一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

うれしい初勝利

2022-06-06 00:10:54 | 女流棋士
3日はもう1局、第12期リコー杯女流王座戦二次予選・中井広恵女流六段VS渡辺弥生女流初段戦が行われた。
中井女流六段については改めて述べることもない。
中井女流六段は1981年、女流棋士デビュー。最近はたびたび最年少女流棋士の話題があり、そのたびに藤田綾女流二段の「11歳」が挙げられるが、藤田女流二段は「11歳6ヶ月」、中井女流六段は「11歳10ヶ月」で、中井女流六段も大変な棋歴である。タイトル19期の大豪だ。
対する渡辺女流初段も異色の経歴だ。新潟県生まれの渡辺女流初段は、1998年、東京大学経済学部入学。恐るべきはここからで、2002年に卒業後、今度は教養学部に入学した。卒業と入学にタイムラグがなく、つまり、渡辺女流初段は経営学部在学中に次の勉強をしていたわけだ。先日の「家、ついて行ってイイですか?」(テレビ東京)に、東大を卒業したあと、東京藝術大学に入り直した青年が出演したが、そんな鬼才が将棋界にもいたわけだ。
渡辺女流初段は将棋ペンクラブの交流会に参加してくれたことがあり、私はその真偽を確認したものだ。すると渡辺女流初段は、「家が雪で閉ざされて、勉強しかすることがなかったから……」と謙遜した。
その渡辺女流初段が、教養学部在学中に将棋に出会ってしまった。これが当人にとって良かったか悪かったかは分からない。しかし渡辺女流初段はたちまち将棋のトリコになり、のめりこんだ。
鬼才が本気を出せば、女流棋士にはなれる(棋士四段は無理)。2009年、晴れて女流棋士デビューとなった。考えてみれば、渡辺女流初段は中原誠十六世名人と同じ9月2日生まれ。女流棋士になるべき運命だったかもしれない。
その渡辺女流初段と中井女流六段が女流王座戦で当たったわけである。
渡辺女流初段の対中井戦は0勝7敗だが、今年度はここまで4勝0敗で、好調である。したがって本局も、ひょっとする可能性もないわけではなかった。
将棋は渡辺女流初段の先手で、微妙な駆け引きがあったあと、渡辺女流初段が四間飛車に振った。
中井女流六段は角交換に出る手もあったが、見送り。といって左美濃に組むわけでもなく、穴熊に潜るわけでもなく、若干中途半端な囲いになった。
と、渡辺女流初段は▲7八金から▲6九飛。受けの棋風の渡辺女流初段らしい指し手である。
その後、渡辺女流初段が桂得し、さらに銀得に拡げる。しかし中井女流六段も反撃し、難しい戦いになった。

図は中井女流六段が△6六桂と迫った局面。渡辺女流初段のほぼ飛車得だが、中井女流六段も△6七にと金を作っており、実戦的には難しい。
ここで渡辺女流初段が▲2八玉と寄ったのが好手だった。△5八桂成に▲3八金を作り、▲1七玉と逃げ越す手も見ている。場合によっては▲1六玉からの脱出もある。
果たして実戦もそのように進み、137手まで、渡辺女流初段の勝ちとなった。対中井戦、うれしい初勝利である。
渡辺女流初段は2013年度の第3期でベスト4に進出している。年度勝ち越しはこの年と2018年度だけだ。かつて島田紳助は、「学歴が高いということは、より多くの職業を選べることになること」と言った。その中で渡辺女流初段は、趣味を職業にできたから、すでに幸せである。しかし棋歴としては、やや物足りない。この女流王座戦で頑張っていただこう。
いっぽう中井女流六段にとっては想定外の敗戦だったが、ふたりはマイナビ女子オープンでも対戦が組まれている。こちらも楽しみにしたい。
コメント
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