浅田次郎著「ハッピー・リタイヤメント」2009年11月、幻冬舎発行を読んだ。
退職後の話ではない。
自衛隊と財務省の叩き上げ二人が、定年まで4年で早期退職し、なんにも仕事のないのに高給をくれるJAMS(全国中小企業振興会)に天下る。まじめな二人はしてはいけないのに仕事を始める。昔、金でこまり借金してそのまま時効を過ぎて、今は金持ちになった人々を訪問し始める。
すっかり、退職後の話だと思って読み始めた。まず、冒頭の話で、混乱させられる。
ある日突然、三十年前の借金の督促にある男が浅田さんの家に来る。しかし、法的には返済の義務はないから放棄の書類を書いてくれれば良いという。浅田さんの代表作『壬生義士伝』を取り出して、目の前の男性が「浅田次郎」だと知って驚いてみせる。
この話、何なの、本当の話?と訳がわからなくなる。
あとは楽しく、するりと読めてしまう。なんだか調子良すぎて、「そんなのありかよ」と思うが、うるさいこと言いっこなしだ。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
浅田さんの小説としては、今ひとつ面白みに欠ける。しかし、いまどき軍人魂一杯の元自衛官のキャラが立っているし、お役所化した自衛隊の内情が興味をそそる。
初出「GOETH」2008年12月号―2009年11月号
浅田次郎の略歴と既読本リスト
バンクーバー、ダウンタウンのRobusonSt. ロブソン・ストリートは、賑やかなのはBute St.あたりまでで、それより北へ、下り始めるとそれほどかっこよい店はなくなり、アジア系のレストランが多くなる。中華の店はRichmondに固まっているのでほとんどなく、韓国系が多い。寿司やラーメンの店も多いが、日本人の経営ではないと思われる店がほとんどだ。7-11で明日の朝のパンなどを買ってから遅い昼飯を食べる店を探す。
ヴェトナム料理のCHAUという店に入る。
中華の店もそうだが、長い箸が出てくる。日本人には多少使いにくい。
頼んだ料理は以下。
締めて53ドル。味もまあまあでけっこうでした。
中村文則著「掏摸[スリ]」2009年10月、河出書房新社発行を読んだ。
孤独な腕の良いスリがとてつもない闇の男に引きずり込まれていく。クールでありながら、虐待されている万引少年をかばい続ける。絶望しているようでありながら、懸命に生きようとする主人公が魅力的だ。大江健三郎賞受賞作。
著者は、HPで、この作品について、こう言っている。
都会に動く天才スリ師の物語ですが、過去の友人や恋人、売春婦とその子供、僕がこれまでに書いた中で最大の悪の人物である木崎など、様々に登場します。
小説の魅力、本の魅力を、能力の許す限り、最大限に出そうと考えました。純文学ならではの深みを追求しながら、読みやすく、かつ物語としてもスリルのあるもの。文章を次々と読む快感というか、小説でしか味わえない、「文章の快楽」を念頭に置きました。悪だけでなく、温かさ、も今回は意識しました。小説家になって7年が経ち、一つの到達点に来れたように感じています。
・・・
この小説も依頼を受けたのは約5年前で、ようやく完成となりました。
・・・
どこにでもあるような小説はいらないです。僕は僕の小説を書いていこうと、密かに決意した小説でもあります。『その入ってはいけない領域に伸びた指、その指の先端の皮膚に走る、違和感など消えうせる快楽を――』ぜひ読んでみてください。
(ちなみにタイトルの『掏摸[スリ]』は、『スリ』というふり仮名込みのタイトルです。)
初出は「文藝」2009年夏号
中村文則は、1977年愛知県東海市生れ。福島大学行政社会学部卒。作家になるまでフリーター。
2002年「銃」で新潮新人賞、(芥川賞候補)
2004年「遮光」で野間文芸新人賞、
2005年「土の中の子供」で芥川賞、
2010年本作「掏摸」で大江健三郎賞を受賞。
その他、「悪意の手記」「最後の命」「何もかも憂鬱な夜に」「世界の果て」
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
ハードボイルド風のエンターテイメント。財布などをスルときの手口やその微妙な感覚を描き切っている。著者は、「純文学ならではの深みを追求しながら、」と言っているが、私はいい意味で、完全なエンターテイメントだと思う。
スリの経験のない私は(当たり前田のクラッカー。きまりきんちゃん、あたりきしゃりき)、読んでいてついついドキドキしてしまう。巻末に著者が参考にしたスリ手口の本、4冊が示されている。小説書くのも大変だ。
悪の帝王、木崎がちょっと大げさで、話に厚みが少ないが、ともかく面白く読める。
野党時代の菅さんの家の前には、イス一つの小さな小屋が立ち、駆け出すことは出来そうも無い超肥満体の警官が一人たっているだけだった。それも民主党で無役のときはいなくなってしまう。申し訳程度の警備だった。
先日、総理大臣になった菅さんの家の近くを通った。家の前には警備車両が陣取って、3、4人の警官がウロウロしている。あの肥満体のおまわりさんはどうしたのだろう。自民党の谷垣さんの家にでもまわったか?
