東野圭吾作家生活35周年実行委員会編『東野圭吾公式ガイド 作家生活35周年Ver.』(2020年7月15日講談社発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
著作100冊目前、全世界一億部を突破!
日本で、世界でその人気を誇る東野圭吾。ミステリーもファンタジーも、シリアスもコメディも、すべてをベストセラーにしてきた大人気作家の35年間は挑戦の連続だった。
25周年版公式ガイドに新作の自作解説を加え、貴重なロングインタビューを収録した決定版!
目次
- 東野圭吾年表(4頁)
- 全著作目録 本人の自作解説コメント付き(96タイトル、約200頁)
- 加賀シリーズ特集 加賀恭一郎とは何者なのか。(18頁)
- ガリレオシリーズ特集 倶楽部ガリレオへようこそ(16頁)
- マスカレードシリーズ特集 プロフェッショナルが集う場所、マスカレードホテル(18頁)
- ロングインタビュー 東野圭吾 最強小説家の秘密(40頁)
- 読者1万人が選んだ! 東野作品人気ランキング発表(28頁)
- 全部読んだか? 東野圭吾 さくいん兼チェックリスト(4頁)
- 特別付録 受賞スピーチ2件(3頁)
- 東野圭吾プロフィール(1頁)
「本人の自作解説コメント付きの全著作目録」
著者自身が各作品を作り出した時の背景、作品に込めた想いを率直に語っている。年代順なので著者の成長や小説に対する考え方の推移がわかる。
「ロングインタビュー」
半分は小説を書くという仕事の話だが、残り半分は私財を投じて大会を創設したスノーボードについて。
小説に優劣をつけられないので最高の作家は決められないが、もっとも売れた作家が最強で、それは東野圭吾だという。
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の世界で1200万部(2019年4月)は、村上春樹の『ノルウェイの森』とほぼ並ぶ。ちなみに、インフィクションだが黒柳徹子の『窓際のトットちゃん』は世界累計2100万部。
「東野作品人気ランキング」
第1位『容疑者Xの献身』、第2位『白夜行』、第3位『流星の絆』、第4位『新参者』、第5位『マスカレード・ホテル』、第6位『手紙』、第7位『秘密』、第8位『赤い指』、第9位『時生(トキオ)』、第10位『真夏の方程式』(すべてが私の既読本だった)
本書は2012年に刊行された『東野圭吾公式ガイド 読者1万人がえらんだ 東野作品人気ランキング発表』の情報を更新、新たな内容を加え、再編集したもの。
私の評価としては、★★★★★(五つ星:お勧め)(最大は五つ星)
全96タイトル中、66%を読んでいる東野ファンとしては、良くまとめてくれましたと言いたい。私のリストと比べても遜色ないできばえだ。ただ、初版から途中でタイトルが変わっている場合に初期のタイトル名が書いてない欠陥はあるが。
なにより素晴らしいのは、著者自身が各作品を作り出した時の狙い、事情を率直に話している部分だ。著作を生み出す前に、実にいろいろ考えて、狙って、書いているのが分かる。全著作について語っているので、あの作品ではこうだったので、今度はこうと、作品の流れ、著者の思いの変遷、成長が分かるのが嬉しい。
ロングインタビューでも、売れない時代を経てピットメーカーになったこその東野節が語られる。
もう一つは自分が納得できない作品は絶対に出さないということ。……これは僕が30代、書いても、書いてもなかなか本が売れなかったときから心がけてきたことなんですよ。本というのは、同じレベルだとどんどん売れ行きが落ちていくんですよ。
確かに東野作品は読んでいて嫌になるような失敗作はない。そして、売れているのにいろいろ新しいことにチャレンジしている。常勝、ヒットの秘密は、売れない時にじっくりどうしたらよいか考えたことにあったのだ。
また、東野さんは、女性を描くのは苦手だとか、ラブストーリーは書けないとか自分を十分知り、自覚した上で書いている。
しかし、それでも絶対売れると思った本が思ったほど売れないことが多いと嘆いている。
2019年12月の「野間出版文化賞」での東野さんの受賞スピーチが気に入った。
「百歳になったときに80歳だった自分を思い出して『ああ、80歳、若かったな、あのときやれることいっぱいあったな』ときっと思います」「明日からの未来を含めた人生の中で、一番若いのは今日です。今日が一番、これからの人生の中で可能性があるんだから」