付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「アニメックの頃…」 小牧雅伸

2009-03-31 | エッセー・人文・科学
 まず誤植チェック。p232「トレイ交代」→「トイレ交代」

 かつて「アニメック」というアニメ評論や情報分析に定評のあるアニメ情報誌があったのだけれど、その編集長であった著者が雑誌の誕生から月刊化までを回想したもの。

「ここまでお祭りなんだから、日本一のお祭り男を強化要員として召還した」
 明るいイデオンに双子の悪魔を投入した際のサンライズの渉外担当野辺さんの言葉。

 こういうのを梁山泊ものというのかもしれません。次々といろんなところから思わぬ人材が発掘され、海千山千のエキスパートへ成長していく物語って面白いですよね。
 同人誌は作った経験はあるけれど、商業誌のノウハウなんか知らない人間が集められ無手勝流で創刊した雑誌があれよあれよという間に大きくなっていくのだけれど、その裏側では「こりゃないだろう?」というようなてんやわんやの大騒ぎ。雑誌を作っても流通に乗せる方法を知らなかったり、編集長が1年に11回しか給料をもらっておらず社会保険にも入っていなかったり。

 年寄りの昔話と切ってしまえばそれだけだけれども、子供の観る「テレビマンガ」が大人も観る「アニメ」となっていく過程を綴った資料として貴重だし話としても面白い。また、ヤマトからガンダムへと社会のアニメーションへの認識が高まっていく中、アニメ誌が何誌も創刊されていくのだけれども実は書いているライターはほとんど共通していてアニメック編集部で各社の仕事をしていたとか、誰でもその気になったら周辺ジャンルにもひととおり目を配ることができたくらいジャンルの規模が小さかった時代の混沌とした熱さを感じられる1冊です。

 話としては隔月刊だったものが月刊化したところで終わりで、物足りないといえば物足りないけれど、いちばん良いところで区切りをつけるのは正解。アーサー王物語だって、円卓の騎士が揃うまでが面白いと思うし。創刊から追いかけてきた身としては、月刊化によって特集記事の内容が薄くなり魅力が減じたと感じていたので……。(09.03/31)

 類書としては尾形英夫の『あの旗を撃て!~アニメージュ血風録』という著書があって、あれはあれで詳細なんだけれど、あくまで「アニメージュ編集部を中心に徳間書店がどのようにアニメとかかわってきたか」という話なので、アニメーションというのは当時どんな状況だったのかとか、熱心なファンはどういう感じだったのかという全体的なことには触れていないのですね。他社アニメ誌は名前しか出てこないし、『アニメック』に至っては存在そのものが無視されているわけで、自分としてはアニメージュとスタジオ・ジブリにだけ興味があるわけではないので、こういう本の存在は嬉しいです。(09.04/25)

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