菅さんちは警備しにくい家だからだろう、まわりの道路にはすべて警官が立って固めている。裏道から、大通りまで、蟻の這い出る隙もないとはこのことか。
警察としては早く総理官邸に入ってもらいたいのだろう。菅さんの奥さんは大迷惑と言ったそうだが、それにしても、総理大臣になるとは大変なことだ。
バンクーバーのSkytrain Canada LineのWaterfront駅で降りてCanada Placeカナダプレイスに行った。
カナダプレイスは Burrad Inletバラッド入江に突き出した波止場になっていて、巨大クルーズ船が接岸していることが多い。
カナダプレイスの西側に突き出しているのはVancouver Convention Centre Westだ。オリンピックでは報道センタ-として使われたと聞いた。
先端には青いオブジェ?があり、入江の中には船専用のガソリンスタンドがある。対岸のNorth Vancouverには山の中腹まで住宅が並ぶ。
フェリーで渡った先はLonsdale Quayだが、このあたりは高層ビルが並ぶ。
カナダプレイスの西側からはバンクーバーの北の3山、Cypress、Grouse Mountain、Seyourが晴れていればくっきり見えるのだが。
Burrard St.の突き当たりにはTourism Vancouver Visitor Centreがあり、私はいつもバンクーバー地域のバスルート図“Transportation Map & Guide”を購入する。$1.95だ。
フェアモント・グループの高級ホテルは、バンクーバーではFairmont Hotel Vancouverだが、WaterfrontにコンドミニアムFairmont Pacific Rimを作った。ただし、一戸の値段(約1.2億円~4.5億円)らしい。
ホテルをよく見ると、アルファベットがならんでいる。
thecloudslookednonearerthanwheniwaslyingonthestreet
the clouds looked no nearer than when i was lying on the streetと読むのだろうか? 道路に寝そべっているような私たちには高すぎて買えないという意味??
