付け焼き刃の覚え書き

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「鉄を削る 町工場の技術」 小関智弘

2009-03-27 | エッセー・人文・科学
「どんな仕事にも共通して必要なものは、モノを見る眼と、モノを作る姿勢と、それからまわりの人との関連で自分をどこに立たせるかを知る位置づけです」

 町工場の旋盤工として50年働き続けてきた著者が、町工場とそこで働く職人たちについて語ったもの。日本の最先端技術を基礎から支えてきた町工場は、また取引先の気分1つで吹き飛んでしまうようなものだった。
 今でも、景気の悪化で大企業が次々に、平然と下請工場を切り捨てている。もともと、何兆という純利益を上げてきたような会社ではない。今どき、何銭という単位で工賃を削られながらも続けてきた小さな工場ばかりだ。景気が悪くなったからと、いきなり取引先からの注文が50%60%と減らされたら、いつまでも支えきれるものでもない。耐えられる体力をつけることさえ許されないのである。
 最先端技術を支え、大企業の大工場では採算の合わない複雑な仕事を引き受けてきた町工場だが、このまま続けるよりはと廃業を決意する工場も少なくない。あとは時間との勝負である。

 こういう職人たちの話は面白い。エピソードの1つ1つから職人としての自負や苦悩が伝わってくるからだ。
 日本人はもっと中小企業に目を向け、誇りに思うべきではなかろうか。裏方軽視では真の成功は手に入れられない。

【鉄を削る】【町工場の技術】【小関智弘】
コメント (2)
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