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「人的資本の情報開示」と決算

2023-06-28 21:53:09 | アラカルト

先日、ラジオの情報番組を聞いていたら3月期決算から「人的資本の情報開示」が義務化された、という話題を取り上げていた。
3月期決算から義務化された、ということはこの5月~6月にかけての株主総会で提出されている決算報告書に、記載されるという内容ということになる。

そして「人的資本の情報開示」の内容というと、これまで人件費として計上されていた費用とは別に、従業員として働く人達一人ひとりを人財として考え、企業の資産とする、という考えだ。
問題となるのは、その「人財」としての企業の考え方であり、その評価・判断の基準ということになるはずだ。
分かりやすいのは「スキルアップシート」のようなものだろう。
企業が考える「職能スキル」により、より高い職能スキルを持っている人達=人財が多い、という考え方だ。
しかし、この「人的資本の情報開示」は、それほど簡単なことではないようだ。
Diamond on-line:3月期決算から義務化「人的資本の情報開示」のメリットと課題 

分かりやすく言えば、「職能スキル」の男女比の内訳を求められている、ということも含まれているということになる。
何故男女比が求められるのか?と言えば、「ジェンダーギャップの問題解消に取り組んでいる」、ということを示す必要があるためだ。
男性ばかりが多いということになれば、女性の能力活用をしていない、あるいは職能スキルを向上させる機会を与えていない、ということになるからだ。
他にも、男性の育児休暇取得率や産業医などによる労働環境判定なども、加わっているはずだ。
以前のような、企業の業績結果だけで「良い企業」か否かと判断される時代ではなくなってきている、ということだろう。

もう一つこのような「人的資本の情報開示」は、より企業にあった人財を集める事が可能になるかもしれない。
これまで一般的に言われていた「ホワイト企業」というよりも、「働く人一人ひとりが、充実感を持って仕事をしている」ということが、企業価値を上げる事に繋がるということだ。
企業価値を上げるということは、投資家にとっても一つの判断目安となる、ということでもある。
だからこそ、決算報告書に記載するコトになったはずだ。

もう一つは、求める人財を企業内でわかりやすくさせる、というメリットもあるかもしれない。
企業と働く人のミスマッチを減らし、労働力の流動化を図りやすくする、ということだ。
そう考えると、働く側も自分自身で職能スキルを向上させるだけではなく、育児や老親介護などにも積極的に取り組まなくてはならない、ということでもある。
もちろん、専門家のサポートも活用しながら、ということにはなるのだが、「人的資本」という言葉には、企業側の努力だけではないモノも多く含まれている、と知る必要があるかもしれない。