角田光代「私たちには物語がある」2010年5月、小学館発行を読んだ。
角田さんが読んで気に入った本の読書感想文を集めたものだ。まず、10人の作家の作品について魅力を語る。次に、2003年から2006年に読んだ40冊ほど、2007年から2009年の50冊について語る。
あんまりおもしろい本に出合ってしまうと、読みながら私は考える。もしこの本が世界に存在しなかったら、いったいどうしていただろう。・・・私の見る世界には一色足りないまんまだろう。だからこの本があってよかった。
あとがきで角田さんは述べる。
作家デビューして20年の角田さんは、作家の中でも感想文を書く方だという。新人賞をもらった後、編集者に言われた本をまったく読んでいなくて、「そんなんで作家になれるのか」と脅された。そして、本を読んで何か書く仕事が来たら、絶対に断らないと決意した。ただ一つ誤算があったのは、書評依頼があるのは新刊本だけであるということなのだ。
今この本を読み返していたら、
と書いている。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
いかにも本好きな角田さんらしく、本に対する愛情でみちみちている。しかし、読んだ本の良いところしか書いていないので、どの本を選ぶかといった比較には役立たない。
しかし、本の選定自体も、女性だからだろうか、私の好みとは若干ずれている。私は、乱読で広く浅くまんべんなく本を読んでいるつもりだったが、やはりかなり偏っていたことがわかった。
もともと、気が向いたときに図書館の新刊本を探したり、目についた新聞の書評を見たり、ふと思いついた作家の本を探したりする。本の探し方自体がシステマティックでないので、その段階から偏りがあるのだろう。それで問題ないとも思うが、私が大きな影響を受けるはずの本が、私の知らないまま世界のどこかに眠っていると思うと、実際そうであろうが、落ち着かない。現実には、まあ、本とも一期一会でいくしかないのだが。
角田光代の略歴と既読本リスト
バンクーバーのイングリッシュベイまで散歩したとき、青い屋根が目立つシーフードグリルのBoatHouseで昼飯とした。
入ったところには、船の道具などが並んでいるが、中はごく普通の店だ。
メニューを見ると、starters & appetizers、big salad、 sandwiches & burgersと mains 、さらにweekend brunchがあったが、一番軽そうな、big saladの中から、 “seafood chop chop“を選んだ。
”chop“は空手チョップしか思い浮かばないが、まああんまり大きなものではなさそうだ。メニューには、”shrimp, sea scallops, grilled wild salmon, stoneground mustard vinaigrette・・・18.99“とある。エビ、貝、焼きサーモンになにやらのソースがかかっているのだろう。これを1つ頼み、二人でシェアーすることにした。
starters & appetizersにfresh oysters・・・each 2.99/6pack 17.49/12pack 32.99とあり、迷ったが、カキは”R”のつく月が旬じゃなかったかと思い、また高いのでパス。コーヒーと紅茶だけにする。
出てきたseafood chop chopがこれ。
シェアーと言ったので、もうひとつの皿に分けてくれた。
なかなか味も良く、量は年寄りの昼にはこれで十分。15%のチップを含めて、約34ドルなり。
オヤジ・ギャグではない。私の父親の冗談だ。
明治生まれの父は無口で冗談をいう人ではなかったが、
それでも思い出すオヤジのギャグが2つある。
いつもコタツに座ったきり、「あれを出せ」「あれとってこい」とお袋を使っている父が、
「こればっかりは、頼めない」
とトイレに立った。
隣の隣で葬式があり、すぐに隣家にも不幸があった。
今月は臨時出費が重なり困ったと嘆く母に、年老いた父は力強く言った。
「よし、こんどは俺が取返してやる」
バンクーバーのダウンタウンのBurrard St. とAlberni St.の角にテファニーがあって、その2階に亀井ロイヤルという寿司屋がある。
入口は、Burrard St.側にある。
我々は、バンクーバーは3回目で、2ヶ月滞在したこともあるのだが、ここはわれわれにとってはけっこう高い店なので、入口のメニューを見るだけで、中に入る事はなかった。今回、入口のメニューを見ると、「真央ロール」とある。
浅田真央さんがアイデアを出して作った寿司だという。おまけに、ゴールドメダルロール、明子ロール、小塚ロール、織田ロールもある。私のお好みのミキティーロールがないのが残念だが、これは入らざるを得ない。
真央ロール2つと、
その他、バンクーバー盛りと、
サーモン巻きを頼んで、
真央ロールは、2種類のサーモンの味のバランスが良く、なかなか美味しい。合計二人で52ドルは高くはない。もっとも若い人はとてもこれでは足りないだろうが。
隣の席の中国系の二十歳そこそこの若い人たちは、テーブルに並びきらないほど料理を注文していた。一体どうなっているの?
