hiyamizu's blog

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岡真理『ガザとは何か』を読む

2024年05月29日 | 読書2

 

岡真理著『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急抗議』(2023年12月31日大和書房発行)を読んだ。

 

大和(だいわ)書房による紹介

【緊急出版!ガザを知るための「まず、ここから」の一冊】

2023年10月7日、ハマース主導の越境奇襲攻撃に端を発し、イスラエルによるガザ地区への攻撃が激化しました。

長年パレスチナ問題に取り組んできた、パレスチナ問題と現代アラブ文学を専門とする著者が、平易な語り口、そして強靭な言葉の力によってさまざまな疑問、その本質を明らかにします。

今起きていることは何か?
パレスチナ問題の根本は何なのか?
イスラエルはどのようにして作られた国?
シオニズムとは?
ガザは、どんな地域か?
ハマースとは、どのような組織なのか?
いま、私たちができることは何なのか?

今を知るための最良の案内でありながら、「これから私たちが何を学び、何をすべきか」
その足掛かりともなる、いま、まず手に取りたい一冊です。

本書は、10月20日京都大学、10月23日早稲田大学で開催された緊急セミナーに加筆修正を加えたものです。

 

岡真理(おか・まり)

1960年生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。

在モロッコ日本国大使館専門調査員、大阪女子大学人文社会学部講師、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、早稲田大学文学学術院教授。

専攻は現代アラブ文学・第三世界フェミニズム思想。

 

 

「はじめに」はこう始まり、著者の立場をはっきりさせている。

2023年10月7日の、ハマース主導のガザのパレスチナ人戦闘員による越境奇襲攻撃に対して、イスラエルによる未曽有のジェノサイド攻撃が始まりました。攻撃開始からわずか二週間で、ガザのパレスチナ人の死者は4000人を越えました。うち半分近くが子供です。

 

1947年、人口的に1/3、数%の土地しか持っていなかったユダヤ人に、パレスチナ人の土地を与えるという国連の分割案が決定され、ホロコーストには何の責任もないパレスチナ人が代償を支払わされた。

しかもその後、ことあるごとにイスラエルは領土を拡大し、域内の民族浄化でパレスチナ人を難民として追い出した。

これに対し、1957年アラファト議長率いる「ファタハ」が誕生し、1987年の第一次インティファーダで「ハマース」が誕生する。

 

今回の2023年10月7日の、ハマース主導の奇襲攻撃は、占領軍であるイスラエル軍に対する抵抗として国際法上認められる抵抗権の行使です。狙ったのはガザ周辺のイスラエル軍基地ですが、民間人を殺したのは戦争犯罪です。

 

以下、イスラエルがガザで行っている残忍な行動について語られる。例えば、汚水処理施設が破壊されて飲み水がない、経済基盤が破壊され失業率は46%、住民の8割が国際的人道援助に依存等々。イスラエルによって、ガザの若者はテロに走らされている。

ガザは「天井のない世界最大の野外監獄」ではなく、「世界最大の絶滅収容所」だ。

この辺りは読んでいて、辛い。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

若いころからパレスチナに心を寄せる者の義務として、この本を読んだ。おおよその内容は承知していたが、読んであらためて確認すると、辛い。

 

ハマスでなく、より穏健なパレスチナ政府が統治するヨルダン川西岸地区でも、その60%はイスラエル軍が行政権、軍事権共に実権を握り、ユダヤ人入植地は増え続けていると知って、これではパレスチナ人に希望はないと改めて思った。

 

この著者の主張に異論はないが、理由、根拠を明らかにした上であるにしても、「ジェノサイド」「虐殺」とか強い言葉は控えた方が良いと思う。レッテル貼りの応酬になってしまう。

 

著者が本当に言いたかったことは、パレスチナへの世界の無関心こそがこの暴力の応酬の大きな原因だということではないかと思った。
この本の中に、耳に痛い言葉があった。

「地獄とは、人々が苦しんでいるところのことではない。人が苦しんでいるのを誰も見ようとしないところのことだ」 イスラーム中世思想家マンスール・アル=ハッラージュの言葉

 

 

目次

■第1部 ガザとは何か
4つの要点/イスラエルによるジェノサイド/繰り返されるガザへの攻撃/イスラエルの情報戦/ガザとは何か/イスラエルはどう建国されたか/シオニズムの誕生/シオニズムは人気がなかった/なぜパレスチナだったのか/パレスチナの分割案/パレスチナを襲った民族浄化「ナクバ」/イスラエル国内での動き/ガザはどれほど人口過密か/ハマースの誕生/オスロ合意からの7年間/民主的選挙で勝利したハマース/抵抗権の行使としての攻撃/「封鎖」とはどういうことか/ガザで起きていること/生きながらの死/帰還の大行進/ガザで増加する自殺/「国際法を適用してくれるだけでいい」

■第2部 ガザ、人間の恥としての
今、目の前で起きている/何度も繰り返されてきた/忘却の集積の果てに/不均衡な攻撃/平和的デモへの攻撃/恥知らずの忘却/巨大な実験場/ガザの動物園/世界は何もしない/言葉とヒューマニティ/「憎しみの連鎖」で語ってはいけない/西岸で起きていること/10月7日の攻撃が意味するもの/明らかになってきた事実/問うべきは「イスラエルとは何か」/シオニズムとパレスチナ分割案/イスラエルのアパルトヘイト/人道問題ではなく、政治的問題

■質疑応答
ガザに対して、今私たちができることは?/無関心な人にはどう働きかければいい?/パレスチナ問題をどう学んでいけばいい?/アメリカはなぜイスラエルを支援し続けるのか?/BDS運動とは何?

■付録
もっと知るためのガイド(書籍、映画・ドキュメンタリー、ニュース・情報サイト)
パレスチナ問題 関連年表

 

 

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