松本侑子による『赤毛のアン』シリーズの3作目の完訳版。時代的には19世紀末から20世紀初頭の話でアン・シャーリーが18歳から22歳までのレッドモンド大学時代の物語。
「みなさん方は好き好きに、破滅への道を行くこともできるんです」
共同生活を始めることになったアンたちの家事の面倒をみてくれることになったジェイムジーナおばさんは、彼女たちのふるまいについて干渉するつもりはないと宣言した。自分の行動に責任の取れる年齢だから。
ついでに「自分の葬式で読みあげられて恥ずかしい文章は書くなかれ」というジェイムジーナおばさんの娘の言葉も記しておきましょう。
この巻の中心人物は、やはり新キャラのフィリッパ・ゴードン。美人で金持ちで家柄が良く、ちょっとバカかと思えば成績は優秀。決して謙遜はしないけれど、他人の長所を誉めることを怠らない少女。欠点は決断力のないこと(自己申告)。
アンにたいして「理想の愛を想像のなかで創りあげて、真実の愛もそんな風に見えるはずだよと思いこんでいるのよ」と説教たれたあげく「あら、この私が生まれて初めてまともなことを言ったわ」と自賛する良いキャラです。最後の最後まで。
「四十歳になれば、二十歳のころよりも、人を許すことが簡単になるのよ」
それが人生で学んだことだとジャネット・スィートの言葉。
このシリーズもいろいろ翻訳があるのだけれど、基本は村岡花子訳。ただ、もうかなり古い訳なので、読んでいてピンとこない単語や言い回しがあるのですね。たとえば、ヒロインを女英雄と訳されても何のことかと迷ってしまいます。
そして完訳版と銘打って講談社文庫から掛川恭子訳が出たのだけれど、これはなんとなく訳文の感性が合わなかったのです。どこが悪いというのではないけれど、言葉の使い方や選択が馴染めなかったのです。村岡訳に慣れすぎたせいかもしれません。
他にもいろいろ訳はあるのですけれど、自分の中ではこの松本侑子訳がいちばんしっくり来ています。それに同じ本を何度も読んでいる身としては、過剰といえるくらいの注釈の山が嬉しい。巻末におよそ60頁の注釈が付いて、登場人物たちがなにげなく引用する旧訳聖書や当時流行の詩から童話まで出典を解説し、舞台となる街や通りについて当時の様子から現在の姿まで紹介し、他作品の登場人物についてもひとこと記述してくれるので、すごく便利というか好奇心をくすぐられるというか……引用の多さに目が回るというか……。こだわりの翻訳ですね。
松本訳の文庫は今のところ、この話までなので続きについても期待しています。でも「海軍将校候補生」は「海軍士官候補生」の方がしっくりくるんですけどね。
【アンの愛情】【モンゴメリ】【松本侑子】【大学生活】
「みなさん方は好き好きに、破滅への道を行くこともできるんです」
共同生活を始めることになったアンたちの家事の面倒をみてくれることになったジェイムジーナおばさんは、彼女たちのふるまいについて干渉するつもりはないと宣言した。自分の行動に責任の取れる年齢だから。
ついでに「自分の葬式で読みあげられて恥ずかしい文章は書くなかれ」というジェイムジーナおばさんの娘の言葉も記しておきましょう。
この巻の中心人物は、やはり新キャラのフィリッパ・ゴードン。美人で金持ちで家柄が良く、ちょっとバカかと思えば成績は優秀。決して謙遜はしないけれど、他人の長所を誉めることを怠らない少女。欠点は決断力のないこと(自己申告)。
アンにたいして「理想の愛を想像のなかで創りあげて、真実の愛もそんな風に見えるはずだよと思いこんでいるのよ」と説教たれたあげく「あら、この私が生まれて初めてまともなことを言ったわ」と自賛する良いキャラです。最後の最後まで。
「四十歳になれば、二十歳のころよりも、人を許すことが簡単になるのよ」
それが人生で学んだことだとジャネット・スィートの言葉。
このシリーズもいろいろ翻訳があるのだけれど、基本は村岡花子訳。ただ、もうかなり古い訳なので、読んでいてピンとこない単語や言い回しがあるのですね。たとえば、ヒロインを女英雄と訳されても何のことかと迷ってしまいます。
そして完訳版と銘打って講談社文庫から掛川恭子訳が出たのだけれど、これはなんとなく訳文の感性が合わなかったのです。どこが悪いというのではないけれど、言葉の使い方や選択が馴染めなかったのです。村岡訳に慣れすぎたせいかもしれません。
他にもいろいろ訳はあるのですけれど、自分の中ではこの松本侑子訳がいちばんしっくり来ています。それに同じ本を何度も読んでいる身としては、過剰といえるくらいの注釈の山が嬉しい。巻末におよそ60頁の注釈が付いて、登場人物たちがなにげなく引用する旧訳聖書や当時流行の詩から童話まで出典を解説し、舞台となる街や通りについて当時の様子から現在の姿まで紹介し、他作品の登場人物についてもひとこと記述してくれるので、すごく便利というか好奇心をくすぐられるというか……引用の多さに目が回るというか……。こだわりの翻訳ですね。
松本訳の文庫は今のところ、この話までなので続きについても期待しています。でも「海軍将校候補生」は「海軍士官候補生」の方がしっくりくるんですけどね。
【アンの愛情】【モンゴメリ】【松本侑子】【大学生活】