「正義には流行りすたりがあるの」
蛋白資源培養施設でのジェシカの言葉。
人間による混沌文明期が終わり、不死者による汎不死社会が始まって何千年。生命に貴賤はなく、すべて消費されるべきカロリー資源であり、ただ消費されるためのルールが幾つかあるだけ。そしてそのカロリー循環の体系から外れた不死の貴族が、限りある命の人間やクローンたちを統治するようになっている。
だが、それとても絶対ではない。千年に一度現れる裁定者によって大契約に定められた「刈り入れ」が行われるのだ。
そして貴族ヘルマが支配する施療院都市ヴァレトゥディナリアにも刈り入れの季節が訪れた。どこからともなく姿を現した少女ジェシカ。彼女こそ<七本腕のジェシカ>と呼ばれ、死すべき命の人間でありながら、7柱の魔王をその身に封じ込めた裁定者。汎不死社会を支配する貴族の磨き抜かれた尊き魂の前に立ちはだかる地獄の門……。
ライトノベルの皮をかぶったヘビーな話がまたスタートしました。
不死の吸血鬼が支配する都市。魔物が跋扈する荒野。そして素肌マントに巨乳ロリータ……。カロリーと魂の生態系世界がすごく独特で、それを紐解いて見せていく過程が面白いです。
ただ、その一方でジェシカが弱みを見せるのが早すぎかなと思いました。戦闘力では裁定者ジェシカは無敵確定ではありますが、精神的にちょっともろいところが早めに出てます。もっと終盤で良いのに。それから都市の肌触りが伝わりにくいのが残念。たぶんメタリックなホワイトなんだろうけど、漆喰なのか、プラスチックなのかとか、具体的な街の姿が見えにくかったな。
この巻では主人公がほとんど何もしてないので、とりあえず次回はドーンッと派手なバトルから始まると良いなと期待してます。
【吸血鬼】【未来世界】【クローン】【魔王】【鎖】