hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

島本理生『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』を読む

2021年01月07日 | 読書2

 

島本理生著『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』(幻冬舎文庫し33-3、2020年4月10日幻冬舎発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

残業も休日出勤もいとわない仕事熱心なOLの知世。そんな彼女の楽しみは、仕事で出会った年上のエンジニア・椎名さんとの月二のデート。江の島の生しらす、雨の日の焼き鳥、御堂筋のホルモン、自宅での蟹鍋……。美味しいものを一緒に食べるだけの関係だったが、ある日、彼が抱える秘密を打ち明けられる。行方のわからない大人の恋を描いた恋愛小説。      解説・玉城ティア

 

食事と旅行での恋、女友だち間の付き合いのシーンが重ねられて、アラサー(30歳ほど)の未婚の3人の女性の恋愛模様が描かれる。

主に知世が語り手だが、いくつかの章で、茉奈や飯田がお相手を求めて語る。最終章の前だけ既婚の知世が夫婦の生活を、そして最後は知世の幸せな旅行。

 

主な登場人物

(石井)知世:仕事人間。独立心が強い。抑圧されたいい子どもだった。椎名と気心が知れて……。
知夏:知世の妹。自分勝手で主張が強い。
藤島茉奈(まな):知世の10年来の友人。同棲している女性がいる会社の先輩・三宅とデートしている。
飯田:フリーのライター。
椎名:知世のかなり年上の恋人。WEB制作の技術屋。バツイチだが、身軽な雰囲気で身なりも清潔。エイズ。

 

この作品は2017年6月幻冬舎より刊行。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

分類すれば、どこにでもころがっている難病恋愛物ということになるので、私の評価は低い。しかし、重い事実を深刻でなく、綺麗ごとにとどまらずに、少々の切なさを伴って爽やかに描いている点は評価できる。
また、30歳ほどの3人の個性ある女性間のやりとりが秀悦で、島本さんの才能を十分感じられる。

 

かなり年上でしかもエイズにかかっている椎名を何故選んだかを、知世は「なに一つ特別じゃない私の話をいつまでも飽きずに聞いてくれて、……、旅行すれば、楽しくて、なにを食べても二人一緒なら美味しい。初めてだったよ。そんな人」と語る。(p152)
しかし、私が思うに、おじさんというのは、普通の女性であっても若くさえあれば、鼻の下を伸ばして話を真剣に聞いてしまう種族なので(私だけ??)、知世の椎名でなければならない上の理由に説得力はない。


料理がよく出てくるのだが、興味ない私にはダルイ。椎名の手が大きく、男性であることを意識するという場面が、何回も出てくる。島本さんの個人的指向?


15歳で早くも賞を受賞した島本さんは恋愛話には十分才能があるのはよくわかった。早く恋愛ものから羽ばたいてもっと違うテーマに取り組んで欲しい。

 

島本理生(しまもと・りお)の略歴と既読本リスト

 

 

気になったお言葉

「大人になるって、この人を好きになるとは思わなかったっている恋愛が始まることかもしれない。」(p30)

「私の定時あがりのイメージって、合コンよりも先にお通夜なの?」(p34)

 

コメント
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