ポール・オースターなどの翻訳で知られる柴田さんのエッセイ集だ。東京、ロンドン、ニューヨーク、オレゴンなどで柴田さんの行動が綴られている。多少の作り話や、多くの妄想が混じっているが、生い立ちや、青年期の放浪?など興味深い話がつづく。
現在の自分が、イギリス留学時代の自分を眺めながら、もし安食堂に入っていたら変っていた人生を夢想する「ケンブリッジ・サーカス」を本の題名にしている。この話は、柴田さんの小説?「バレンタイン」にも出てくる。
「六郷育ち-東京」が面白い。昭和が残る町、六郷には、「あんたのお母さん、元気?」と10年以上前に亡くなった母親のことを会うと必ず聞くボケたおばさんがいる。彼女はだいたいが1960年代から80年代に居る。柴田さんは結局彼女の話に途中で合わせきれず怒らしてしまう。
東京の人は歩くのが早いというが、平均時速3.8kmくらいで、ニューヨーカーは4.7kmほどだという。
(私が初めてニューヨークへ行ったのは、日本にはキャリアウーマンなどという言葉がなかった30年ほど前だ。朝の通勤時、大股で歩き、追いぬいていく女性たちの勢いに驚いた。あっという間に通り過ぎ、そして強烈な香水の香りだけが残った。)
アメリカと日本の子供時代がどう違うかというテーマでの、柴田さんとポール・オースターの対話が面白い。
オースターが初めて自分の小遣いで買った本は「エドガー・アラン・ポー 詩と小説選集」。10歳だった。柴田さんは大学2年まではほとんど漫画のみ。
日本もアメリカも昔は良い公立高校があったが、今は良い教育を受けられるのは高い金を払う私立のみ。今の両国の子どもは、明日は今日よりいいはずだと信じられずに育っていく。
8歳のとき、オースターはかんじんのときに鉛筆を持っていなかったためにウィリー・メイズのサインをもらいそこねた。奇跡的経緯があって、52年後、メイズのサインボールを手にすることになる。
柴田さんと2つ上の兄は、アメリカやイギリスのロックを聞いて育ち、お兄さんは自由を求め、若くして渡米し、市民権をとった。柴田さんは遠くから憧れる以上のことはしなかった。今、二人は会えば、互いに敬意をもち時を過ごすことができる。お兄さんの日本を見る目が年とともに少しずつ良い方に変ってきたという。
初出は、「Coyote」など。東大・本郷キャンパス迷走中は一部書き下ろし
柴田元幸(しばた もとゆき)は、1954年東京生まれ。東京大学教授、専攻現代アメリカ文学。翻訳者。訳書は、ポール・オースターの主要作品、レベッカ・ブラウン『体の贈り物』など多数。著書に『アメリカン・ナルシス』『それは私です』など。『生半可な学者』は講談社エッセイ賞を受賞。村上春樹さんと翻訳を通してお友達でもある。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
柴田ファンの私自身にとっては、四つ星のお勧めなのだが、一般の人は、少年の頃の自分など幻に出逢うという同じような話にあきるかもしれないと三つ星にした。
この本には、丸っこい柴田さんの字で書いた小さな400字詰め原稿用紙が特別付録として付いている。題名は「夜明け」で、初めて「遠くに来たなあ」と思った小学2,3年生の頃の記憶の話だ。これも柴田ファンには嬉しい。
バンクーバーのリッチモンドの西南端にあって、フレーザー Fraser川の河口の港町スティーブストンStevestonに行った。
スティーブストンには、19世紀後半からサケ漁を目的とした日本人移民が増え始め、塩蔵、缶詰といった技術を伝えたことから日本人移民が一気に富を築き、一時日系人が2000人にも達した。
しかし、1907年日本人移民への反感による「バンクーバー暴動」、さらに太平洋戦争勃発で、日本人移民は強制、収容され、すべての財産を没収された。1998年にカナダ政府は日系人に対し正式に謝罪し、わずかではあるが賠償も実施された。
スティーブストンのMoncton St.には、昔和歌山から移住して来た日本人の子孫が幾家族かは住んでいて、今でも古めかしく丁寧で奇妙な日本語を話すと言う。
