付け焼き刃の覚え書き

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「第三帝国の神殿にて~ナチス軍需相の証言」 アルベルト・シュペーア

2008-02-23 | 戦記・戦史・軍事
「全ファシズムがまったくシャボン玉のように破裂してしまった」
 1945年7月、アルフレート・ヨーゼフ・フェルディナント・ヨードル上級大将。

 宣伝省の建物や総統官邸の改修工事に携わったことから、建築デザイナーであったシュペーアはヒトラーやゲッベルスの知己を得るようになり、ベルリン建設総監、兵器・弾薬大臣、軍需・軍事生産大臣と、次第に政府で登用されるようになっていく。

 彼がナチスドイツでの意志決定にどの程度かかわっていたかについては諸説あるけれど、単にヒトラー好みの芸術家ではなく、テクノクラートとして極めて有能であったことは間違いありません。連合軍の反撃によって都市に、ダムに、軍需工場に次々に爆撃が行われ、たまらずヒトラーに訴えたところ「君なら必ず解決できる!」とだけ言われておしまい。それでもなんとか生産体制を最低限の損害で稼働させ続けたのですから。
 それでもいちばんの危機はボールベアリング工場が空襲を受けたときのことだったとか。ちっぽけな鉄の玉を生産する5つかそこらの小さな工場がすべて吹き飛んでしまえば、3ヶ月後には数千の軍需工場が全てストップしてしまうのです。
 ベアリングをなめちゃいけねーな。

 獄中でのメモをもとに執筆した回想録なので自己弁護や正当化も人間だから多少はあるだろうけれど、ここで語られる政府や軍上層部内での人間関係とか出世……というより生き残りのテクニックは必読。言うことがころころ変わって、他人の意見をなかなか認めないし機嫌を損ねると殺されかねない上司の下で出世して生き残る方法はそうそう読めないよ。

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コメント
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