伊坂幸太郎著「フィッシュストーリー」新潮文庫、2009年12月、新潮社発行を読んだ。
裏表紙にはこうある。
伊坂幸太郎13冊目の本書は、デビュー直後に書いた短編から、今回書き下ろした中編まで、四つの物語からなる作品集で、2007年新潮社刊行の単行本の文庫化である。山本集五郎賞の候補にもあげられ、同名の映画作品として、2009年3月公開された。
「動物園のエンジン」
ただそこに居るだけで動物園の動物たちに活気をもたらす不思議な中年男に殺人の疑いがかけられる。推理になっていないいいかげんな犯人探しが意外に面白い。
初出:「小説新潮」2001年3月
「サクリファイス」
ある寒村で昔からの風習“こもり様”をミステリーとからめる。謎としてはたいしたことないが、伊坂ワールドにおなじみの空き巣兼探偵の黒澤が登場し、軽妙な会話が楽しい。
初出:「別冊 東北学Vol.8」2004年8月
「フィッシュストーリー」
20数年前の話から始まる。あるバンドのレコードを聞き、ある男が正義の味方を演ずることになる。次は、現在で、武道の達人で日頃から鍛錬をおこたらない正義の味方が大活躍する。そこで話は30年前に戻り、無名だがなかなか良いロックバンドのレコーディングの話になる。さらに10年後の世界を救う話が続く。これらの思いがけないつながりが不思議だ。
初出:「小説新潮」2005年10月
「ポテチ」
空き巣を仕事とする青年と地元出身のかっては輝いていたプロ野球選手に、ユニークなキャラの母親がからみむ。何も知らない母と知ってしまったが母思いのだめ息子の関係が哀切だが、明るい。なかなか秀悦な出来栄えだ。
書下ろし
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
少々強引なところもあるが、話の展開が不思議。筋のひねり方と、ただようユーモアに新しい息吹を感じる。兎にも角にも、面白い。
巻末の参考文献に、以下のようにある。珍しい、とくに小説では。