板張りの道のまわりに昔からの木造の各種工場などがBritannia Heritage Shipyardとして保存されている。下の写真は、多分、当時の日系人の長屋で、二階は網などの倉庫らしい。
ボランティアに鍵を開けてもらい、その一つの元造船所 Britannia Shipyardに入った。ここはもともと缶詰工場だったが、フレーザー川でシャケがとれなくなって造船所に変わったのだ。
小さな木造の船を作る様子が再現されている。
突き当たりはそのまま河口へ進水できるようになっている。
当時のいろいろなものが展示されていて、
複雑な結び方をしたロープもある。
今回は入れなかったが、Murakami Visitors Centreという日系人、村上一家が暮らした家が当時の本当に粗末な家具、調度品や写真とともに保存されている。ボロ屋の隙間風を防ぐために新聞紙を張ったという苦しい生活が偲ばれる。村上あさよさんが愛した庭が今も手入れされて残されている。
参照:「日系人のふるさと、Stevestonへ再び」(ということは、ここへは3回来たということになる)
日系漁師の像を見て、
川面を見ると、首の長いカナダガンがいて、
屋根には、微動だにしない不思議な鳥が。
“IMPERIAL CANNERY 1903”と書かれた遊歩道を町の方へ向かう。昔のシャケの缶詰工場がこの先にあったと思う。
雨が降って来たので途中引き返し、再び川沿いの板張りのBoardwalksを歩いて、車で帰った。
バンクーバー報告が長くなり、読んだ本が溜まっているので、ときどき読書感想文を割り込ませる。
上野千鶴子著「ひとりの午後に」2010年4月、日本放送出版協会発行を読んだ。
上野さんの心境を率直に語ったエッセイ集だ。
思い出すこと/好きなもの/年齢を重ねて/ひとりのいま と、父母のこと、子どもの頃のことから、おんがくなど趣味の話、そして最後はやはり、ひとり住まいの話になる。
このようなお母さんがいて、きっぱりした上野さんが出来上がったのだろう。
母は不治の病になり、自分が長年医者をしてきたのはこのためだったと主張する開業医である父親に看取られて亡くなる。「母はもしかしたら幸福だったのかもしれない」と思い始めて、上野さんは母親の遺品の香水をつけ始めた。
上野さんは、過去が澱のように溜まって、変化を拒む金沢で高校を過ごし、母のような人生を送るのはいやだと思い・・・何をしたいかわからなかったが、何がイヤかだけははっきりわかった。
上野さんは俳句に親しむ。
咲き切って薔薇の容(かたち)を超えけるも 草田男
折れたまま咲いて見せたる百合の花 25歳で妻子を置いて自死した北村透谷の辞世の句
ボケたからといって、感情までなくなるわけではない。認知障害は、認知の障害であって、感情の障害でないことは、すでに知られている。
初出は、「おしゃれ工房」など。一部書き下ろし。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
絶対に容赦せず厳しいだけの女性という印象のある上野さんに意外な一面があることは著書を読んで知っていた。しかしそれは年齢を重ねたためだと思っていた。この本を読むと、子どものころから地味でおとなしく、もともと女性的なやさしさを十分持った人だとわかる。
(ケチな私は一人で風呂に入るときは、バスタブに寝転んで体の半分まで浸かるくらいしかお湯を入れない。体の上のタオルにときどきお湯をかければ寒くはない。お湯代を別に取られることもないホテルでもそんなふうにして風呂に入っているのだから、私は本物のケチ?)
(私も昔、判断力が抜群と言われたことがある。一方、欲がないと言われることもある。両者は一対の関係にある。)
上野さんが紹介している精神科医の斉藤学(さとる)さんの本に、「友達がつくれない」という相談に対する彼の答えが引用されている。
(最近、メル友が数百人いると自慢する人や、メールが少ないので不安という若い人が多いらしい。薄く広く付き合う人もいれば、数少ない人と深く付き合う人もいる。一人で本とお付き合いする人もいる。いろんな人でこの社会は出来上がっている。)
上野千鶴子の略歴と既読本リスト