付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「精霊探偵」 梶尾真治

2008-02-29 | その他SF(スコシフシギとかも)
 交通事故で同乗していた妻を亡くした新海は、生きる力を失い、世捨て人のような生活を送っていた。そんな彼を心配する喫茶「そめちめ」のマスターやママの紹介で、新海に会いたいという男がやってきた。行方不明の妻を捜して欲しいというのだ。
 新海は事故以来、他人の背後霊が見えるようになっており、その背後霊たちの様子からモノ探しに成功したことが何度かあり、シロウト探偵としてひそかに評価が高まりつつあったらしい。
 成り行きから探偵のまねごとで人捜しをすることになった新海の助手に名乗りを上げたのは、新海によって母親の虐待から救われた小学生の久永小夢(さゆめ)だった。
 しかし、行方不明の主婦を捜す新海らの前に、ヌエのような奇妙な絵の描かれたカードが出現する。そしてその絵とそっくりな文様の書かれた土器が博物館から盗み出されたというニュースが報じられたあたりから、彼らの人捜しは意外な方向へと転がり始めていた……。


 普通の人とは違うモノが見えるようになった男だけが気づいた世界の危機。
 そりゃあ『おもいでエマノン』から『サラマンダー殲滅』や『占星王をぶっとばせ!』までテリトリーが広い作家なので何がどう来るか、緊張しつつ読み進めます。うん、はあ、こう来るか!?
 「SF」という天秤の上で、「泣かせる話」と「バカ話」がふらふら揺れているような作品を書く作家です。一歩間違えたら「カードバトル」か「スタンド戦」になりそうなネタを、そうと気づかせないまま「ちょっと泣かせる不思議な話」に落とし込みました。ただ、物語を「生者と死者」「妻と夫」という箱へ落とし込んでいく中で、せっかく頑張っていた小夢ちゃんがラストでちょっと影が薄くなってしまったのが残念。そして意外に存在感が大きくなっていったのがホームレスの荒戸さんでした。

【精霊探偵】【梶尾真治】【盗まれた街】【背後霊】【またたび】【失踪者】
コメント
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