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醒井集落の近くには、山裾の裂けめに食い込むかのような立地の場所に枝折集落があり、ここにも湧き水があるといいます。
枝折集落の背後にある山々は石灰岩でできているとされ、雨水の浸食作用を受けた空洞に多量の地下水が流れ込み、その一部が湧き出しているのだといいます。
枝折川の源流となる場所の水量の多さには驚くばかりで、集落内を歩くと絶えずどこからか水音が聞こえてきて、静かな集落の中でよく響いている。
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天神水(天神宮湧水池)は左下の部分から湧き出して池のように水面を満たしており、水源からかなり勢いよく水が湧き出ているのが分かる。
この水は、集落の人にとっては生活用水や農業用水として生活を支えてきた水であり、清水は枯れることなく湧いているという。
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水は山からの湧き水で冷たい清流でハリヨが生息しているといい、夏には冷蔵庫代わりとしても重宝されたといいます。
天神水は山の直下にあり、観光地となっている醒井の湧き水とは違い訪れる人はいないが、「NHK鶴瓶の家族に乾杯」で国村準さんと笑福亭鶴瓶さんが訪問されてプチ有名になったのだとか。
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池の中に建つ灯籠には「灌田水」と刻まれているといい、“田に水を引く”ことへの感謝の気持が表わされているようです。
天神池の中では数匹の錦鯉が泳ぎ、三色のものや真っ白に紅の斑点、白に墨模様など模様も多様な錦鯉がいます。
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天神水の枝折山側には岩の上に天神さんが祀られており、この湧き水の名前の由来となっているようです。
岩の下には絵馬掛けがあり、何枚かの絵馬が掛けられていたが、おそらくは地元の子供たちが祈願したものなのでしょう。
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天神さんの祠の下にはゴツゴツとした巨石があり、祠の上にも岩肌が剥き出しになっているため、山や巨石への信仰が感じられる祠と言えます。
岩のすぐ前には清流が勢いよく流れ、山側の巨石の間に祠が祀られていることから、訪れた側も神聖な場所に来ていると実感します。
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豊富な水量の湧き水はそのまま集落内を流れていくが、この水量の多さは冬の大雪が影響しているのかもしれません。
住居前に川から水を引いている家ではゴボゴボと音を立てて水が噴いており、夜寝る際に音が気にならないかと心配になるくらい。
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ここで同じ集落内にある林蔵坊へと向かいますが、集落内の道は細く寺院には車を停める場所がなかったため、集落の入口に車を停めて集落内を歩く。
集落の中を歩いていて目に飛び込んできたのは「枝折八幡神社」の巨樹スギでした。
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このスギは幹周が5.5mあり、樹高は28mとされる立派な巨樹で、地上10m近くまでは枝が全て切られているため巨大さは感じられないが、根の部分から数mの幹の太さには圧倒される。
八幡神社は正中年中(1324~1326年)、京極氏の旗下で土肥六郎兵衛尉正光が足利尊氏の命により、鎌倉八幡宮より分霊を枝折迎山に勧請したものといいます。
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枝折の集落の最奥、枝折山の山麓には「林蔵坊」という寺院があり、参拝に訪れます。
林蔵坊は真言宗長谷寺派の総持寺(長浜市宮司町)の末寺にあたるといい、室町期の不動明王立像を祀る寺院とされます。
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不動明王立像には脇侍である制多迦童子と矜羯羅童子を従えた檜の一木造りの像高40cmの仏像で、米原市の市指定文化財に指定されています。
御堂は開かれて灯りが灯されていたので不動明王の姿を拝観することが出来ました。シルエットですが火焔光背の様子は分かると思います。
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山に回り込んだ場所には五輪塔や石仏がまとめて祀られています。
室町期か戦国期か、その後の時代に造られたのかは分かりませんが、一旦バラバラになったものを集めて祀られているのでしょう。
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後方には枝折山(標高205m)が控えており、かつてはハイキング道が整備されていたようですが、今は荒れてしまっている。
途中に耳が折れたウサギの看板があり、ウサギが道しるべの役を果たしていたのかと思います。
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上には何もなさそうに思いつつ少し登ってみたものの、前日の雨で滑りやすくなっており、道もはっきりしないので途中で折り返して戻ってきました。
寺院の境内は静寂に包まれていて人の姿はなく、花期を終えた早春の花たちが丁寧に育てられています。
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