなり、広告代理店にもたらされる利益も巨額なモノになる。
そのようなスポーツイベントとスポンサー、そして広告代理店という関係を知れば知るだけ、今回の事件は起きて当然という気がしている。
それだけスポンサー企業にとって、自社を世界的にアピールする場としてのスポーツイベント効果は絶大であり、その為の仕切りをする広告代理店の力は強い、ということだからだ。
今回の「談合」は、法律的な意味の問題ではあるが、むしろ「商業化したスポーツビジネス」という問題を提議しているような気がしている。