一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

天野貴元さん、逝去

2015-10-28 00:05:41 | 男性棋士
元奨励会三段の天野貴元(あまの・よしもと)さんが、27日、逝去した。享年30歳。
天野さんは1996年、奨励会入り。順調に昇級昇段を重ね、2002年、わずか16歳で三段に昇段した。
しかし奨励会は厳しい。ここから勝ち星に恵まれず、リーグでは停滞続き。後輩にどんどん抜かれ、26歳で退会を余儀なくされた。
退会後は会社員生活を送っていたが、舌ガンが発覚。しかし手遅れに近く、そこから壮絶な闘病生活に入る。並行してアマタイトルを獲り、再度奨励会入りを目指したが、叶わなかった。
その後も社団戦などに出場し元気なところを見せたが、無念の投了となった。

私と天野さんとの交流はまったくない。ただ、天野さんが自伝エッセイ「オール・イン」を上梓し将棋ペンクラブ大賞の候補に挙がった時、私が二次選考委員をしていた関係で、同書を購入した経緯がある。
同書は「はしがき」からしてすでにおもしろく、これは将棋ペンクラブ史上、10年に一度の名稿と確信した。
同書はもし私が二次選考委員でなかったら読まなかったはずで、不思議な縁を感じた。

天野さんは、健常時からブログを開設していた。天野さんがすごいのは、闘病中でも内容が力強かったことだ。それはいつも、前を見ていた。五体満足の私が将来を悲観して投げやりになっているのとは対照的である。私は半ば本気で、天野さんが寛解すると信じていた。
それにしても享年30は、早すぎる。長生きすればいいというものではないが、天野さんの病気はどこかで防ぐことができそうだったから、なおさら悔しい。
いま天野さんは、どこにいるのだろう。無念の魂が現世を漂っているのだろうか。
それでもいい。のんびり高みの見物とシャレこんで、将棋界を眺めるのもいい。
手続きを終えて天国に行ったなら、もう五体満足に戻っているだろう。美味いものをいっぱい食べて、先輩方と気楽な将棋を指しているのだろう。

棋士よりも有名な元奨励会員・天野貴元さんを、将棋ファンはいつまでも忘れない。

合掌。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする