付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「エレニア記」 ディヴィッド&リー・エディングス

2009-06-04 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 ファンタジー作家、ディヴィッド・エディングスが亡くなったと、6月3日の「Fiction Matters」が伝えました。享年77歳。共著者である妻リー・エディングスと2007年春に死別して2年後でした。
 日本でも『ベルガリアード物語』『マロリオン物語』や『エレニア記』『タムール記』でお馴染みの作家であり、骨太のストーリーに、人生の機微を味わい尽くしたウィットに富んだユーモア、揺らがない正義の心と友情そして愛情がたっぷりのエディングス作品は、我が家でもお気に入りでした。
 ご冥福をお祈りします。

 『指輪物語』を彷彿とさせる壮大な善と悪の物語に、やたら人間くさい神々、思いもよらず読者をニヤつかせるユーモア、不屈の闘志を抱く英雄たちとその男たちを尻に敷く女たち。そんなところがエディングスの作品の特徴だったように思います。

 エレニア国の幼き女王エレナが暗殺者の毒によって倒れる。
 その必殺の毒を消すことができるのは伝説の宝石ベーリオンのみだが、世界を創ることも滅ぼすことも思いのままという伝説の宝石ベーリオンは遙か太古の戦いの際に失われたままであった。
 エラナの守護者である騎士スパーホークは4つの騎士団から選りすぐられた勇者らとともに、ベーリオン探索の旅に出る。だが、その行く手には悪しき神アザシュの罠が待ち受けていた……。

 これだけ読むとありきたりの話で戦いは幾らでもあるけれど殺伐としていそう……と思うかも知れませんが、ここに彼らの周りをちょこまかと動き回る小さき女神アフラエルとか、盗賊の少年タレンなどが絡むとたちまち雰囲気が変わってしまいます。
 エディングスの作品に登場する女性はいずれも美人で聡明で強く、3人そろえば帝国の1つや2つ簡単に転覆させられそうな者ばかりで、この作品も例外ではありません。毒を盛られて死の淵を彷徨った幼き女王エラナでさえ、続編の『タムール記』などで復活してからの言動をみるとひっくり返ってしまいます。
 

【エレニア記】【ディヴィッド&リー・エディングス】
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「スター・トレック」 アラン・D・フォスター

2009-06-04 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 あまりにもシンプルなタイトルで過去作品との識別が困難ですが、09年5月公開の劇場版『スター・トレック』のノヴェライズです。突如出現し星々に災厄をふりまく巨大宇宙船がヴァルカン星を襲撃。救援に赴いた惑星連邦の艦隊は壊滅し、残るはパイク艦長以下の士官候補生たちが乗り込んだ航宙艦エンタープライズ号だけとなったのだが……というストーリーを軸に繰り広げられる若者たちの葛藤と成長の物語。
 冒頭から量子宇宙論に引っかけて多次元宇宙に言及してますし、宇宙歴と西暦の違いをわざわざ指摘するなど、今までのシリーズとは別世界の話ですよという断り書きが伝わってきます。

「論理も理屈もまったく助かる余地がないと示していてもチャンスをつかむため、ひと思いに本能に従い行動する--勝つために必要な資質とは、そういったものだ」
 クリストファー・パイク大佐の言葉。

 今回の新作で何が嬉しかったかというと、理想的な士官として活躍しているパイク艦長の姿を観られたということでしょうか。パイロット版の主役でありながら見るも無惨な姿でしか登場できなかったクリストファー・パイク大佐に喝采したのです。これこそ最大のIFですね。ゲイリー・ミッチェルがどこかに存在していたのかという点については見て見ぬフリをしましょう。

 3月にオリジナル原稿が届いて3人で手分けして1ヶ月後に入稿というスケジュールで翻訳作業がおこなわれたようですが、読んでいて違和感があまりなかったのは訳者が3人とも原作ファンだったからでしょうか。それでも気になるところが1箇所。
 ドクター・マッコイが登場シーンにて離婚の際に何もかもむしり取られて骸骨だけになってしまったとぼやいていますが、その後のマッコイとカークが並んで登場するシーンでは「マッコイ」と書いて「ボーンズ」と読ませています。
 小説版ではボーンズがドクターの愛称というのは旧作以来のお約束ですが、「骸骨」にも「ボーンズ」とフリガナをつけるか、慣用表現で船医や外科医のことを「ボーンズ」と呼ぶこともあると注釈を付けないと、なんのことだか読者に伝わらないんじゃないでしょうか? そのあたりは映画字幕の方が親切でした。(2009/06/04)



 あちらこちらの映画評やブログを読んでいて感じたこと。なまじSFをかじっているのに『スタートレック』を知らない人が真っ先に感じるのは「なんかお手軽に時間移動しすぎてない?」というもの。仕方がないよ。『スタートレック』においてはタイムスリップ話がけっこう多く、またワープ速度が艦体強度限界のワープ10を超えると時間曲線がループするというのは定番の設定なので、あまり気にしないのですね。観客的に。
 なんというか、「ワープという航法を使うと光の速度を超えて宇宙を移動できる」というのと同じくらい「高重力によるワープの異常加速などでタイムスリップすることがある」というのはあたりまえ、前提条件の基本設定なのですね。SFマガジンも知らなかったようなので、一般の観客が知らなくても当然ですが。(2009/06/12)

【スター・トレック】【アラン・D・フォスター】【カーク艦長】【平行世界】【ブラックホール】【トランスワープ】【氷の惑星】【砂漠の惑星】
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