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特に湖北地方では比叡山天台宗系の寺院が数多くあったようであり、山頂近くに寺院跡を残し、山麓に観音さまや不動明王などを祀る寺院や祠が多いように思います。
下草野地方にある「大吉寺」は865年の草創と伝わる寺院で、かつては天吉寺山(標高918m)の中腹(標高750m)にあったとされますが、現在は本堂跡や門跡・塔跡・鐘楼跡などが残るのみという。
天吉寺山の300m地点にある現在の「大吉寺」は、もとの大吉寺の子院だったとされ、60年に一度開扉される本尊「聖観音像」を祀るとされます。
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野瀬集落から大吉寺へ向かう道には石標が建てられ、“是より八丁(872m)”と彫られている。
草野川へ流れ込む支流に沿って道を進むが、道は多賀の林道のような雰囲気を感じます。
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「大吉寺」への道や寺院の周辺にはスギが林立しており、環境省の「巨樹・巨木林データベース」によると、幹周が335~860m・樹高が26~46mあるスギが16本あるという。
以前にも巨樹を探しに「大吉寺」へ参拝したことがありましたが、幹周5m以上のスギだけでも7本ある場所ですので、同定するのが大変だった記憶があります。
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苔むした石段のある参拝道まで来ると、“是より二丁”の石標がある。
石段を登れば「寂寥山 大吉寺」と鎮守社の「上之森神社」へと続いている。
2年前に参拝した時はアカショウビンの囀りがよく聞こえていましたが、今回はカワガラスの姿を見かけたのみ。
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寺院の山門の前には巨石と共に句碑が置かれており、この先には大吉寺を開創した安然上人の御堂があるそうです。
巨石の左方向には天吉寺山(大吉寺跡)への道があるが、案内者がいないと入れない山だといい、クマが出そうなひとけのない寂寥な山なので怖ろしくて立ち入れない。
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現在の「大吉寺」には建物としては大門・本堂・庫裡が残り、境内は江戸・元禄期に作庭された枯山水の庭園があります。
本堂には秘仏本尊の他にも御前立の聖観音立像、源頼朝坐像、 不動明王立像、地蔵菩薩、阿弥陀如来立像、役行者像、元三大師像が祀られているといい、いつか拝観してみたい寺院のひとつです。
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大吉寺庭園から道の向こうに見えるスギは、2本のスギが合体したように見えるスギですが、幹はかなりの太さがありそうです。
1本の巨大スギの凄さというよりも、歩く先々に巨樹スギが見られる寺域だと思います。
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苔の緑でカーペットのようになっている庭園には三尊石組があり、山側には方丈池があります。
山麓にあり訪れる人もいない寺院ですが、山の自然に融け込むような静けさに包まれつつも張り詰めた空気感を感じる寺院です。
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ところで、大吉寺には“「平治の乱(1159年)」に敗れた源義朝(頼朝の父)が東国に逃れようとした時に、はぐれた源頼朝が大吉寺に匿われた。”との伝承が残ります。
頼朝は、鎌倉幕府になってから大吉寺を支援し、堂宇を再建や寺領を与えたと伝わり、山頂近くの大吉寺跡には頼朝供養の石造宝塔(1251年)が残るという。
大吉寺は室町時代にも幕府の庇護を受けたようですが、1525年の六角定頼の兵火、1572年に織田信長の攻撃により47坊が荒廃し、廃寺への道を歩んだそうです。
今回の大吉寺への参拝の目的は、「大吉寺史跡保存会」によって3年前に整備された「貞観の瀧(貞觀の瀧」を訪ねることです。
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瀧は高さ約5mあるといい、地元の有志によって整備された滝とはいえ、この地の豊な自然環境にとけ込み、大岩から真っすぐに落下する見事な滝です。
滝の横には沢が流れ、近づくにつれヒンヤリとした冷たい空気に変わって、滝の前の道は水飛沫で濡れています。
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さらに近づいてみると威圧されるような大岩と写真で見るより実際には水量のある滝に見惚れてしまいます。
滝に落ちた水が沢に落下していることもあり、周辺は水音しかしないような場所です。
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滝を正面から見ると大岩の下部がやや内側に引っ込んでいるため、滝行をしながら座禅するのに最適な形になっています。
実際に滝行をされる方がいるのかどうかは不明ですけどね。
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大吉寺に「貞観の瀧」の滝が整備されましたが、庫裡側から「釈神の滝」や「立岩」「平岩」と呼ばれる巨石があると案内板にありましたので、林道を登ってみることにします。
車1台しか通れない急坂を進むものの、林道の上には異常なまでに落石が多い。
舗装されていない空き地までたどり着いたが、木材が積まれていて進む道が分からず「釈神の滝」へはたどり着けず。
林道で唯一琵琶湖が見える場所があったので写真1枚撮って落石だらけの林道を下っていきました。
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