付け焼き刃の覚え書き

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「司政官(全短編)」 眉村卓

2009-03-21 | 宇宙・スペースオペラ
 人類が銀河宇宙へ進出し、異星のさまざまな現住民と接触しながら植民を進めている時代。植民地開発の基幹となる新たな制度がスタートした。
 それまで軍がおこなっていた治安維持や、異星人との交渉、植民者への支援や地図の作成等といった作業を、司政官と呼ばれるエリート行政官が引き継ぎ、そのたった1人の司政官が多くのロボットを従えて惑星を統治していくという、司政官制度である。
 その司政官制度を、発足直後のまだ立場が不安定な時期から全盛期、そして植民地の発展に伴って制度的矛盾を抱えて自壊していく末期まで、何人もの司政官たちの姿を通じて描いていく……。 

 司政官シリーズの作品の中から全短編を集めて時系列順に編纂し、巻末に制度解説が加えられた分厚い1冊。

「賭けなければならないとき、勝負しなければならないときには、ご自分を傷つけることをおそれないで、踏み切って下さいね」
 立体表現家グレイス・グレイスンの言葉。

 さまざまな異星人が登場するし、不思議な世界が幾つも姿を現し、解決困難な問題が次々に発生するのだけれど、それらがすっきり解決することはありません。異星人たちとの交流や調査は物語の中では完了することはありませんし、怪現象の原因は不明なままだし、状況は混迷を深めるばかりです。あくまで、模範解答の見えない状況で決断を迫られる司政官の姿を描く作品群なのです。
 どんなに苦労していても、内政はそつなくこなしてあたりまえ、何か問題が起きたらどんな突発事態で予見も対策もできなかろうが当然責任が押っ被さってくる。それを乗りこえられるのがエリートと呼ばれる存在なわけですが、エリートでいるのも大変な話です。

【司政官】【眉村卓】【植民政策】【民族移動】【幽霊】【叛乱】
コメント (1)
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