一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

二十九たび大野教室に行く(後編)・順位戦の手

2012-07-05 00:56:32 | 大野教室
続けて、植山悦行七段に角落ちで教えていただく。プロ棋士に3局教わって3,500円。あまりにも廉価で、申し訳ない気持ちになる。
私は居飛車で臨む。囲いは▲6八銀▲7八金▲7九玉▲5九金と、簡易的に済ませる。
数手後▲7七歩と屈服させられたので、私は▲9六歩から▲9七角と活用した。
△7五銀に私は▲8六角と平気で上がる。もし△8六同銀なら▲同歩で、次の▲8五歩(と桂を取る)を見て下手よし。
上手もその手に乗らず、別の手を指した。そこからさらに数手後の局面が下である。

上手(角落ち)・植山七段:1一香、1四歩、2一桂、2三歩、3二玉、3三歩、4二銀、4三金、4四歩、5二歩、6五歩、7四飛、7五銀、8四歩、8五桂、9一香、9三歩 持駒:銀、歩
下手・一公:1七歩、1九香、3六歩、3七桂、4七歩、5四歩、5八飛、5九金、6七歩、6八銀、7七歩、7八金、7九玉、8六角、8七歩、8九桂、9六歩、9九香 持駒:金、歩

ここから――。
▲4八金。「ウオーーッ!!」(植山)
△3四歩。「かあーっ!!」(一公)
▲1六歩。「ぬおーーっ!!」(植山)
△9四歩。「うわーっ!!」(一公)
▲5六飛。「ぐおわーっ!!」(植山)
渋い手の応酬に、一手指すごとに私たちは唸った。その声を聞いた大野八一雄七段が、何事かと飛んでくる。私たちは局面を戻して、再生した。
植山七段「お互い(角と銀を)駒を取れ、って言ってるんですよ。それがイヤだから、お互い様子見してる。順位戦の手だよね。ガハハ」
私もつられて苦笑い。いつだったか大野七段が、
「植さんと大沢さんは、じゃれあってるんだよ」
と言ったことがあったが、たしかにそうだと思った。
植山七段は△9五歩と指したが、私は「ありがたくいただきます。持ち駒が2歩になった」と▲同歩。
植山七段は、しょうがない、と△9七歩。ここで私がしびれを切らして▲7五角と行ったが、これがどうだったか。以下△同飛▲5三歩成△同歩▲2四歩△同歩▲7六飛△同飛▲同歩と進んだが、直後の△2九飛が厳しく、数手後に急転直下の投了となった。
感想戦では、△9七歩での正着は▲同桂だったらしい。私としては、上手の△8五桂は歩でタダ取りしたかったから、▲9七同桂は1秒も考えなかった。しかし▲9五同歩と取ったからにはとことん面倒を見て、攻めていらっしゃい、と上手の攻めを催促するのがよく、これなら上手の指し手がむずかしかったらしい。
私は記憶にないのだが、以前も私は植山七段の銀に「この角を取れ」とぶつけたことがあったらしい。とにかく、こうやって下手に強気で来られると、上手は困ったという。
私にとっては残念な将棋だったが、中盤の折衝がおもしろかったので、満足だった。
時刻は7時である。しかし大野教室は終わらない。やがて植山七段がペチペチ駒を並べ始めたので、私たちは側につく。それは先日指された、竜王戦6組・植山七段対牧野光則四段戦だった。
何とはなしに自戦解説が始まったので、私たちは拝聴する。将棋の上達法はいろいろあるが、男性棋士の自戦解説を聞くことが、いちばん身になると思う。私たちとは序中盤の構想がまるで違い、読みの量も天と地の差。それだけに、とても参考になるのだ。
将棋は後手植山七段の三間飛車。牧野四段は一目散に穴熊に潜った。以下植山七段の軽妙な解説に、私たちは唸りっぱなし。
ここから虚々実々の応酬がなされたが、どうも少しずつ植山七段が悪かったようである。
最後は▲5四歩と垂らされたところで、植山七段が投了。これ以上は指しても意味がない、と潔く投げたものだが、相手の牧野四段は、「エッ」と意外そうだったという。最近の若手棋士から見れば、投げっぷりのいい棋士は奇異に映るのだろう。
「後手三間飛車は勝てません」
と植山七段の締めの弁だった。
時刻は8時。ここから食事である。参加は大野七段、W氏、Minamiちゃん、私。さらに、もう帰る、という植山七段を引き留めて、計5人でとんかつ屋に向かった。その途中、植山七段が、
「大沢さん、芝浦サロンに行ってくださいよ」
と言う。私もそうしたいが、自宅から田町までは遠い。時間的にも1局か2局しか指せず、それで3,500円はやはり足が遠のく。
とんかつ店はたしか2回目だが、ロースかつ定食(900円)が抜群に美味い。さらに特筆すべきは白飯の量で、普通盛りで大盛りの量がある。植山七段はそれで大盛りを頼んでしまったから、四苦八苦だった。
食後はファーストフード店でおしゃべりタイム。中井広恵女流六段の誕生日パーティーの話になる。中井女流六段は6月24日が誕生日であり、私も「今年はパーティーをしましょう!」と中井女流六段にメールを出していた。
しかし私は自分が中心になって物事を進めるのが嫌いなので、誰かが幹事役を引き受けてくれるのを待っていた。
ところがみなは、お前(私のこと)がやれと言う。私の中井ファン度を考えれば当然、というわけだ。
そう言われれば、引き受けざるを得ない。というわけで、「中井広恵女流六段お誕生日パーティー」は、私のプロデュースで進めることとなった。
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