角田光代「私たちには物語がある」2010年5月、小学館発行を読んだ。
角田さんが読んで気に入った本の読書感想文を集めたものだ。まず、10人の作家の作品について魅力を語る。次に、2003年から2006年に読んだ40冊ほど、2007年から2009年の50冊について語る。
あんまりおもしろい本に出合ってしまうと、読みながら私は考える。もしこの本が世界に存在しなかったら、いったいどうしていただろう。・・・私の見る世界には一色足りないまんまだろう。だからこの本があってよかった。
あとがきで角田さんは述べる。
作家デビューして20年の角田さんは、作家の中でも感想文を書く方だという。新人賞をもらった後、編集者に言われた本をまったく読んでいなくて、「そんなんで作家になれるのか」と脅された。そして、本を読んで何か書く仕事が来たら、絶対に断らないと決意した。ただ一つ誤算があったのは、書評依頼があるのは新刊本だけであるということなのだ。
今この本を読み返していたら、
と書いている。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
いかにも本好きな角田さんらしく、本に対する愛情でみちみちている。しかし、読んだ本の良いところしか書いていないので、どの本を選ぶかといった比較には役立たない。
しかし、本の選定自体も、女性だからだろうか、私の好みとは若干ずれている。私は、乱読で広く浅くまんべんなく本を読んでいるつもりだったが、やはりかなり偏っていたことがわかった。
もともと、気が向いたときに図書館の新刊本を探したり、目についた新聞の書評を見たり、ふと思いついた作家の本を探したりする。本の探し方自体がシステマティックでないので、その段階から偏りがあるのだろう。それで問題ないとも思うが、私が大きな影響を受けるはずの本が、私の知らないまま世界のどこかに眠っていると思うと、実際そうであろうが、落ち着かない。現実には、まあ、本とも一期一会でいくしかないのだが。
角田光代の略歴と既読本リスト